
パンク修理やタイヤ交換でホイールからタイヤを取り外す際に、リムからビードを引き剥がすのにひと苦労した経験のあるライダーは多いはず。しかしホンダモンキーを筆頭とした1970~80年代のレジャーバイクで多用された合わせホイールは、ビードブレーカーもタイヤレバーも使わずタイヤが交換できるのが大きな特長です。
左右合わせのリムを使う合わせホイールならパンク修理もタイヤ交換も簡単

ホンダモンキーやヤマハチャピィなど1970年代のファミリーバイクに装着されることが多かった8インチタイヤ。3.50インチ幅のオンロード&トレールパターンのタイヤは今でもメーカー品が販売されている。

アルミリムに取り付けられたトレールタイヤをオンロードタイヤに交換する。アルミリムは傷が目立つので、タイヤレバーを使わずに済む合わせホイールの利点が実感できる。

アフターマーケットのリムにはメーカーやサイズ刻印がないので、左右が分かるようリムにマジックで直接書き込んでおく。「ボ」とあるのはボルト挿入側の印。純正の鉄リムを再塗装するとボルトやワッシャーの食い込み痕で左右の区別が付きづらくなので、分解前のホイール左右面をスマホで撮影しておくとよい。
1970年代から80年代にかけて、8インチや10インチといった小径タイヤのレジャーバイクやファミリーバイク用ホイールの定番装備だったのが合わせホイールです。ホイールリムとブレーキハブが別々なのはスポークホイールや1980年代のホンダ製コムスターホイールと同様ですが、合わせホイールはリムが左右二分割でスポークに相当する部分までプレスで一体成型されているのが特長です。
自転車に補助エンジンを付けるところから出発したバイクのホイールとしては、自転車と同様のスポークホイールの方が先行していましたが、合わせホイール自体は1960年代の四輪の軽自動車で一般的に採用されていたパーツでした。そして小径で幅広のレジャー向けタイヤを装着するバイクを開発するにあたり、バイク用にも合わせホイールが普及したのです。
レジャー&ファミリーバイクの後にスクーターが登場すると、ロール成型されたリムに一体化されたハブとスポークを溶接したホイールが主流になりますが、合わせホイールはホンダモンキーやダックスやシャリィ、ヤマハチャピィやボビィ、スズキホッパーやバンバンといったレジャー系モデルの足元を支え続けました。
合わせホイールの最大の特長はボルトナットで締結されたリムが左右に分解できる点です。この構造ゆえタイヤにはチューブが必須ですが、ホイールからタイヤやチューブを取り外す際の難易度は一般的なスポークホイールやキャストホイールに比べて断然低くなります。汎用工具のソケットレンチやT字型レンチがあればリムが分解できるので、通常のホイールで必要なビード落としやタイヤレバーは不要だからです。
パンク修理の際、小径幅広タイヤのビードを落とした状態をキープしながらチューブを引き出すのかなり手を焼きます。ツーリング先などでタイヤを外してホイールを分解するのも大ごとですが、適切な工具さえ持参していればスポークホイール車からチューブを引っ張り出すのと大差はなく、むしろ分解したリムからチューブを取り出して入念に観察することで、パンク修理のクオリティを上げることも可能です。
タイヤ交換の際にもタイヤの左右側面からリムを押しつけて、ボルトナットを締めながら合わせることでタイヤレバーやリムプロテクターを使うことなくタイヤをセットできるので、リムの端部をレバーで傷つけるリスクや心配は無用です。
さらに足周りカスタムの際にも、ブレーキハブは純正のままリム交換だけでインチアップやワイド化ができるので、コストを抑えたドレスアップができます。
- ポイント1・リムが左右パーツに分割できる合わせホイールは1970~80年代のレジャー&ファミリーバイクでポピュラーな装備だった
- ポイント2・ボルトナットで締結されたリムを分解すればタイヤレバーなどを使わずチューブやタイヤが交換できる
リムを分解する際は左右パーツの違いを確認しておくことが重要

新品チューブには販売時に小さく畳まれた折り癖がくっきりと残っており、このままタイヤの中に入れてリムを組み立てると合わせ面に挟み込む危険性がある。

一度空気を入れて膨らませることで折り癖が伸びると同時に、タイヤ内でチューブが均等に広がる。これは合わせホイールに限らず、一般的なスポークホイールのチューブでもやっておいた方が良い。

少しだけ空気を入れたチューブをタイヤに収めてからリムをセットする。この時リムの内面にビードワックスを塗っておくとチューブが滑って挟まりづらくなる。またチューブのエアーバルブをリムの穴に通す際は、穴の周辺でシワが寄らないようにチューブを均等に広げておく。

リムを分解する際にタイヤの回転方向を記録しておけば、タイヤを組み付ける際の助けになる。回転方向が指定されていないタイヤを使用する場合でも、リムに回転方向をマークしておけば、ブレーキハブやスプロケットキャリアを組み付ける際に正誤を判断できる。

組み立てたホイールを車体に組み付けたら、前輪であればタイヤと左右フロントフォークとのクリアランスをチェックして、どちらか一方に寄っていた場合は誤組み立ての可能性が高い。
合わせホイールにはメンテナンスやカスタムなどの作業面で利点がありますが、分解組み立てが簡単にできる代わりに注意が必要な点もあります。
ひとつ目はチューブの挟み込みです。タイヤ交換に合わせてチューブも新品を装着する際、折れ癖がついたままタイヤの内側にセットしてリムをセットすると、合わせ部分にチューブが挟まってしまう危険性があります。
リムのボルトを締める際に違和感に気づけば幸いですが、そのまま組み立てて空気を入れるとチューブが裂けてしまうこともあります。偶然パンクしないまま気づかず走り続けてしまい、次の機会にリムを分解したところチューブの一部が明らかに潰れていたという実例もあります。
こうしたトラブルを避けるには、新品チューブを使用する際は一度空気を入れて膨らませて折り癖を取り除いてからタイヤ内に入れてリムを組み付けると良いでしょう。またリムの内面にビードワックスを塗布しておけば、チューブが滑って挟まりづらくなります。
もうひとつは左右リムの取り違えです。プレス成型されたリムは左右共通のように見えますが、フロントホイールであればブレーキハブ形状、リヤホイールならスプロケットキャリアの形状によってリムとの締結部分が車体中心にないこともあります。
この場合、左右のリム端面から合わせ面までの深さを変えることで車体中心とタイヤセンターを合わせています。そのため、ボルトナットで締結したリムとブレーキハブの組み合わせ方を誤ると、車体中心からタイヤがオフセットされてしまう可能性もあるのです。
リムとハブを組み立てたホイールを車体に仮組みしてフロントタイヤ左右とフロントフォーク、リヤタイヤ左右とスイングアームのクリアランスを確認することで誤組み立てに気づくこともありますが、ホイールサイズやメーカー等の刻印がリムのどちらにあるかといった特長を分解前に記録しておくことで誤組み立てを防ぐことができます。
合わせホイールは小排気量車向けで手軽にいじれるのが特長なので、失敗しないための要注意ポイントをしっかり押さえた上で魅力を引き出したいものです。
- ポイント1・タイヤ交換時に分割したリムを組み立てる際は合わせ面にチューブを挟まないよう注意する
- ポイント2・プレス成型されたリムが左右共通部品でない場合は分解前にマークを付けるなど左右を区別できるようにしておく
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