路面からのショックを受け止め、コーナリングでも重要なサスペンションは、スプリングとダンパーという2つの機能によって成立します。
このうち衝撃を吸収するダンパーにとって、フォークオイルは不可欠な要素です。
フォークオイルの量が減ったり粘度が保たれなければ、ダンパー性能が低下してサスペンションのストローク感やコーナリング時に違和感が出るようになるので、走行1万kmごと、または1年に1度ぐらいの間隔で交換してスポーティな乗り心地を維持しましょう。

車体姿勢を安定させるためにも重要なフォークオイル。


エンジン下にジャッキを置いて車体を安定させ、タイヤやフェンダーを外した後にフロントフォークを引き抜く。
オイルシールからのオイル漏れやインナーチューブの点サビも、フォーク単体であればしっかり確認できる。

排気量の大小や正立、倒立を問わず、ほとんどのバイクのフロントフォークにはフォークオイルが入っています(50cc時代のホンダモンキーのようにオイルの代わりにグリスを用いるれいもありますが)。
路面の凹凸や加減速でフロントフォークが伸縮する際に、その動きを抑えるのがダンパーであり、フォークオイルがオリフィスと呼ばれる狭い通路をフォークオイルが通過する際の抵抗が減衰力となります。
フォークのストロークに伴ってダンパー内を移動するフォークオイルには、抵抗によって熱が加わり、狭い隙間を通る際に強い力が加わり、伸縮によって泡立てられます。
エンジンオイルと同様、温度と機械的なストレスが加わることでフォークオイルも性能が劣化し、粘度が低下します。

粘度が低下すればダンパー内を移動する際の抵抗が小さくなって減衰力が低下して、縮んだフォークがすぐに伸びてしまいフワフワとコシのない乗り心地になったり、コーナーの手前でブレーキレバーをリリースすると思ったより早くフォークが伸びてタイミングが取りづらくなるため、フォークオイルも定期的な交換が必要なのです。

ちなみにリアショックにもオイルが入っていて劣化しますが、こちらは個人レベルでは分解交換ができないので、オーバーホールと交換はプロに依頼することになります。

古いフォークオイルを抜いたら、その状態もチェックする。

フロントフォークのオイル交換を行う際は、車体からフォークアッセンブリーを外します。
前提条件としてフロントタイヤを外すため、フレーム下やエンジン下部をジャッキで支えて安定させることが重要です。
フロントフォークを単体にしたら、上部のトップキャップを外して古いオイルを排出します。
正立フォークの中でも、オーソドックスなダンパーロッド式ではキャップを外した途端に縮められたフォークスプリングが伸びてキャップが飛び出すことがあるので、ウエス越しにキャップを押さえるなどの注意が必要です。
廃油受けにフォークオイルを排出する際には、オイルの濁り具合や臭いにも注意を払いましょう。
オイルの銘柄にもよりますが、劣化したフォークオイルは傷んだ野菜のような独特の臭いがするものがあるので、その臭いによってもある程度の判断ができます。
劣化によってオイル自体の粘度は低下しますが、一方で泥のようなスラッジが発生してオイルの底に沈殿している場合があるため、抜いたオイルにスラッジが混ざっていたらフォーク内部にパーツクリーナーをスプレーしたり、少量の灯油やガソリンを注入して洗浄することをおすすめします。
またフロントフォークのオイルシールが傷んでオイルが漏れている時は、フォークオイル交換と合わせて交換作業を行います。
このオイルシール交換については、別の機会に紹介します。

POINT

・銘柄によるが、劣化したフォークオイルは傷んだ野菜の匂いがする。
・フォークオイルが漏れている場合はオイルシールも交換を

新たなフォークオイルの注入量は正しく調整する。

新しいフォークオイルを注入する際は、オイルの粘度と使用量が重要となります。
フォークオイルには#5、#10、#15といった異なる粘度があり、番号が大きい方が粘度が高くなり、粘度が高いオイルの方が減衰力が高まります。
減衰力が高いということはフォークが縮みづらく伸びづらくなるということで、ハードな走りをする場合にはオイル粘度を上げることがあります。

しかしむやみに減衰力を高くすると乗り心地が悪くなるという副作用もあるため、街乗りがメインであれば純正と同じ粘度にするのがベターです。
これまで使ってきたオイルが劣化によって粘度低下しているのであれば、純正粘度の新品オイルに交換することでしっかりとした減衰力を感じられるはずです。

サンプルモデルのホンダエイプの場合、フォークオイルの粘度は#10、オイル容量は 174cc±2.5cc、油面はフォーク単体の全屈状態で上端から131mmとなります。
粘度とともにオイル容量や油面が重要なのは、フロントフォークにとってオイルの上部にある空気も重要な働きをするためです。
フロントフォーク内の空気は、フォークが縮む際に圧縮されることで空気バネのように反発力を生み、オイル容量が少なく空気室が大きいと空気バネの反発が弱く、容量が多ければ空気室が減って空気バネの反発が大きくなるため、フロントフォークを正しくセッティングするためにはフォークオイルの量が重要になるのです。
オイル量と油面のどちらを使って注入量を決めるのが適当かといえば、フォーク内部のオイルが完全に抜けていればどちらでも構いませんが、オイルの残量がいくらかある場合には油面で決めた方が正確になります。

インナーチューブにフォークスプリングを挿入する際、スプリングの両端で巻き具合が異なる場合、エイプの場合は隙間が詰まった方を下にして組み立てます。
新品フォークオイルに交換すると、フロントフォークを押して伸びる際のスピードが抑えられてサスペンションの動きが落ち着き、強くブレーキを掛けた際も踏ん張りが利くためスポーティな走りも楽しめるようになります。

POINT

・フォークオイルは粘度の番号が大きい方が減衰力が高い。
・むやみに減衰力を高めると乗り心地は悪化する。

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フロントフォークを縮めた状態で金尺を挿入して、インナーチューブ端からオイルまでの距離を測定して油面を確認する。
エイプの油面は131mmなので、150mmの金尺を挿入した際にオイルの付着痕が19mmの位置にあれば正しい。
それ以下なら油面が低いのでオイルを追加して、高いようなら抜いて減らす。


フォークスプリングは上下で巻き密度が異なるデュアルレートタイプ。
密度が詰まった側が上に来るのか下になるかは機種によって異なる。
エイプの場合は密側が下となる。
デュアルレートスプリングの場合、密側の方がバネレートが低いので、そちらが先に縮んでいく。


スプリングの張力に負けないように押しつけながらキャップを締める。
キャップのOリングは、フォークが縮んだ際にインナーチューブ内の空気が抜けないようにするためのもの。
劣化によってOリングが切れると、フォーク内の気密が保てず空気バネが働かなくなってしまうので交換すること。


フロントフォークを車体にセットしたら、タイヤをセットする前にアクスルシャフトとフロントフェンダーを取り付けて、左右のフォークがきちんと平行になっていることを確認する。

フォークオイルの性能は知らぬ間に劣化する粘度と量に注意して定期的に交換しよう。

フロントフォークがストロークする際にインナーチューブ内を移動するフォークオイル。

経年劣化による性能低下は定期交換でリフレッシュできる。

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