「ビッグキャブ装着」はキャブレター時代の原付バイクの代表的チューニングメニューのひとつです。ベンチュリーに小指も通らないような純正キャブの口径を拡大してエンジンパワーを上げるのはワクワクしますが、キャブ本体ばかりに気を取られていると思わぬところで足元をすくわれます。スロットルケーブルのチョイス次第で、下手をすればエンジンが掛からない!? なんてことになりかねないので注意が必要です。

ピストンバルブキャブだと気がつきにくいインナーケーブル問題

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エンジンをボアアップしてビッグキャブを装着したら、キャブセッティングを行うのが前提となる。汎用のキャブレターに装着されているジェットやニードルは、さまざまなエンジンやマフラーに対応できるよう選定されているが、ドンピシャに合わせるにはプラグの焼け具合などから判断してジェットを合わせていく。

 

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ビッグキャブを装着したにも関わらず純正スロットルケーブルを流用した失敗例。スロットルストップスクリューを目いっぱい緩めても、インナーケーブルの長さ不足でスロットルバルブが全閉にならない。これでは吸入負圧不足でエンジンが始動できない。バルブがこれほど開いていてもキャブボディにセットできてしまうため、始動不良の原因に気づかず悩むユーザーも少なくない。

 

エンジン性能との相談になりますが、キャブレター口径を拡大することで性能アップを実感できるバイクは多いものです。操縦性や安全性、燃費性能を考慮して設定している純正キャブをオーバーサイズにするだけで「こんなに走るようになるの!」と驚くことも少なくありません。
特に原付クラスの小排気量エンジンでは僅かな変化も感じ取りやすく、ボアアップなどのエンジンチューニングに合わせてボア径φ16mm程度の純正キャブをφ20mmに変更すれば、劇的な変化を体感できます。
それはキャブレターに限らずフューエルインジェクションでも同様で、カスタムで人気の高い機種向けにはアフターマーケットパーツとしてビッグスロットルボディが用意されていることもあります。

 

手軽で効果が高いビッグキャブ装着時に欠かせないのが、スロットルケーブルの長さ確認です。特にスロットルバルブをダイレクトにケーブルで開閉するピストンバルブキャブにとって、ベンチュリー径とインナーケーブル長さの関係はシビアです。
ピストンバルブキャブの場合、シンプルに考えれば全閉から全開までのケーブル移動距離はボア径と同じになります。ボアがφ16mmならピストンのストロークは16mmで、ピストンを上部から引き上げるインナーケーブルも16mm移動します。これをボア径φ20mmのキャブに変更すると、ピストンストローク、インナーケーブルの移動量も20mmに増加します。
ここで注意が必要なのは、インナーケーブルの移動量が増える分だけ必要なケーブル長が長くなることです。インテークマニホールドやキャブ本体がボルトオンで装着でき、アウターケーブルの長さや取り回しが変わらなければ、スロットルケーブルが流用できそうに思えますがそうではありません。

 

スロットルケーブルの基本的な取り付け方は、キャブレターのトップキャップとリターンスプリングにインナーケーブルを通し、ケーブル先端のタイコをスロットルバルブに引っ掛けたら、それらをセットでキャブボディに挿入します。ピストンを挿入する際に下端のカッタウェイ(切り上がり)の向きが正しく、ガイドに干渉しなければトップキャップはボディにしっかりはまります。
これでインテークマニホールドにセットできますが、グリップを操作してスロットルバルブが引っかからず開閉することを確認すると同時に、ベンチュリー内を目視で覗き込んでみましょう。この時に違和感に気づけばラッキーです。大丈夫だと楽観していたケーブル流用が失敗していると、スロットルバルブが全閉になっていないこともあり得るからです。

POINT

  • ポイント1・ピストンバルブ式のキャブレターをビッグキャブ化するとスロットルケーブルのインナー長が不足してスロットルバルブが完全に閉じなくなることがある
  • ポイント2・キャブレターを交換してケーブルを付け替えたらスロットル全閉状態でベンチュリー内を覗いてバルブの位置を確認する

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