
春は愛車を乗り換えたり新規にバイクデビューしたりする人が大勢いる季節です。
初めてのバイクが中古車の人や、愛車を売って次の愛車として中古車を購入する人はとても多いですが、どうせ乗るならそのバイクが持つ『本来のハンドリング』を楽しみたいですよね?
中古車なので車体の状態は千差万別ですが、ココは押さえておいた方が良い!という重要ポイントがバイクには2箇所あります。
その2箇所の状態が悪いと絶対に本来の走りはしてくれない、そんなポイントを解説します。
目次
本当の事を言えば重要ポイントは山ほどある
重要ポイントは2箇所と書きましたが、バイクは繊細はバランスで成り立っている乗り物なので、本当は全ての機能が全部正しく機能しているのが最良です。
しかし現実問題としてそれが叶うのは完全な新車の初期だけです。
乗っていれば必ず傷んだり減ったりするのは機械の宿命だからです。
だからこそ走行を重ねた後はキチンと機能するように整備するのですが、全部を完璧に整備するのは物凄くお金が掛かるので残念ながら現実的ではありません。
エンジンはキチンと回るか?
サスペンションはスムーズに動くか?
ダンパーは本来の機能を果たしているか?
タイヤは減っていないか?
ブレーキパッドの残量はあるか?
アクセルやクラッチのワイヤーはスムーズに動くか?
このように、言い始めると『チェックすべきポイント』はキリがありません。
そんな中、ココが変だと何をやっても無駄という超重要ポイントが2箇所あります。

もちろん全部チェックして完全に整備できるのが最高です。しかしキリが無い……というのが現実
超重要ポイント1:ステアリングヘッド
まずはココ、ステアリングヘッドです。
ここがイマイチな状態だと全てが台無しになってしまう、バイクの中でも非常に重要な部分です。
自動車と違って基本的にバイクはステアリングを手で操作する乗り物ではありません。
押し引き、極低速時などを除いて、様々な状況に合わせてバイク自身が自動的にハンドルが切れる事で走って行く乗り物です。
例えそれが直線であっても。
ですので、ステアリングはいつでもどこでも軽く、スムーズに、引っ掛かりが無く動くようになっていなければなりません。
しかもガタ(隙間)があってもいけません。
そうでないと自動的に切れるはずのステアリングが機能しなくなり、非常に乗りにくいバイクになってしまいます。
すごく微妙で繊細な部分なのです……。
ステアリングヘッドには上下にベアリングが入っており、そのベアリングでフロントの荷重を全て支えています。
微妙で繊細な部分なのにベアリング2個だけで支えているので、物凄く負担が掛かって傷みやすいという、バイクが抱える構造上の弱点でもあります。
だからこそステアリングヘッドの状態はとても大事です。
そういうわけなのでステアリングヘッドは車両を購入したらできれば最初にメンテナンスしておきたい部分です。
具体的にはグリスアップとステアリングナットの締め込み調整になります。
一度しっかりメンテナンスしておけばかなりの長期間メンテナンスしなくて済むのですが……、残念な事にステアリングヘッドはフロント周りの全分解が必要です。
整備レベルはかなり高度な作業になるので、自信の無い方はバイクショップに整備を依頼するのが最良です。
整備費用はかなり掛かりますが、本当に大事な部分なので整備しておく価値は大いにあります。

これがステアリングヘッド部分に装着されている部品。ステアリングステムとか三つ又とかトリプルツリーと呼ばれます
超重要ポイント2:スイングアームピボット(とサスペンションリンク)
フロント周りの重要ポイントがステアリングヘッドなら、リヤ周りで非常に重要なポイントになるのがスイングアームピボット部です。
(モノショックのリンク式サスペンションの車両ではサスペンションリンクも重要ポイントに含まれます)
ステアリングヘッドがフロント周りを支えるから重要なのと同じで、スイングアームピボットは車体のリヤ荷重を全部支えている部分になります。
ステアリングヘッドのように左右に回転する事はありませんが、代わりにチェーンによる駆動力が思いっきり掛かります。
車重にプラスして駆動力という大きな力が常に掛かるので傷みやすいうえ、車体の奥まった部分にあるので非常に整備しにくい部分でもあります。
リヤサスペンションのリンクに至っては完全に車体の下に埋もれている事が多いうえ、リヤタイヤの巻き上げた泥や砂利や雨水が直撃するのですごく傷みやすいです。
ココの状態が良くないとリヤサスペンションがスムーズに動かなくなります。
どれだけスムーズに動く高級サスペンションに交換しようとも、根本部分の動きが渋いのでは意味がありません。
ですので、キチンと潤滑されてガタ無くスムーズに動く事がとても重要です。
ピボットはピボットシャフトという車体左右を貫通する棒によって支えられているのが普通ですが、棒の支え方(車体構造)は車種によってかなり違います。
ベアリングで支えている車種もあれば、潤滑性のある金属で支えている場合もあります。
高級車では回転方向だけでなく横方向にもスムーズな回転を妨げないためのベアリング(スラストベアリングと言います)が設定されていたりします。
ココにガタがあるとハンドリングに重大な影響が出てしまうので、例え高価格になってもガタを嫌って採用されている……そのくらい重要な部分だという事です。
大荷重の掛かる重要な部分なので、スイングアームピボットもできれば車両を購入したら最初にメンテナンスしておきたい部分です。
具体的には分解してグリスアップです。
ここも一度しっかりメンテナンスしておけばかなりの長期間メンテナンスしなくて済むのですが……、これまた残念な事にスイングアームピボットはリヤ周りの全分解が必要です。
フロント同様、整備レベルはかなり高度な作業になるので、自信の無い方はバイクショップに整備を依頼するのが最良です。
もちろん整備費用はかなり掛かりますが、本当に大事な部分なので整備しておく価値は大いにあります。

フレームから外したスイングアームのピボット部

サスペンションリンク内のベアリングも過酷な状況です
中古バイクを買う前でも重要なのは同じこと
何度も書きますが上記2箇所はバイクが正しく走るうえで非常に重要です。
他の全ての場所が完璧に整備されていても、この2箇所が不調だとバイクは本来の走りを全くしてくれません。
中古バイクの購入後にステアリングヘッドとスイングアームピボットの入念な整備をするのが理想ですが、それが叶わないなら購入前に2点を重点的にチェックする事をおすすめします。
ステアリングはハンドルを左右に切った際に中立付近でコツッと手応えがあるようなら要ベアリング交換なので、例え車両価格が安くともかえって高くついてしまいます。
スイングアームピボットの状態を知るのはリヤタイヤを浮かさないと判りにくいのですが、センタースタンドのある車両ならリヤタイヤを浮かせた状態で手で持って上下に揺すり、ガタがあるようなら様々な部分のベアリングが要交換という事です。
どちらもそのまま整備しないで乗り続ける事が不可能なわけではありません。
走行中にバラバラになってしまう……などではないので、無理矢理乗ろうと思えば乗れてしまいます。
しかし、そのハンドリング、その乗り味は本来そのバイクが持っているはずの素晴らしい性能ではありません。
惚れ込んで購入したのなら、末永くそのバイクの性能を堪能したいですよね?
だとしたら、最初に重要な2箇所を重点的に整備しておく事は本当におすすめです。

最初に重要部分を整備してしっかり動くようにしておかないと、その車両の本来の性能は体感できません
筆者の体験談
私(門脇)も今までに多数の中古バイクを乗って来ましたが、最初の1台以外は全て購入直後に全分解して整備してから乗るようにしています。
前オーナーがどのような整備をしていたのか?整備の履歴がわかっている場合は良いですが、普通はどこの誰がどんな整備をしてきたのかわからないはずです。
だからこそ最初に分解して状態を確認するのですが……、今回お伝えしたステアリングヘッドとスイングアームピボットがしっかりグリスアップされていた例はほぼありませんでした。
特に個人売買で購入した車両の整備されていない率は100%で、現在も記録更新中です。
購入した中古車は全て動作に問題ありませんでしたが、潤滑グリスは限界ギリギリの状態でしたので、そのまま整備せず乗っていれば比較的早い段階で部品交換が必要になっていたはずです。
もちろんちゃんとした店でちゃんと整備されている事も多々あるでしょう、しかし確実に整備してあると判明していない場合は……最初にバイクショップで整備しておいた方が幸せになれると思います!

残念ながらステアリングヘッド周りとスイングアームピボット周りがしっかりグリスアップされている車両はかなり少ない……というのが筆者(門脇)の実感です
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