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パイロットジェットとメインジェット、ジェットニードルの組み合わせによって、純正キャブレターのセッティングが可能になるキースターの燃調キットは、多くの絶版車ユーザーから頼りにされる存在です。しかし元々のコンディションによっては、燃調キットだけでは完全に調子が戻らないものもあります。そんな重症のキャブ向けに、キースターでは既存の燃調キットとは異なる製品を開発しました。それがホンダCB750F用「バルブシート蘇生キット」と「オーバーフローパイプセット」です。ここでは必要不可欠な部品を確実に修復できるふたつの新製品を紹介しましょう。

ニードルバルブとバルブシートの重要性とは?

エンジンが発生する負圧によって、フロートチャンバー内のガソリンがベンチュリー内に吸い上げられて混合気を作るのがキャブレターの役割です。負圧の大きさや吸入空気の流量に応じてパイロットジェット、メインジェット、ジェットニードルで計量されるガソリンは、すべてフロートチャンバーから供給されています。
ガソリンタンクからキャブレターに流れるガソリンは、バルブシートを通過してフロートチャンバーに溜まってフロートを浮かび上がらせます。そして規定の量が溜まると、フロートの根元にあるニードルバルブの先端がバルブシートに密着してガソリンの流入が止まります。
フロートチャンバー内のガソリンは、フロートと連動して動くニードルバルブの開閉によって流入と停止を繰り返すことでフロートチャンバー内のガソリン油面の高さをコントロールしており、これがキャブセッティングにとってもっとも重要なキーポイントとなっています。
フロート内のガソリンが減るとニードルバルブが開き、油面が上昇するとバルブが閉じるという動きは単純ですが、これを何十年にもわたって繰り返すことでバルブとバルブシートの接触面が摩耗したり、場合によっては損傷することもあります。
するとフロートチャンバー内の油面が上昇してフロートがニードルバルブを閉じても、バルブシートとの僅かな隙間からガソリンが流れ込み続けて油面がさらに上昇し、オーバーフローの原因となります。
ニードルバルブもバルブシートもジェットやニードルのようなセッティングを左右する部品ではありませんが、実はキャブレターにとっては根幹となるもっとも重要な部分なのです。

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ホンダCB750 F用純正キャブレターのバルブシート(キャブボディ側の黄土色の円状部品)は製造時に圧入されている。垂直に引き上げれば抜き取ることが可能だが、純正部品の設定がないので交換できない。しかし現実的にニードルバルブが接触する部分が摩耗、損傷して、ニードルバルブのみ交換してもガソリン漏れが止まらない例もある。

バルブシートには取り外しできるタイプとできないタイプが存在する

バルブシートに接触することでガソリンの流れをコントロールするニードルバルブは、キースターの燃調キットにも付属しているので、円錐形の接触部分が摩耗、損傷している場合には新品に交換できます。
ニードルバルブのトラブルでありがちなのは、バルブシートに接触する部分に痕跡が付いてガソリン漏れが発生する事例です。ニードルバルブが正常であれば、バルブシートとの接触部分は線接触となります。しかし繰り返し開閉して接触部分が摩耗すると、当たり幅が広くなります。これがいわゆる「ベタ当たり」と呼ばれる状態で、フロートによって押しつけられる力が分散してしまうことでバルブが閉じる圧力が低下してガソリン流入の原因になります。
ニードルバルブの当たり部分が摩耗する際に、相手となるバルブシートの接触面もまた摩耗や損傷する可能性もあると考えられます。そのため、キャブレターボディからバルブシートが取り外せるタイプであれば、ニードルバルブとバルブシートをセットで交換するのがベストです。純正キャブレターでニードルバルブが取り外せる機種の燃調キットには、交換用のニードルバルブがセットされています。
ここで問題となるのが、バルブシートがボディに圧入されて取り外せないタイプのキャブレターです。バルブシートの当たり面が摩耗損傷している場合はニードルバルブを新品に交換しても、バルブを閉じきれずオーバーフローを起こすことがあります。
軽い汚れや表面の荒れ程度であれば、金属研磨用ケミカルを付けた綿棒でバルブシートの当たり面を整えられることもありますが、損傷や腐食が進行している場合は修復できない場合もあります。
仮にダメージを受けたバルブシートを取り外すことができても、取り外しを前提としてないバルブシートには純正部品が用意されていないため、交換による修理ができない=致命的ダメージというのがこれまでの常識でした。

取り外しできないバルブシートを交換するために開発された「バルブシート蘇生キット」

膨大なラインナップを誇るキースターの燃調キットでも、バルブシートが取り外せないキャブレターにまつわる問題は同様でした。ニードルバルブが新品でも、バルブシートの状態が悪ければフロートチャンバー内の油面が安定せず、結果的にキャブセッティングが決まらない要因になるからです。
こうした状況を打開するのが新製品の「バルブシート蘇生キット」です。キット内容は純正と同じ形状、同じサイズのバルブシートとニードルバルブ、純正バルブシートを引き抜き新たなバルブシートを取り付けるための専用工具で構成されています。
今回製品化されたのはホンダCB750F用ケーヒンVB系純正キャブレター用バルブシートで、外径や内径や全長はもちろん、フロートチャンバーに流れ込むガソリンを計量するバルブシート径(ニードルバルブによって開閉される部分)もCB750Fと同サイズで開発しています。
キャブレターに関してある程度の経験と知識があり、圧入タイプのバルブシートでも「交換用のニードルさえあれば再使用できるのに……」と悔しい思いをしたことのあるユーザーにとって、バルブシート蘇生キットはこれ以上ない格好の製品となるはずです。
圧入されたバルブシートを取り外したり取り付けるのは難しそうですが、付属の専用工具を使えば想像以上に簡単に作業できるのもこのキットの特徴です。CB750F用キャブレターの場合、フロート本体に油面調整用の調整板がなく、バルブシートの圧入量で油面が決まるため、組み付け時に慎重に作業する必要がありますが、摩耗や損傷で劣化したバルブシートを新品に交換できるのは大きなニュースです。
圧入タイプのバルブシートはCB750F用だけでなく、他のケーヒン製キャブでもよく使われている手法で、今後は負圧キャブの代名詞とも言えるCVK用バルブシート蘇生キットも開発する予定です。CB750Fも人気機種ですが、CVKキャブは250ccクラスから1000ccオーバーのビッグバイクまで採用機種が多岐に渡る分、より多くのユーザーのお役に立てる製品になると思います。

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バルブシート蘇生キットはホンダCB750FZ(キャブレター号機VB52BA用)、CB750FB/FC(キャブレター号機VB52BB/VB52EA/VB52EB用)の2タイプが発売されている。キット内容はバルブシートとニードルバルブが各4個、引き抜きと圧入用の治具が付属する。価格は1キット税込8800円。

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古いバルブシートを取り外すため、付属のタップで雌ネジを切る。タップハンドルは付属しないので作業者が用意する。タップの先端がバルブシートの底に触れるまでネジを切ればOK。

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円筒形の治具をバルブシートにかぶせて、付属のナットを通したロングボルトを先に雌ネジを切ったバルブシートにねじ込む。ボルトの頭を固定しながらナットを回すと、キャブレターボディに圧入されたバルブシートが徐々に引き上げられてくる。

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右がバルブシート蘇生キットの新品部品、左はボディから引き抜いた古いバルブシート。キースター製バルブシートは外観寸法はもちろん、バルブシートにとって重要なガソリン通路径も純正サイズに合わせてある。

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円筒形の治具に圧入用のコマをセットして、バルブシートを圧入する。最初から叩き込むのではなく、バルブシートが傾かないよう指で微調整してから治具をかぶせる。

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ハンマーで叩くというより、ヘッドの重さを利用して徐々に圧入する。CB750F用キャブの場合、フロートに油面調整用の調整板がないため、バルブシートの圧入量によってフロートの高さが決まってしまう。圧入量が浅いとフロートが下振れして油面が低く、深く圧入するとフロートが上振れして油面が高くなる。深く圧入すると引き抜くことができないので、浅く圧入した状態でフロートを仮付けしてフロートゲージで測定し、ゲージ油面が低いことを確認したらもう少し深く圧入して測定するという作業を繰り返して基準値である15mmに合わせる。

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バルブシートとニードルバルブをセットで交換することで、キャブレターにとって最も重要な油面が安定する。フロートレベルゲージで静的な油面高さを合わせても、実際にガソリンを流すと油面が上昇してしまう場合、ニードルバルブだけでなくバルブシートも交換したい。これまで圧入タイプでは不可能だったが、バルブシート蘇生キットの登場によってより理想的なメンテナンスが可能となる。

フロートチャンバーに圧入されたオーバーフローパイプの役割とは?

キャブセッティングには関係しませんが、バルブシートと並んでキャブレターの重要なパーツのひとつがオーバーフローパイプです。フロートチャンバー底部に圧入されたオーバーフローパイプは、万が一フロートやニードルバルブやバルブシートにトラブルが生じてフロートチャンバー内の油面が過度に上昇した際に、余計なガソリンをキャブの外部に排出します。
仮にオーバーフロー機構がない状態でフロートチャンバー内の油面が上がり続ければ、ベンチュリー内にガソリンが浸入してエンジンやエアクリーナーボックスに流れ込むリスクがあります。
ケーヒンCVKのように、設計時点からオーバーフローパイプを装備していないキャブレターもありますが、想像以上に重要な役割を果たしているのです。

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フロートチャンバーの底部に圧入されたオーバーフローパイプは、ボディとの合わせ面よりいくらか上まで伸びている。フロート内のガソリン油面がパイプの上端を超えるとパイプから外部に排出されることで、混合気が過剰に濃くなることを防止する。オーバーフローパイプはすべてのキャブレターに装備されているわけではなく、そもそも付いていないキャブもある。

経年劣化やメンテ中のアクシデントでオーバーフローパイプが破損すると……

オーバーフローパイプ自体は金属製の中空パイプですが、経年劣化や腐食で側面に穴が開いたり亀裂が入ることがあり、そうなるとフロートチャンバー内の油面の高さが正常値より低い段階でガソリンが漏れてしまい、キャブセッティングが薄くなってしまうことがあります。
また絶版車の場合、フロートチャンバーを何度も着脱する間にオーバーフローパイプをどこかにぶつけて折ってしまうこともあります。この場合も亀裂や穴あきと同様に、油面がパイプの上端に達した段階でガソリンがキャブレターの外に流れ出してしまいます。最悪なのは根元から折れるパターンで、こうなるとチャンバー内のガソリンはほぼゼロになるのでエンジン始動不能、走行不能に陥ります。
圧入タイプのバルブシートと同様に、交換を前提としていないオーバーフローパイプも純正部品の設定はありません。パイプの側面に亀裂が入った場合は、ハンダを流して塞ぐこともできます。しかし根元から折れてしまった場合には対処できません。
純正部品が販売されていれば新品交換で対応できますが、部品が販売終了になっていることが多い絶版車の場合は、オーバーフローパイプが使える中古部品を探して交換するというのが一般的な対処方法でした。

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このキャブレターのオーバーフローパイプも長期放置で腐食が進行しているが、穴が開いたり縦方向に亀裂が入るように劣化するものもある。パイプの途中で穴が開くと、油面はそこまでしか上がらなくなる。穴や亀裂の位置にもよるが、油面が低い状態で漏れるとフロートが上昇せずニードルバルブが閉じないためガソリンが流れ続けてしまう。燃料コックが負圧式ならまだしも、重力式コックでONのままだと漏れ続けてしまう。

傷んだオーバーフローパイプを交換する「オーバーフローパイプセット」

キースターの新製品であるオーバーフローパイプセットは、亀裂が入ったり折れたりした純正オーバーフローパイプを交換するパーツです。
現在商品化されているのはホンダCB750Fシリーズ(FZ~FC)ケーヒンVB4気筒車用、ホンダホークⅡ系やGL系のケーヒンVB2気筒車用、カワサキW1S~W3用の3種類です。いずれもパイプ外径と全長は純正と同一で、古いオーバーフローパイプを取り除いてセット付属の打ち込み治具を使って圧入します。
工程はシンプルですが、古いオーバーフローパイプがスムーズに抜けるか否かによって作業の難易度は大きく変わります。経年変化によりパイプの圧入が甘くなっているフロートチャンバーであれば、ペンチやプライヤーなどで比較的容易に引き抜けることもあります。
しかし簡単に抜けないパイプをプライヤーで掴むと途中で切断してしまう場合もあります。また根元から折れたパイプはそもそもプライヤーで掴むこともできません。
この場合はボール盤を使って折れ残ったパイプを取り出します。CB750F用の場合、パイプ外径がφ3mmなので3mmのドリルで垂直に穴を掘ることで、残ったパイプの先端部分を取り出すことができました。
手持ちのドリルで作業できなくもないのですが、刃が傾くと圧入部分の穴が拡大してパイプがガバガバになるリスクもあるので、ボール盤を活用した方がリスクを低減できます。
古いパイプを抜く際に注意が必要なものの、純正パイプと同じ寸法で製作されたキースター製オーバーフローパイプを圧入するのは難しいことではありません。
真鍮パイプは柔らかくデリケートですが、付属の打ち込み治具を使えば先端を潰したり途中で曲がったりすることなく圧入できます。また治具の先端がフロートチャンバーに当たるまで圧入すれば、パイプの突き出し量は純正と同じになるので、微調整も不要です。
キャブセッティングにとって基準となるフロート内油面の高さが、オーバーフローパイプの状態次第で変化することを知れば、オーバーフローパイプセットの有効性を理解頂けると思います。

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純正サイズのオーバーフローパイプと打ち込み治具がセットとなったオーバーフローパイプセット。ホンダCB750FZ~FC用ケーヒンVBキャブレター(キャブレター号機VB52BB/VB52EA/B52EB)は1セット税込4400円、ホンダホークⅡ系やGL系のケーヒンVB2気筒車用、カワサキW1S~W3用は1セット税込2750円。

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腐食などでパイプの圧入部分が痩せている場合は、プライヤーなどで引き抜くことができる場合もある。一方、圧入状態が良好で強固な場合、プライヤー強く掴むとパイプが潰れて切断してしまうこともあるので要注意。

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フロートチャンバー着脱時にパイプに無理な力を加えると、圧入部分からポッキリ折れてしまうこともある。そんな時はフロートチャンバーに残ったパイプにドリルを立てて揉み取る。

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オーバーフローパイプの外径がφ3mmだったので、3mmのドリルで掘り進むと、途中でパイプの先端がドリルの刃に絡みついて引き抜くことができた。ハンドドリルでは刃が傾いてフロートチャンバー本体を傷つけるリスクがあるので、ボール盤を利用して作業したい。

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フロートチャンバー側が無傷なら圧入部分からガソリンが漏れることはないが、念のため圧入前のパイプ先端に耐ガソリンタイプの液状ガスケットを塗布しておく。

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打ち込み治具をパイプにかぶせてハンマーで軽く叩いて圧入する。治具の先端がフロートチャンバーに接触するまで圧入すれば良い。

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真新しいオーバーフローパイプが輝くフロートチャンバー。パイプに穴が開いたり折れたりしたフロートチャンバーも再使用できるのは、絶版車ユーザーにとって朗報だ。

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