「キックが降りない」というトラブル原因を突き止めることができたので、あとは「シンプルな2スト空冷エンジンを復元するだけ」ではいけない。ここでは、エンジン腰上を分解したときに、最低限実施しておきたい、しなくてはいけない各パーツのコンディション確認を積極的に行うことにしよう。
あわてた「分解洗浄」に落とし穴!!
極めて稀な極小のボアサイズ。Φ36.5mmという小さなボアサイズ=ピストン外径で、しかも鋳鉄ブロックシリンダーを採用しているHS90。そのためシリンダー内壁が通常ユースで極端に磨耗してしまうケースは稀だが、焼き付きを経験していると、深いキズ跡を残していることがある。内壁のコンディションは目視と指先でしっかり点検しよう。詳細点検のためには、カーボン汚れを除去洗浄しなくてはいけない。2ストエンジンの場合は、排気漏れや圧縮漏れなどの影響で、燃え切れなかったエンジンオイルが様々な個所に付着し、それがドロや様々な汚れを堆積させてしまう原因にもなる。パーツ復元時、特にシリンダーのドロ油汚れや油汚れは、しっかり洗浄しよう。組み立て途中に汚れがエンジン内に落下したら、大変なことになってしまう。復元前には、シリンダーの排気ポート内や周辺の汚れは確実に洗浄除去しよう。ピストンのカーボン汚れは高性能ケミカル洗剤を利用するのが理想的で、耐水ペーパーなどでゴシゴシ磨き込むのは大間違い!!特にピストンスカート側の汚れは、ケミカルと歯ブラシのような柔らかいブラシを使って洗浄しよう。耐水ペーパーなどで磨いてしまうと、ピストンクリアランスが大きくなり、メカノイズの原因になる。
ダメージを与えないように確認点検
2ストエンジンのコンロッドにはベアリングが組み込まれている。エンジンオイルが無くなり未潤滑=空焚き状態になると、ベアリングのローラーがピストンピンを攻撃してピンの摺動部に段差ができてしまうことがある。分解時にはピンとベアリングを注意深く目視確認しよう。そんな点検時にあると便利なのが虫メガネ=ルーペだ。ピストン単体にしたらルーペを使ってピストンリング溝を目視してみよう。長年走り込んたエンジンの多くが、リング溝にカーボンを堆積しつつ、リングの当たりで摩耗(光っている)部分に気が付くこともある。無理にワイヤーブラシで擦らず、ケミカルを使って溶かしながら洗い流すのが理想的な洗浄方法だ。
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