
バイクのレストアをする中、DIYでは手を付けないで交換してしまうことの多い部品の一つにリアサスがあると思います。
自分がレストアをしているCBR1000F(SC21)のリアサスはスプリングの中にあるダンパーの外装が錆びていて、かなり目立つ状態でした。

作業開始前の状態
何とか綺麗にしたかったので、交換も考えたのですが、当然のように廃盤となっており、アフターパーツも現在は入手困難状態。
幸い機能的には問題がない状態でしたので、見た目だけの問題?……ということで、最初は何とか分解せずにリフレッシュすることを模索しましたが……挫折。
結果的にメンテナンスマニュアルを見ながら、できる範囲で分解、錆とり、塗装を行いました。今回はその試行錯誤の過程と学び?をご報告していきます。
(今回のDIYレストアはこれまで以上に実験的な内容ですので、ご了承いただけますと幸いです。)
分解前
最初は分解せずに綺麗にすることを模索。
リアサスにはダンパーやベアリングなどの可動部が含まれているため、サンドブラストは不可だと判断、まず最初にソーダブラストで洗浄、可能な限り錆をとりました。
しかしながら研ぐ力の弱いソーダブラストではスプリングの内側にあるパイプの錆びは残念ながら落とせず……逆にスプリングの塗装が外側だけとれてしまうという実に中途半端な状態に陥ってしまいました。

分解前のリアサス
ダンパーのアウターチューブの錆が予想以上に深く、ならば……と柔らかめの錆び取り用のナイロンディスクグラインダーなどを当ててみたのですが、スプリングの真裏の部分は隙間が狭いため全く届かず……コントラストが際立つ縞々模様に……。
ぱっと見は綺麗には見えるのであきらめようとも思ったのですが、先人の方々の動画にはスプリングを圧縮して分解している事例もちらほら……。
あとでやっておけばよかった…と後悔しそうだったので、せっかくなので構造の理解もかねてスプリングを一度外して各パーツを磨き、低温ガンコート塗装に挑戦することにしました。

ソーダブラスト後のリアサス
スプリングを外す方法で大苦戦
マニュアルによると専用工具を使ってスプリングを圧縮し分解することになっているのですが、純正の工具は入手できなかったため、身近な手段から試すことにしました。
最初に試したのはロングボルトとターンバックル型フック?(スチール製の二段ベッドなどの鎹として使用するものですね……)長めのサスのスプリングはこれで圧縮できた方もいらっしゃるのですが、CBR1000F(SC21)は短めのモノサスでバネ係数が高かったためか?鉄のロングボルトがスプリングの力にあっさりと負けて曲がってしまいました。

ロングボルトでスプリングの圧縮に挑戦
次に車用スプリングコンプレッサーなら強度的には間違いなかろう……ということで以前から持っていた車用の工具を引っ張り出してきてあてがってみたのですが……スプリングをつかむツメの部分が大きくて全く使えず……即却下。
スプリングが小さくて太い関係でスプリングとスプリングの間の隙間が少ないことに気が付きました。

ツメが大きい車用のスプリングコンプレッサー
仕方がないのでツメの厚みがないタイプの汎用のバイク用スプリングコンプレッサーを購入。
しかしながら届いたコンプレッサーの箱には商品説明には載っていなかった(と思う……)ツインショック用という記載が……。
少し試してみたところやはりスプリングの力が強いため危険と判断、同様のコンプレッサーを2セット使って力を分散させることにしました(完全に自己責任です)。

ツメ型のバイク用スプリングコンプレッサー
何とかスプリングを圧縮できるようになってきたのですが、分解できるくらいまで圧縮するためには締め上げる力も必要となるため、長めのレンチで締めあげていこうとすると、スプリングコンププレッサーの軸を押さえている外装が開いて力が逃げてしまうことが判明……。
またしてもダメかも……と不安がよぎりましたが、コンプレッサーの外装を万力で挟んで補強しながら少しづつ順番に締めることで、時間はかかりますが無事にスプリングを必要なだけ圧縮させることに成功しました。

広がらないように挟んで圧縮
サビを落として再塗装
その後、固着していた部品をラスペネを吹きながらプラハンマーで叩き、何とか動かしてストッパーリングを外し、無事にスプリングとダンパー部分を分離させることができました。
(SC21のモノショックに使用されているスプリングは太く短いため圧縮の難易度が高いことを身をもって体感。自分は完全な自己責任で作業を行いましたが、モノサスの分解を安全に確実に進めるためには多少高価でも正しい工具の使用をお勧めします……)
何とか分解ができましたので、稼働しない部品類はサンドブラストを実施、ダンパーのアウターチューブ部分の深めの錆びはグラインダーによる研磨で落としました。
その後、強度、耐油性に優れているガンコート塗装をしていくのですが、オイルが封入されているダンパーを焼き付け用のオーブンに投入するのは危険なので、80℃焼き付けで80%以上の性能が出る(と説明されている)ガンコート専用硬化剤を試すことにしました。
この硬化剤を混ぜると弾性のあるパーツに塗っても剥がれにくくなる……ということでしたので、検証もかねて試しにスプリングにも使用することにしました。

塗装前後のダンパー
塗装完了後、組み上げのため再度スプリングを圧縮したときに残念ながらスプリングコンプレッサーの爪でスプリングの塗装がかけてしまいましたので……組み上げ完了後再塗装し80℃で焼き付けました。
(うまくいかないときはこんなもの?です……)

再塗装中のリアサス
完成!
素人故の試行錯誤が多々あったため時間がかかってしまいましたが、費用的にはロングボルトとスプリングコンプレッサー×2と低温焼き付け用の硬化剤だけの追加出費で、なんとかリフレッシュして、元に戻すことができました。

リフレッシュが完了したリアサス
作業まとめ
リアサスの分解、リフレッシュ、塗装を行い、再度組み上げました。
モノショックの分解にはコツがいりましたが、ツメ型のスプリングコンプレッサーを2セット使うことで、何とか実施することができました。
分解後の塗装にはガンコートに低温焼き付けの硬化剤を使用したものを実験的に使用。
耐久性は今後確認していく予定です。
今回の作業はかなりの学び(失敗)がありましたが、リアサスのダンパーに問題がない場合、分解してリフレッシュする方法を選択できるようになったことは意味があったと考えています。
次回はいよいよ?コテコテに汚れているエンジンの研磨、塗装をご案内する予定です。
使用した工具、備品
ロングボルト、ナット 結果的に不使用
テンションボルト 結果的に不使用
車用スプリングコンプレッサー 結果的に不使用
ツメ型スプリングコンプレッサー 2セット
万力
ラスペネ
ラチェットレンチ
プラハンマー
ソーダブラスト一式
サンドブラスト一式
ディスクグラインダー
ナイロン研磨パッド
ガンコートツール一式
低温焼き付け用ガンコート専用硬化剤
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