
ディスクブレーキのブレーキパッドやドラムブレーキのブレーキシューは、土台となる金属素材に摩擦材であるライニングを接着して構成しています。通常の使用方法や使用条件ではライニングが摩耗した段階で交換しますが、悪い条件が重なると土台からライニングが剥がれてしまうことがあります。ホイール外部からブレーキシューの状態が確認できないドラムブレーキでライニング剥離が発生すると非常に危険なので、長期不動車を再起動する際は必ず現物を確認することが重要です。
ブレーキシューとライニングは接着剤で貼り付けて組み立てられている

砂利敷きの土の上に置いたサイクルポート内は湿度の変化が大きく、梅雨時にはかなりの高湿度になる。そんな中で5年以上保管(放置に近い)したことで各部のサビが進行し、ブレーキシューにもトラブルが発生していた。

リヤブレーキドラム内面の赤サビはサンドペーパーによる研磨で比較的容易に除去できたのだが……。
ドラムブレーキでもディスクブレーキでも、摩耗限度を超えて使い続けると摩擦材ではなく土台(ディスクブレーキならバックプレート、ドラムブレーキならブレーキシュー)がブレーキローターやブレーキドラムを押しつけて大きなトラブルにつながります。
ブレーキパッドやブレーキシューの摩擦材の中でも、ドラムブレーキの摩擦材はライニングと呼ばれており、摩擦材や補強材や結合材などの成分を熱を加えて成形した後に、土台であるブレーキシューに対して接着剤で貼り付けられています。
ライニングの特性や性能はそこに含まれる材料の成分よって決まり、ユーザーはその違いにより効きの良さやコントロール性の良さを使い分けることができます。ディスクブレーキのパッドも同様でバックプレートに摩擦材が貼り付けられています。
ブレーキパッドやライニングが摩耗し尽くして、バックプレートやブレーキシューがダイレクトに接触するとローターやドラムが削れてしまうのは、当然のことですがバックプレートやブレーキシューよりもパッドやライニングの摩擦材の方が柔らかいからです。
水分や湿度や経年変化で接着剤の性能が低下する場合がある

ブレーキシューからライニングがポロリと剥がれてしまった。両者の接着面は白い腐食粉をふいており、長きに渡って接着剤が機能していなかったことを物語っている。保管中の温度や湿度の変化が接着面を劣化させたのだろう。
ブレーキシューとライニングを張り合わせている接着剤は、通常の使用条件や使用方法では当然ながら簡単に剥がれることはありません。
しかし、樹脂製のヘッドライトレンズが黄変してカサカサになったり、タイヤのサイドウォールに細かなヒビが入ることがあるように、経年変化や保管状況によって接着剤の性能が低下してライニングが剥離してしまう事例もあります。
特に危険なのが湿度が高くジメジメした場所での長期保管です。ここで紹介するのは砂利敷き駐車場に置いたサイクルポート内に5年ほど保管した例で、車体各部にサビが発生したのはもちろん、一カ所のブレーキライニングも完全に剥離していました。
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