
エンジン各部の潤滑や放熱に大活躍しているエンジンオイルは、走行距離や使用期間によって性能が低下するため、定期的な交換が必要。
エンジン温度管理ができない空冷エンジンモデルのオイルにとっては、猛暑の夏は過酷です。
ここでは250ccクラスで人気のロングセラー、ヤマハドラッグスター250を題材にオイル交換の手順を紹介します。
メーカー推奨の交換時期は3000kmまたは1年。愛車を好調に保つためのオイル交換、やってますか?
目次
交換距離に達していなくても、油量チェックは忘れずに
▲マフラーの影に隠れて見づらい場所にあるオイル点検窓。車体を垂直に立てた状態で油面を確認するには、誰かにバイクを支えてもらうと良い。
エンジンオイルが劣化すると、潤滑性能の低下によりエンジン内部のパーツの摩耗を引き起こす原因となります。
その前段階として、シリンダーとピストン間の密閉を保つ能力が落ちてエンジンのパンチ感が低下したように感じることもあります。
どんな高性能オイルであれ、走行距離や運転時間が増えることで性能が低下していくので、定期的な交換は必須です。
ヤマハドラッグスター250は見た目もサウンドも魅力的な空冷Vツインエンジンを搭載した人気モデルですが、水冷エンジンより周囲の温度に影響を受けやすい特性があります。
真夏の炎天下に渋滞に巻き込まれたりすると、空冷エンジンの温度は見る間に上昇し、それに比例するようにエンジンオイルの温度も上がります。
油温が上昇するとオイルの粘度が低下するため、金属部品の保護性能や気密性が低下し、一部は燃焼室に混入したりブローバイガスとなって消費排出されてしまい、その結果としてエンジンオイルの量が減少することがあります。
そこで、走行距離や運転時間では交換時期に達していなくても、時々はエンジンオイルの量をチェックしておきましょう。
ドラッグスター250のオイル量点検は、エンジン右側のオイルフィルターカバー下側、エキゾーストパイプの裏の点検窓で行います。
エンジンが暖まった状態で車体を真っ直ぐに立てて、点検窓に記されたロアレベルとフルレベルの間に油面があるかどうかを確認します。
ロアレベル以下の時は補給が必要ですが、オイル漏れなどではなく自然に油量が低下したのであれば、古いオイルと新しいオイルを混ぜる補給ではなく、全量を交換した方がベターです。
その判断をするためにも、交換時期より前の油量チェックは重要なのです。
・どんな高性能オイルでも、走行距離や運転時間が増えることで性能が低下する
・空冷エンジンは真夏の熱でもエンジンオイル量が減ったりダメージが及ぶことがある
・オイル量は走行距離や交換時期にとらわれず、定期的にチェックしよう
取り付け位置が独特で工具が入りづらいドレンボルト
ケースカバーやシフトチェンジシャフトなど、ドレンボルト周辺は混雑しているため使える工具が制限される。
ちょうど良いレンチがなければ、無理せず工具を準備するところからはじめよう。
多くの機種のオイルドレンボルトはエンジン下部にありますが、ドラッグスター250のドレンボルトはエンジン左側のシフトチェンジシャフトの前方にあります。
ここはチェンジリンクやフレームの影に隠れており、スパナやモンキーはもとよりソケット工具ですら回すことはできません。
使える工具は17mmのメガネレンチだけですが、このメガネレンチもメガネ部分とグリップに段差がついたオフセットタイプだとフレームに干渉する可能性があります。
そこで、ストレートタイプかメガネ部の傾き角が小さいメガネレンチ、またはコンビネーションレンチを用意します。
最低地上高が低いドラッグスター250でメガネレンチを使うのは難しいですが、ドレンボルトの頭をなめないように、レンチを根本までしっかり掛けて緩めます。
きつく締まった部分を緩めたら残りは指で回すことができますが、この時にはボルトがいつ抜けてもオイルをキャッチできるよう、エンジンの下に廃油受けをスタンバイさせておきます。
最低地上高が低いので、背の低い廃油受け皿を用意してエンジンの下に滑り込ませよう。
古いオイルをなるべく多く排出するため、サイドスタンドを上げてバイクを左側に傾けたり(転倒に注意)、フロントブレーキを掛けて前後に揺するのも効果的。
ドレンボルトのガスケットは、ボルトを締めつけることで本体が潰れてオイル漏れを防ぐクラッシュタイプを使っているので、ボルトを締める際には新品に交換します。
左が新品のガスケット、右はドレンボルトで潰れた中古ガスケット。
クラッシュタイプのガスケットは潰れることで気密性を発揮するので、ドレンボルトを外したら毎回交換しましょう。
・ドレンボルト周辺に工具が入りにくい場合は適切な工具を用意するところから始める
・レンチはボルトの根本までしっかり掛けて緩める
・ガスケットは必ず新しものを用意する
新しいオイルは油量を確認しながら注入しよう
推奨オイルはヤマルーブプレミアムシンセティック、スポーツ、スタンダードプラス。いずれも粘度は10W-40。
ドラッグスター250のエンジンオイル量は、オイル交換のみの場合は1.4リットル、オイルフィルターを外した際は1.6リットルです。
これはメーカーが指定する容量ですが、エンジン内部には抜けきらずに残るオイルもあるため、作業条件によっては規定量を入れると多すぎる場合もあります。
そのため一気に規定量を入れず、0.1~0.2リットル程度少ない量を入れてエンジンを始動して、アイドリングで循環させた後に点検窓でオイルレベルを確認します。
この際に油面がロアレベルに達していなければ追加しますが、ロアレベル以上にあればハイレベルまで注ぎ足す必要はありません。
逆にエンジンオイルが過剰だと、クランクケースブリーザーパイプからのオイルミストが増えたり、クランクケースの内圧が高まることでスムーズなエンジン回転が損なわれたりと、デメリットが増えることはあってもメリットはないのです。
エンジンオイルを交換することで、滑らかな回転フィーリングと静粛なサウンド、スムーズなシフトフィーリングが得られるはずです。
しかしやがてそのオイルも性能が低下しますから、エンジンのコンディションを維持するには定期的にオイル交換は欠かせないのです。
ヤマルーブ エンジンオイルはこちら
・エンジン内部には抜けきらずに残るオイルがあるので、いきなり規定量を入れない
・規定より少し少ない量を入れてアイドリングで循環させた後に点検窓でオイルレベルを確認
・油面がロアレベルに達していなければ追加、ロアレベル以上にあればハイレベルまで注ぎ足す必要はない
・オイルの入れすぎはエンジンに悪影響
走行距離ごとの交換はもちろん、使用期間の長さもオイル交換のサイン。
熱や摩擦で性能低下するエンジンオイルの交換はエンジン本体の寿命を左右する重要なメンテ項目です。
交換後の走行距離が少なくても、熱が入って空気に触れることで徐々に劣化するため、定期的な交換を心がけよう。
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