走行時のフリクションロスが少なく長持ちするシールチェーンは、中型以上のバイクにとっては当たり前の装備です。とはいえ、日常的なメンテナンスを励行していても徐々に伸び、いつかは交換時期がやってきます。ノンシールチェーンのクリップ固定と違ってシールチェーンはかしめ固定が標準で、作業には専用工具が必要です。しかし、信頼できる工具があれば、DIYでもチェーン交換が可能です。

ピンの摩耗による「伸び」に加えてプレートの「サビ」も大敵

日頃の注油をサボって屋外で長期間放置している間に、いつしかドライブチェーンのプレートにサビが……。スプロケットと接するローラーが錆びていなくても、プレートのサビはチェーン強度低下の大きな要因となるので交換が必要。

 

バイクの駆動方式の中で最も歴史が古く、今なお原付からビッグバイクまで多くの車両に採用されているのがドライブチェーンです。金属同士が擦れながら引っ張られる過酷な状況の中でも、フリクションロスを低減しつつ寿命を長くするための技術が開発されてきました。
チェーンのコマ同士を連結するピンとブッシュの間に、耐久性に優れた高性能グリスが封入されたシールチェーンは、先記の条件を満たす最適なチェーンとして250cc以上の大半の機種に採用されています。
ピンとブッシュが直接接触するノンシールチェーンに比べて、両者の間にグリスによる潤滑被膜が存在するシールチェーンの寿命は、チェーンメーカーの試験値によれば10~20倍!にもなると言われています。ピンとブッシュの潤滑はそれほど重要であり効果的なのです。
それでもエンジンが発生する駆動力や減速時のバックトルクによって強力に引かれることで徐々に消耗し、約1万5000~3万kmで交換時期となります。この使用可能距離はその間のメンテナンス状況によって左右され、定期的な洗浄や注油を怠ってローラーとブッシュ間の潤滑が不足したり、シールが破損して封入されたグリスが漏出するなどの不具合があれば、もっと短い距離で交換時期に達します。
「伸び」に加えてプレートやローラーの「サビ」もチェーン交換のバロメーターとなります。プレートの錆びやすさは表面処理によって変わりますが、注油を行わなければプレート表面の油分が切れて錆びやすくなるのは必然です。
たかがサビ程度……と軽く考えるかも知れませんが、プレートのサビは強度低下の大きな要因となるため、チェーンメーカーも交換を指示しています。

かしめピンを抜く際はピンの頭を削ると工具に優しい

画像で分かりやすいよう盛大に火花を散らしているが、タイヤやホイールや火の粉が飛散するあたりには濡れタオルなどを置いて養生しておく。チェーンツールによってはインパクトレンチでピンを抜ける製品もあり、そうした物ならかしめ部分の研磨は不要だ。

 

プレートとツライチになるまでかしめ部分を削り落としても、ピンとプレートが圧入状態なので抜け落ちるわけではない。しかしかしめで広げられたピン頭がなければ、チェーンツールでピンを押し抜くのが楽になるのは確かだ。

 

カットピンが分かりやすいようピンを大きく露出しているが、実際の作業時はカットピンの倒れを防止するためピン外側のスリーブ部分(青く見える部分)をプレートに接近させる。

 

かしめ部分を研磨したことでジョイントピンをスムーズに抜き取ることができた。隣のリンクと分離できればチェーンが外せるので、ピンは1本だけ抜けば良い。

 

一般的なシールチェーンはすべてのジョイントがかしめられており、交換時に切断するためにはピンを押し抜かなくてはなりません。その際に必要なのがチェーンツールです。
シールチェーン対応のチェーンツールは「チェーンカット」「プレート圧入」「ピンかしめ」ができる製品が多く、チェーンカットモードでは任意のジョイントのピンを押し抜くことが可能です。
しかしながら、走行中に簡単に抜けないようにかしめられたピンを押し抜くのは簡単ではなく、チェーンツールにも大きなストレスが掛かります。
押し抜き圧力を軽減するために有効なのがピン頭の研磨です。グラインダーでかしめ部分を削り落としてしまえば、切断に必要は力は大幅に軽くなります。ホイールやタイヤ、車体周辺に飛び散る火花の養生が欠かせませんが、チェーンツールに最も負荷が掛かるカット作業を楽に行うことが可能です。

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