分離給油の2ストエンジンにとって「オイルポンプ」は心臓のような働きをする極めて重要なパーツである。内部固着による作動不良があれば、メカニカルトラブルもあるが、ここでは、オイルポンプがどのように稼働しているのか? エンジン始動前に先行で確認しておこうと思う。
2ストスズキのオイルポンプは……
チェーングリスやドロなどでドライブスプロケット後方のカバーが完全に埋もれている例が実は多い。スズキ2ストロークモデルの場合は、ドライブスプロケットの後方にオイルポンプを装備しているモデルが多い。カバーには点検窓のような穴があるが、オイルポンプの作動性を確認するときには、スチール製のカバーを取り外そう。
ポンププーリーの「刻印刻線」確認から
スロットルに手を触れない状況=アイドリング時にはオイルポンププーリーのポンチマークがボディー側の刻線とほぼ一致している。これはあくまで目安として考えよう。オイルポンプの作動状況を確認する際には、スロットルを序々に開けてプーリー側の長い刻線とボディー側の刻線が一致する場所でスロットルを固定する。まずはこの状況を作ってみよう。
作動領域でのプーリー開度確認
刻線が一致している状況のまま左側キャブのスロットルサイドにあるサービスホール(プラグ)を取り外す。内部には「○」マークが見える。このマークの上端がサービスホール上端と一致した状態で、しかも刻線が一致するようにスロットルワイヤーを調整する。
全開領域のプーリー開度確認
スロットル全開時のプーリー位置も確認した。もうひとつのポンチマークがクランクケース側の刻線と一致。おそらくこの確認も目安だと思うが、このポンプは正しく作動しているようだ。この車両のオイルポンプケーブルは左側キャブの外側に取り回されていたが、おそらく本来なら左右キャブの「真ん中」にケーブルが取り回されて正解だと思われたので、この確認調整時に2連キャブの間から取り廻すようにケーブルレイアウトを変更した。
- ポイント1・まずはオイルポンプの静的セッティングを確認調整
- ポイント2・ 周辺コンディションを確認しつつポンプ周辺をクリーンナップ
- ポイント3・オイルタンク内の洗浄とキープクリーンを忘れない!!
80年代前半以前のスズキ製2ストロークエンジンの多くは、ドライブスプロケット後方のクランクケース内にオイルポンプがレイアウトされているモデルが多い。ヤマハのオートルーブポンプは、クランク軸の回転を駆動力とし、リングギヤを回転させながらカム山付きプランジャを往復運動させてエンジンオイルを吐出する方式を採用している。スズキのそれはカワサキとも似た方式で、メーカーはいずれもミクニ製だ。クランクシャフトではなくギヤを介してミッション側から駆動力を得ており、ロータリープランジャを回転させながらオイルを圧縮しつつ吐出する方式を採用している。エンジン回転の上昇とスロットル開度に同期して吐出量を増量させる方式は、2ストロークエンジン用オイルホンプに共通した内容である。
現段階ではエンジン始動前なので、オイルの吐出状況や吐出量を測定するなど、重要なデータ取りはできないが、スロットル操作に対するプーリーの動きなどは確認点検することができる。ポンプケーブルがスムーズに作動し、オイルポンプ本体のプーリーが同期するか?エンジン始動前に確認し、必要に応じて調整作業を施しておこう。スズキのオイルポンプは、その取り付け場所の関係で、汚れたカバーの内側に隠れていることが多い。まずはドライブスプロケット周辺の洗浄から始めよう。
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