入っているから大丈夫!! 減っていたら補充すれば良い!! 汚れていても特に気にしてはいない……!! そんな扱いをされているのが、実はブレーキフルードではないだろうか!? 前述した要素は、すべて大間違いである。ブレーキフルードは単なる液体ではなく、極めて神経質であることも知っておきたい。ここでは、ブレーキフルードの重要性を再確認しておこう。


新品フルードはクリアで美しい  


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リザーブタンクキャップを取り外して内部が汚れていたら、最低でも、ティッシュペーパーで汚れたフルードをすべて吸い取り、さらにタンク内部の汚れをキレイにした後に新しいフルードを補充しておきたいものだ。作業後はリザーブタンクキャップを復元して、ブレーキレバーをゆっくり5~6回程度ポンピングしてみよう。これで僅かなエアー混入も排出することができる。しかしこの作業は、リザーブタンク内部の汚れたフルードを入れ換えたに過ぎないので、ブレーキシステム全体のフルードを早い時期に交換したいものだ。


マスターインナーカップシールの組み込みは重要  



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マスターシリンダー内にはピストンユニット=インナーキットと呼ばれる、カップシールを2連でセットしたパーツが組み込まれている。以前はバイクメーカーによって部品の供給方法が異なり、組み込み済みのアッセンブリー供給とバラバラ部品での供給とがあった。現在はほぼすべてのメーカーがバラ部品供給となっているようだ。そのため、ピストン本体にカップシールを組み込むのは作業担当者の仕事となっている。
自動車用のカップシールはサイズが大きく専用のインストールツールが販売されているが、小型のバイク用カップシールに対応したインストールツールは販売例が少ない。組み込む際には、リング状カップシールへダメージを与えないように細心の注意が必要だ。ここでは、100円ショップで購入した給水キャップや不要になったコーキングキャップを特殊工具の代用品として利用してみた。本来ならメーカー純正SSTを利用すべきところだが、自作の道具でもスムーズかつ正しくカップシールを組み付けることができる。作業時にラバーグリスやメタルラバーを併用することで、カップシールが滑って広がり、組み付け作業性が圧倒的に良くなる。カップシールを組み込む際は、重要な向きを間違えないように!! 向きが違うと油圧がまったく掛からなくなってしまう=ブレーキとして働かなくなってしまうのだ。


サビが原因でエアー抜きできないことも!?




ブレーキフルードには「高い吸湿性」があるため、気が付いた時には、エアー抜きのブリーダーポートがサビで詰まってしまっているケースがある(本当によくある)。こんな状況では、いつになってもエアー抜きができない!! エアーブリーダーが詰まったまま注射器を使ってエアー抜きやフルードの送り込みをしようとして、周囲にブシュッ!! とブレーキフルードを撒き散らしてしまった経験のあるサンメカは多いはず。
フルードの交換やエアー抜きを実践する際には、あらかじめブリーダーの内部通路が確保されていることを確認しておこう。そんな確認だけで作業性は圧倒的に良くなる!! ネジ部分の汚れやサビを除去し、内部通路の確保はエアーブローで確認しよう。

ブレーキホース内部のフルードも積極交換


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ブレーキホース内のブレーキフルードは、キャリパー側ブリーターへシリンジを接続することで抜き取ることができる。シリンジ接続後にブリーターボルトを緩めてシリンジを引っ張り、旧フルードを引き抜くのだ。マスターシリンダー側のリザーブタンクへ新しいブレーキフルードを注ぎ足し、フルードレベルを保ちながら作業進行しよう。シリンジ内がフルードで満たされた時にはブリーダーボルトを締め付け、シリンジ内フルードを排出後に同じ作業を繰り返し行おう。
リザーブタンク側の減ったブレーキフルードは注ぎ足すが、うっかり注ぎ足し忘れてしまうとブレーキラインの中にエアーが混入してしまうので要注意。ワンウェイバルブ付きホースがある場合は、ブリーターボルトを開け閉めせずに連続的な作業も可能になる。


POINT
  • ポイント1・ブレーキフルードの交換サイクルは1年に1回が理想的
  • ポイント2・ブレーキフルード内の汚れはマスターシリンダーのインナーキットシールやキャリパーピストンシールによるもの
  • ポイント3・汚れを放置するとブレーキの効きやマスターシリンダーのレバータッチが悪くなる

ブレーキフルードにとって大敵なのは水分。ブレーキフルードにはDOT3とかDOT4などの規格があるが(ハーレー・ダビッドソンはシリコン系フルードを使っているためDOT5表記となる)、これらの数値違いは熱に対する沸点値の異なりを意味し、3よりも4の方が沸点値は高い。ブレーキフルードには吸湿性があるため、使い続けているといつしか吸湿してしまい、それによってブレーキフルードの性能が一気に低下してしまう。また、この水分がブレーキキャリパーやマスターシリンダー内で作動しているインナーパーツにも悪影響を及ぼす結果となる。理想的には1年に1回はブレーキフルードを交換しておきたい。
特に、ロングツーリングで長時間雨に降られたような後には、必ずブレーキフルードの入れ換えをしたいものである。完全入れ換えをする際には、まずはリザーブタンク内のフルードを交換し、その後、キャリパー側のエアーブリーダーボルトからブレーキライン内のフルードを抜きつつ、減った分をリザーブタンク側へ補充するのが良いだろう。


バイクメーカー純正ブレーキマスターのインナーキットは、ブレーキピストン本体にカップシールが組み付けられた状態で納品された例が以前は多かった。しかし近年は、すべての部品がバラバラ状態で納品されることが多くなったようだ。つまりカップシールを組み付けるためには特殊工具のカップシールインサート(インストーラー)、通称「ロケット」と呼ばれる工具が必要不可欠だ。メーカー純正SSTを所有しているのなら良いが、なかなかそうはいかないもの。カップシールを指先で引っ張って組み付けるのは厳禁。
そんなときにお勧めしたいのが廃物利用のインサートである。100円ショップの台所用品売場へ行けば、このようなカタチをした商品の一部分があるはずだ。以前に接着剤のノズルを利用して作ったこともあるが、それでも作業性は良かった。特に使いやすかったのが、コーキング剤のノズルだった。


個人売買や現状販売の中古車を購入した際には、各部の点検&メンテナンスをしっかり実践した後に走り出すのが理想的である。最初に点検すべきポイントがブレーキである。ブレーキフルードは、汚れの程度や量に関係無く交換するのがベストだろう。フレッシュになることで、内部の汚れやスラッジを流し出すことができ、それがブレーキ性能の維持に大きく影響するためである。フルード交換の際には、エアーブリーダーのコンディションにも気を遣い、必ずコンディションを点検しよう。高い吸湿性を持つブレーキフルードによって、ブリーダーの内部通路がサビで詰まってしまっているケースが多いのだ。
ブリーダーが固着し緩まなくなり、最悪で折れてしまうケースもあるが、これも吸湿性によるサビの発生が大きな原因である。作業後にはエアブロー実践、パーツクリーナーで残留したブレーキフルードを洗い流してからゴムキャップを必ずセットするように心掛けよう。


https://news.webike.net/parts-gears/33050/

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