
不動車の初代CBR1000F(SC21)を自宅のガレージできれいにしていく作業を報告する記事の第2回。今回は「ブレーキを綺麗にしてみた(ガンコート編)」ということでブレーキの塗装、組み上げを中心にご報告していきます。
ブレーキフルードは塗装への攻撃性が強く、多くの塗料は長時間ブレーキフルードに触れると剥げてしまいます。ブレーキキャリパーやマスターシリンダータンクなどは塗っても剥げてしまうことが多いのと、耐熱性能も求められるため、再塗装をしたい場合どうしたら良いものか?いろいろ調べていったところ「ガンコート」の存在を知ることとなりました。

綺麗になったブレーキ類
バイクのブレーキは重要な保安部品です。
メインテナンスを行う際は完全に自己責任での実施、もしくは、正規の資格を持った整備士のいるショップにご依頼ください。
目次
ガンコートとは?
「ガンコート」というのはアメリカKG社が開発した1液の溶剤塗料で、スプレーガンで塗装後、170℃以上で焼き付けることで非常に高い硬度(9H)と放熱性を発揮する機能性塗料です。
現在日本ではCARVEKさんが輸入販売しており、誰でもオンラインで購入することが可能です。
製品詳細は公式WEBサイトをご確認いただきたいのですが、パウダーコートほど大規模な設備投資なしで施工できるとのことでしたので経験値上げも兼ねて試してみました。
※ガンンコートの公式webサイトはこちら(外部サイトが開きます)

今後の作業に備え準備したガンコート
いかにして焼き付けるか?
「ガンコート」の性能を発揮させるには焼き付け温度がとにかく重要……とのこと。
CARVEKさんから確実に焼き付けができるオーブンが販売されているのですが、サイズが大きいオーブンは置き場所がないのと、利用頻度と価格が身分不相応?に感じたので自己責任で簡易オーブンを自作してみました。(たびたびで申し訳ありませんが、お試しいただく場合は自己責任でお願いいたします。)
費用の総額としては1万円以下(ヒートガンを含めず)でおさまっています。
自作するオーブンに必要な機能と実現方法
焼き付けるものを吊り下げるハンガー → ステンレス製の室内物干しを流用。
170℃を1時間以上維持できる断熱箱 → コンパネをホームセンターでカット、木ねじで組み上げ、8mm断熱シートを全面に、ヒートガンの送風が当たるところは薪ストーブ用のグラスウール断熱材を貼込。
庫内を温める装置 → 箱に2つ送風口を作りヒートガンを差込。(ヒートガンの連続使用を避けるため4つ使用)
庫内温度を測る温度計 → 天ぷら用の温度計

断熱材

組み上げた簡易オーブン

庫内温度計
箱の形状やサイズはホイールやリアのスイングアームも収まるように設計しています。
物干しに金属製のS字ハンガー+針金で部品をつるし、針金を逃がしながら、断熱材付きの前蓋と天蓋をはめ、ピンで簡単に固定できるようにしています。
針金を通す隙間が各5mm程度あいているところに天ぷら用の温度計を差し込んで庫内温度を確認、必要に応じてヒートガンをON/OFFするようにしています。
木材で作っていますので発火温度以下にできるのか?非常に不安でしたが、加熱中でも外側は触れてもやけどしない程度に抑えることができていました。
加熱は1500Wにヒートガンを使いますが、2台のヒートガンを同じコンセントからとるとブレーカーが落ちるのでブレーカーが異なるコンセントを使用しています。
夏場と冬場で暖まり方が全く違うのですが、ガレージ内気温が8度くらいでも170度を維持することは可能でした。(気温が5度以下だと周辺を温めないと厳しいかもしれません)ただし、温度が上がるまで40分くらいかかるので結局焼き付け中の2時間近くそばに張り付かないといけないのと、結局電気代がとんでもなくかかるので、小さい部品だけを焼き付ける場合は小さめのオーブンを買ったほうが良いかもしれません。
結局、自分は温度と時間を指定できる中古のオーブントースターを買って併用しました。

オーブントースターで焼き付け中
塗装に関して
ガンコートの特長としてとにかく塗膜が薄いということがあり、塗料の消費量が少なくて済むため、少ない量で多くの部品を塗ることができます。
他の塗料に比べて単価が高いという話もありますが、塗れる面積が広いので、結果的に自分はそこまで高いとは感じませんでした。1液性の塗料で薄め液も不要ですので余った塗料は元に戻すことが可能です。
ただし、薄く塗るためにスプレーガンは吐出口が細いもの(0.3~0.5mm)が必須とのことなので、一般的なボディー塗装用のガンとは別に用意することにしました。
色はブレーキキャリパー、マスターシリンダーともにサテンブラック(=艶あり黒)、レバー類はチタンカラーを選択して塗りました。塗装後の手入れはプラモ用ラッカー系薄め液を使用しています。

ガンコートで使用する機材

ガンコート塗装中
やってみて気付いたこと……
■すぐに塗料が乾くので針金などでつるすところも問題なく塗れる(仮乾燥なので焼き付け時に触れるとはがれる可能性大)。
■きちんと焼き付けると叩いた時の音が変わる(キーンと高くなる…)。
■変形するものに塗ると塗膜が割れる。
■マスクをしていても吸い込むのでしっかりとした防毒マスクをしたほうが良い。
■しっかり攪拌しないと色がおかしくなる。
■170℃で焼くと紙のマスキングは焦げ、プラ系の部品は溶けてしまう。
■脱脂がしにくいところや硬度が低いものなどに塗る場合は専用のハイブリッドプライマーを塗ったほうが良い。
■とにかく塗膜が薄いので、クリアランスが厳しいシャフトやネジ類にも塗ることができる。

防毒マスク
マスターシリンダー窓……融解
170℃で1時間以上焼き付けたところ、マスターシリンダーについているプラ系の窓が溶けて……しまいました……。
マスキングをすれば何とか形状を保つことはできるのですが、一度溶けたものが固まったような感じになります。部品表にはそこだけの部品はなく……万事休す……と思っていたところ、知人から「汎用品として普通にネット通販で売ってるよ」という情報をもらえたので、さっそく注文して交換することにしました。
窓はハメコミ式で、裏側からポンチとハンマーでたたけば抜けます。クリーニングしてからパーツをたたいて圧入しなんとか復活させることができました。
自分はハンマーを使うのがとにかく下手なので……斜めに入ってしまうことがあり、3個もダメにしてしまいました。5個セット買っておいてよかったです。

溶けたブレーキフルード確認窓を交換
ブレーキ組み上げ
マスターシリンダーとキャリパーピストンのシール、ブーツ、ブレーキブリーダー、およびキャップはWebikeから純正部品を取り寄せて交換しました。初めての作業も多く、ブーツの向きやグリス類の塗布場所を間違わないようにCBR1000F (SC21)のサービスマニュアルを見ながら慎重に作業をしました。
ちなみにSC21は国外専用車なので日本語マニュアルがないため一部専門用語の理解のためCBR750F(RC27)の日本語マニュアルも入手し、照らし合わせながら作業しました。
両車両はエンジン以外は似たような構造をしているのですが、クラッチがワイヤーと油圧で違ったり、リアサスが違ったり…純粋に読み物として楽しく、なるほど…と思うことも多々ありました。
一通り組みあがったのですが、車体に組付けられるは当分先……(ほんとにすべて治せるのか不明……)ということで……この後しばらくはクリアボックスに入れて保管します。

組み上げ準備中

マニュアル確認中

組み上げ完了

作業前
作業まとめ
今回はブレーキフルードにも負けないDIY領域では最強?の塗料「ガンコート」の塗装、焼き付け、マスターシリンダーとキャリパーピストンの組み上げをご紹介しました。
ガンコートの塗装は最低限の道具と手順を守れば特に難しくはありませんでした。その後の焼き付け作業は素人の自分にはハードルだったのですが、大きな部品は簡易オーブン、小さな部品はオーブントースター…と、効率よく実施することが可能になりましたので、今後の作業でも必要に応じてどんどん活用していくことを考えています。
次回は塗装が剥げまくり、見た目はボロボロだったホイールのリフレッシュを進めていきます。
タイヤの取り外し、グラインダーとサンドブラストを使ったホイールの研磨、ガンコート塗装と焼き付け、ベアリング&シール類の交換、タイヤの組みつけを行っていきたいと思います。
使用した工具、備品
細吹きペイントガン(0.5mm)
水抜きフィルター
自作簡易オーブン(コンパネ、断熱シート、グラスウール断熱材ステンレス製物干し)
ヒートガン1500W×4
天ぷら用温度計
針金
S字フック
オーブントースター(中古品)
圧入用ハンマー
防毒マスク
CBR1000F(SC21)サービスマニュアル(中古品)
CBR750F(RC27)サービスマニュアル(中古品)
CBR1000F(SC21/24)パーツリスト(中古品)

サービスマニュアル類
購入した部品
ガンコート サテンブラック 500ml
ガンコート チタンカラー 500ml
ラッカー系薄め液
ハイブリッドプライマー
ハイブリッドプライマー専用薄め液
キャリパーピストンのシール類一式、ブーツ、ブレーキブリーダー、およびキャップ
ブレーキパッド一式
マスターシリンダーピストン一式(クラッチ側も)
マスターシリンダー窓部品(5個入り)
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