経年劣化だけでなく停車中のイタズラによって切れたり裂けたりすることもあるシートレザー。誤魔化しながら乗り続けようとしても、ライディング中の体重か加わることでダメージが拡大し、スポンジが含んだ雨水がジワリと染み出して不快になることも。機種によっては縫製済みの表皮が容易に手に入り、タッカーを準備すれば経験の少ないサンメカでもきれいに張り替えられるシートレザー。チャレンジしたいと思いませんか?

濡れたスポンジはしっかり乾燥させることが重要

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経年劣化によって表皮のツヤが失われるレザーがある一方で、表面の凹凸(シボ)がすり減ってツヤツヤになるレザーもある。画像で見ると光沢があって問題ないようだが、実際はプラスチックのような質感で座り心地も良くない。

 

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スポンジが薄くテンションが掛かっている外周部のレザーが切れると傷が大きくなりやすく、さらに経年変化による縮みが加わることで接着剤で貼ろうにも閉じない傷になってしまう。レザー補修用の絆創膏のようなテープも売っているが、目立つ場所なので貼っても仕上がりがイマイチなのは明らかだ。

 

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機種によっては純正スポンジに合わせた縫製済みレザーも販売されている。価格は製品によってまちまちだが、数千円で購入できる物もある。レザー補修用テープも千円程度の価格なので、別途タッカーの準備が必要となるもののレザー張り替えは特殊な作業とばかりは言えないのだ。

 

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水分を含んだシートスポンジは日陰干しで充分に乾燥させてから、元々接着されていた場所にもう一度接着剤を塗布してシートボトムに貼り付ける。ボンドG17に代表されるゴム系接着剤は、接着面の両側にまんべんなく塗布して指で触れても着かない程度まで時間をおいてから張り合わせることで強い接着力を発揮する。

 

紫外線や雨風にさらされるバイク用シートレザーは、他の自動車用や屋内用ソファーの表皮に比べて格段にシビアな環境に置かれています。その上ライディング時にライダーが体重移動を繰り返すことで表面は擦られ、シワが寄り、シューズやウェアで傷が付くこともあります。

バイクの製造年代によってシートレザーに使用される合成皮革の性能や特性もまちまちで、経年変化によって表面が硬化してひび割れてしまったり、デザインの一部である高周波溶着のウェルダーパターンに沿って大きく切れてしまうものもあります。

防水レザーを使用している純正シート表皮が裂けたり破れると、そこからシートスポンジに雨水が染み込み、一度入り込んだ水分は内部に留まり続けます。そのため晴天時に乗車してもジワジワと染み出して不快な思いをすることになり、切れ目をガムテープやビニールテープで閉じると今度はテープの糊がウェアに付着するなど別の問題が発生します。

かつてのシート張り替えといえば、専門業者にシートを預けてワンオフでレザーを製作、張り込み作業をしてもらうのが一般的で、自分で張り替えるとなると汎用のレザーを苦心惨憺しながら張る他はありませんでしたが、現在では原付スクーターや人気機種を中心にシート形状にあわせて裁断、縫製済みのレザーがネット通販で購入できるようになっています。

シート職人でなくても既製品のレザーを購入できるのは便利な世の中ですが、仕上がりの良さを追究したいならいくつかの段取りをつけておくことが必要です。なかでも最も重要なのが濡れたスポンジの乾燥です。切れた表皮の隙間から染み込んだ水分をそのままにして新たにレザーを張ると逃げ場を失った水分がスポンジを劣化させたり、張り替えるレザーの種類によっては内側から湿気が染み出すこともあり、レザーの劣化も早まります。

とはいえ乾燥を急ぐため直射日光にさらすと水分による劣化(加水分解など)でもろくなったスポンジが崩れやすくなるリスクもあるので、風通しの良い日陰で乾かすのがおすすめです。見かけ上、水が滴るほど濡れていなくても、日陰干し後のスポンジは乾燥前に比べて明らかに軽くなる場合もあるので、新しいレザーが入手できたからと言って慌てて張り替えしないようにしましょう。

シートボトムとスポンジが接着剤で貼り合わせてある場合、スポンジを乾燥させた後に再び貼り付けておくことも重要です。接着されたスポンジはシートボトムと一体化することでシートの剛性を発揮します。古くなったスポンジを再使用する際に「そもそも中古品なんだから接着してもしなくても強度は変わらないだろう」と接着剤を省略すると、走行中にスポンジとシートボトムが微妙にずれて違和感の原因になることがあります。

接着剤を塗布するポイントは、スポンジに残った古い接着剤の痕跡を参考にします。裏面全面にたっぷり塗ればシートボトムとの一体感が向上するのは確かですが、荷重の逃げ道がなくなる分、座り心地が硬くなる可能性もあるので必ずしも利点ばかりとは限りません。

 

POINT

  • ポイント1・シートレザーが切れてスポンジに染み込んだ水分は日陰干しで乾燥させる
  • ポイント2・シートボトムにスポンジが接着されている場合はシートレザー張り替え前にあらためて接着しなおしておく

シートレザーは先に前後をがっちり固定してからサイドを交互に張り込む

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今回使ったのはコンプレッサーの高圧空気でステープルを発射するエアータッカー。ソートボトムは端に行くほど肉厚が薄くなるので、ステープルが長すぎるとシートボトムだけでなくレザーを貫通してしまうこともある。ステープルを選択できるならシートボトムの厚さに応じた長さをチョイスする。

 

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シートボトムのセンターとレザーのセンターを入念に合わせてから、前端部分を固定する。ステープルを打ち込むうちに「ここじゃなかった」と気づいたら、ニッパなどで抜いて打ち直せば良い。

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レザー後部にはセンターを示すV字の切り込みがあったので、シートボトムのセンターに合わせてステープルを打ち込む。左右を張り込むうちに前端と後端をもっと引っぱりたくなる場合もあるが、その際もセンターがずれないようにやり直す。

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左右にステープルを打つ際は前端から同じ距離の左右を均等に固定していく。シワが取りづらい場所はレザーが伸びやすくなるようドライヤーで軽く加熱してから固定すると、温度が下がって縮む際に張りが強くなってシワが出なくなる場合もある。加熱によって伸び縮みするか否かはレザーの種類によって異なる。

 

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ツルツルテカテカのレザーに比べて新品レザーの質感は落ち着きと高級感がある。裏側でどれだけステープルの打ち直しを行ったとしても、表面がこの仕上がりなら納得できる。一枚物のレザーを立体的なシートスポンジに張り込むのは簡単ではないが、採寸裁縫されたレザーは経験が少なくても成功する確率が高くなる。

 

機種専用に採寸されたシートレザーは既製品であってもスポンジ形状にフィットするため、張り込み次第でハイレベルに仕上げることが可能で、そのために用意したいのがタッカーです。タッカーは文房具のホッチキスのようなコの字型針金を打ち込む機械で手動式、電動式、エアー式の3タイプがあります。

一番リーズナブルなのは手動式ですが、シワが寄らないようレザーを引きながらステープルと呼ばれる針を打ち込む場合の作業性や、細かいピッチで多くの針を打つレザー張り込みでは使い勝手が良いとは言えません。

電動式はトリガーを握るだけで強力に針を打ち込めるので手動式に比べて楽に作業できるのが魅力です。またエアータッカーに不可欠なコンプレッサーが不要で、充電池仕様であればどこでも使えるのも利点となります。ただし価格はエアータッカーより高くなります。

エアーコンプレッサーの高圧空気でステープルを発射するエアータッカーは、コンプレッサーが必要という条件がありますが、タッカー本体はネット通販などで安価で購入できる物もあり、手動式とは比べものにならないほどパワフルです。

タッカーの種類や特長は先の通りで、どのタイプを選ぶにしても重要なのはシートレザーをシワなくピンと張るためには充分に引っ張りながらステープルを打ち込むことです。素材の採寸や裁縫が良くても、たるみやシワが寄った張り込みでは満足感も低下してしまいます。

シートレザーをピンと張るには1・先にシート前端と後端を固定してから、2・左右側面を固定するという手順で作業を行います。シートレザー用の合成皮革には様々な種類がありますが、伸びやすい方向と伸びにくい方向が直交している原皮の場合、前後と左右をどのように使うかによって張りやすさとシワの出やすさが変わります。

既製品のレザーを使用する際はユーザーが伸び方向を選ぶことはできませんが前後に伸びづらい目を、左右に伸びやすい目を配置することで左右側面に強いテンションを掛けられるため、ステープルで固定した後にシワが寄りづらくなります。

またレザーにステープルを打ち込む際にタッカーの勢いが強すぎると、ステープルが貫通してしまうことがあります。レザーを強く引っ張っているとなおさらです。レザーの端部にマチがある場合はマチを狙ってステープルを打ち、裁断したままの場合は折り返して厚みをつけてやることでレザーが補強されて貫通しづらくなります。また前後を決めてから左右を固定する際は、一方を連続的に固定するのではなくシートボトム左右交互にステープルを打ち込むことでレザーの偏りを防止できます。

こうした注意点ばかり並べると、失敗しやすく難しい作業のように思われるかも知れません。しかし主としてポリプロピレン製のシートボトムに打ち込んだステープルはニッパなどで容易に引き抜くことができるので、一発勝負で決めようと思わずシワが寄った部分は躊躇せずやり直すことが可能です。

シートレザーの張り替えはタッカーを用意しなくてはならない点で、ハンドツールを使った通常のメンテナンスとは違った異なるハードルがあるのは事実です。しかしペイントされた外装パーツと同様にシートレザーのコンディションはバイクのイメージを左右する重要な要素となるので、リフレッシュやイメージチェンジのために張り替えを実践してみるのも良いかも知れません。

 

POINT

  • ポイント1・シートレザーを固定する道具は軽い力でステープルを強力に打ち込める電動タッカーかエアータッカーがおすすめ
  • ポイント2・シートレザーは先に前後を固定してから左右を固定する

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