
エンジンの仕様を変更した時はもちろん、吸排気系パーツの交換でもキャブセッティングの変更が必要な場合があります。ジェットサイズを大きくしないと調子が悪い時など「パワーアップしたからだ」と思いがちですが、果たしてそうでしょうか? ボバーカスタムでカスタムされたカワサキエストレアを例に、エアークリーナーケースとキャブセッティングの関係を考えます。
エアクリーナーケース撤去によるキャブセッティングへの影響とは?

外装から足周りまでを一新してノーマルの面影はまったくないカワサキエストレア。1992年から2017年まで発売されたロングセラーで、2007年以降は吸気系がフューエルインジェクションとなるため、カスタムでシンプルなルックスに仕上げたいなら2006年以前のキャブレター仕様がおすすめ。

エアークリーナーケースを取り去った代わりにパワーフィルターを装着した吸気系。ボバースタイルに純正ケースはミスマッチだが、外したままではまともに走行できない。

パイロットスクリューの戻し回転数を基準値通りにすると、スロットル開け始めで混合気が薄い症状が顕著なので、セッティングを変更する。純正キャブ用のジェットやニードルのサイズ違いを探すのは容易ではないが、キースターの燃調キットがあれば自在に変更できる。
キャブレター装着車のカスタムで今も盛んに行われているのがケーヒンFCRやミクニTMRといったスペシャルキャブレターの装着や、純正キャブレター使用時のエアークリーナーケース撤去などです。
ひと昔前ならスカチューン、現在ではボバースタイルと呼ばれるカスタムでは、シート下をスッキリ見せるため野暮ったい純正エアークリーナーケースを取り外すのは定番メニューとなっています。
ここで紹介するカワサキエストレアもボバースタイルへのモディファイに伴い、純正のCVKキャブのままエアークリーナーケースを取り除き、パワーフィルターを装着した1台です。
これによって見た目はグッとクールになりましたが、同時に「スロットル低開度域での扱いづらさ」というネガティブな面が明らかになってきました。チョークを使った始動とアイドリングではさほど問題はないのに、いざ発進するとエンジンにパワー感がなく、どうにか加速してもスロットルを戻すとマフラーからパンパン……とアフターファイヤーが発生。
対症療法としてパイロットスクリューを3~4回転近く戻すと走行中はいくらかマシになりますが、今度はアイドリング中にカブリ症状が出てくるのでスクリューを締めて対処しなくてはなりません。ちなみに標準戻し回転数は2・1/4回転です。
そんな乗り方をしているせいかパイロットスクリュー付近はスクリューを伝ってガソリンが滲んでいるようなガソリン焼けが顕著で、スクリューに入っているべきOリングのダメージも想定されます。このOリングはスクリューネジ部からパイロットアウトレットへの二次空気吸入を防止するもので、頻繁にスクリューを回すことは想定されていないからです。
パイロットスクリューの戻し回転数を多くすると、アイドリングからスロットル低開度域の混合気が濃くなります。標準回転数よりたくさん戻さないとエンジンの具合が悪いのであれば、エアークリーナーケース撤去によってガソリンが不足していると考えられます。
吸気にとって窮屈なボックスを外したことで多くの空気が入るようになったため、ガソリン不足になったと思いたいところですが、果たしてそうでしょうか?
- ポイント1・愛車のカスタムで純正エアークリーナーケースを取り外すとキャブセッティングも変わってしまう
- ポイント2・パワー感のなさやアフターファイヤーが発生する場合は混合比のセッティングが薄いサイン
この記事にいいねする