錆や汚れ落としの手法として認知度が高まっているのが重曹ブラストです。食品や医薬品にも使われる重曹=炭酸水素ナトリウムを研磨材として、高圧のエアーで吹き付ける重曹ブラストは既存のサンドブラストやウェットブラストとは異なる特徴があり、中でもマスキングや後処理なしでエンジン内部の清掃に使える点が注目されています。
半世紀以上の歴史がある重曹ブラスト
粒状のメディア=研磨材を高圧のエアーで噴射して対象物に叩きつける「ブラスト」は塗装剥離、下地作り、サビ落とし、汚れ落とし、素材表面改質などさまざまな用途で用いられています。
よく知られているのがサンドブラストです。メディアの素材にはセラミックやアルミナ、ガラスなどがあり、高い研削力を持つアルミナは剥離や下地作り、ガラスビーズはアルミパーツの梨地仕上げなど目的に応じて使い分けます。サンドブラストはメディアが乾燥した状態で噴射するため粉じんが舞い上がるため、閉じられたキャビネット内で施工するのが一般的です。
乾燥状況下で施工するサンドブラストに対して、メディアと水の混合物を噴射するのがウェットブラストです。使用するメディアはサンドブラストと同様、アルミナやガラスビーズで、サンドブラストより粒径が小さいメディアを使えるため、緻密な処理ができるのが特徴で、メディアの粉じんが舞わないのもメリットです。
これらに対して、重曹=炭酸水素ナトリウムの粒子を用いる重曹ブラストは、文字通りメディアとして重曹を用いるのが最大の特徴です。DIYシーンではサンドブラストやウェットブラストに比べて新参者のイメージがありますが、工業界では半世紀以上に渡って使われてきた実績のある表面処理技法です。
重曹ブラストにはドライ施工とウェット施工の2種類がある
食品添加物や医薬品の原料としても利用されている重曹をブラストには、環境に与える負荷が小さいという特徴があります。アルミナやガラスビーズは研削することで粒径が小さくなるものの、自然界で分解したり消滅することはありません。
対して重曹は加熱や水によって分解するため後処理の手間がありません。
施工方法としてはサンドブラストとウェットブラストのどちらも可能で、ここで紹介しているEZブラストはノズル部分のレバーを切り替えることでドライとウェットを任意に切り替えできるのが特徴です。
重曹ドライブラストはサンドブラストと同様、噴射された重曹が粉じんとして舞い上がり、密閉されたキャビネット内ではなくいわゆる露天吹きを行うと作業部分周辺が重曹まみれになりますが、水道水や雨水で流せば環境への影響はありません。
ウェット施工では煙幕のように立ち上る重曹はなく、なおかつ噴射された重曹はそのまま下水に流して問題ないので、既存のウェットブラストのような回収装置は不要です。
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