
バイク用小物部品の自作や工作好きのサンデーメカニックへ贈る「FRPCF工作実践」プログラム。ここでは「石膏型」を使った「ドライカーボンっぽい!?」部品作りに挑戦=その2になります。楽しみ方はアイデア次第!!
以前に作ったエアダクト石膏型を転用
オス型、メス型を使ってパーツ製作にチャレンジしてみた。ここでは、モデルクリエイトマキシにて過去に製作した小型エアダクト用の石膏型を使って、ドライカーボン(っぽい)作業を実践してみることにした。石膏型の作り方は別の機会にリポートしよう。DIY部品製作に関するアイデアになるはずだ。FRP&CF材料を販売する通販サイトで購入した、カーボン繊維に硬化樹脂を染み込ませて販売されているプリプレグと呼ばれるシートを利用した。使わないまま放置すると硬化してしまい使えないので、すべての段取りに見通しがついてから商品購入した。僅か4プライの張り込みでも、製品型に凸凹形状があるため、部品の剛性や強度は想像以上に高いものとなる。石膏型の作り方をマスターすれば、本格的なドライカーボン(っぽい部品作り)を楽しめそうだ。
プリプレグCFシートを4プライ積層
石膏型に張り込むプリプレグ繊維の「型紙」を作ってメス型に合わせる。切り落とし部分がエッジになるので、極端に張り込みが難しいことも無かった。今回は4プライで仕上げる。張り込み製品の型紙をプリプレグ繊維の台紙に転写。高価な材料なので、できる限り無駄なく上手に使いたいものだ。しかしながら、プリプレグ繊維の賞味期限は短く、硬化速度は想像以上に早い。完全乾燥した石膏型の表面は想像以上にツルツルでツメを立てても簡単には崩れない。離型用のシリコンスプレー(シリコン系タイヤワックスも利用可能)を吹き付ける。石膏を練る段階でサイザル(自然由来の麻繊維)を混ぜると型強度が高くなる。
カーボン織の流れを考えてレイアウト
型紙に合わせてハサミで切り出したプリプレグ素材を石膏型に押し付けていく。このエアダクトは、フェアリング用フロントスクリーンに空気を導き、曇り止めを行う部品だ。エンジン部品にフレッシュエアーを導きたいときにもこのようなダクトが使われる。何よりもスペシャル感が高い部品だ。カーボン繊維にキズを付けないようにヘラなどを使ってエッジに押し付け、プリプレグ素材を石膏型のエッジ形状に追従させる。この要領で4枚の素材シートを順次セットしていく。1枚押し付けてはオス型を押し込み、また1枚セットしては押し込みを繰り返しながら、カーボン素材のプリプレグシートを慣らしていく。オス型の面部分にはアルミテープを貼りつけてからシリコンスプレーを吹き付けて磨き、型抜け=脱型しやすくしている。オス型、メス型の間にカーボン素材のプリプレグシートを挟んだら、大型の事務用クリップで石膏型を挟んで押し込み固定する。熱乾燥させたときにジワーッと樹脂が染み出てきても、クリップは押し続けるはず!?と考えた。
小型高温乾燥機で加熱乾燥硬化
卓上高温乾燥器のカーベック製CVジュニアの中に石膏型を入れて強制乾燥の開始。今回使ったプリプレグ素材は130℃仕様の商品だ。強制乾燥温度の設定は、念のために140℃にしてみた。乾燥室内の付属簡易温度計とにらめっこしながら140℃に達してからタイマーを作動させ、約1時間ほどの焼き付け強制乾燥の開始。1時間経過してからしばらく放置して、石膏型がある程度冷えてから乾燥器から取り出した。果たして、どのような状況になっているのか?大型事務用クリップを開放してみると、乾燥後でも締め付けテンションが掛かっていることがわかった。少しだけ安心。張り込んだプリプレグ素材はオス型の方に密着していた。
仕上がり硬度は抜群、強度OK!!
カーボン繊維に石膏型が押し付けられ、含浸されていた樹脂が何となく染み出た様子がわかるだろうか?明らかに作業前とはカーボンシート表面の表情が変わっている。壊さないように離型しよう。抜き取ったカーボン製エアダクトは想像以上に剛性があり、指先で曲げようと思ってもビクともしない強さを持っていた。僅か4プライでも、形状次第で十分な強度を得られるようだ。僅か4プライのプリプレグ素材を型に押し付けて強制乾燥させると、果たして厚さはどれほどになるのだろうか?プリプレグの厚さが0.3mmなので4プライで1.2mm。強度は十分であり、利用箇所によっては3プラスでも必要十分だろう。
- ポイント1・石膏型の製作時はしっかり自然乾燥させよう
- ポイント2・プリブレグCFシートならではの加熱乾燥で抜群の強度
- ポイント3・小型高温乾燥器の汎用性に注目しよう!!
ドライカーボンと呼ばれる製品は、ゲル状に一次硬化したエポキシ樹脂をカーボン繊維に含浸させた「プリプレグ材」を素材としている。プリプレグ材を成形型に張り込み、専用の窯の中で「真空引き」を行ないながら密度を高め、高温にて完全硬化させる手法だ。乾燥硬化の際には、窯の中に不活性窒素ガスを充填させ、加圧しながら乾燥温度を高めている。このような工程を経ることで、高密度かつ高強度な製品を成形することができる。繊維のカット部分にほつれが出にくく、カーボン目を綺麗に仕上げられることも大きな特徴となっている。また、成形時に汚れにくいのも、大きなメリットである。一方で、高額な専用生産設備が必要になり、副資材を含めてコスト高なのがデメリット。ドライカーボン製品が高額なのは、そんな製造工程のズバリ反映なのだ。
一方、ウエットカーボンの製造過程はFRP成形とほぼ同様と考えても良い。手積み成形が可能で、ポリエステルもしくはエポキシ樹脂と硬化剤を使用。ウエット張りの場合は、カーボン繊維の引き裂き強度がFRP(ガラス繊維)に対して高いので、その分だけ強度は高くなる。しかし、カーボン繊維の比重はガラス繊維よりも重い為、仮に、同一条件で部品作りを行なった場合、FRP素材よりもカーボン素材の方が、重量的には重い部品作りとなってしまうことを忘れてはいけない。
ドライ=焼くというイメージがあるため、焼くことで「強度が増す!?」と間違った解釈をしているサンデーメカニックも多い。これは大きな間違いである。硬化促進のために焼くのであって、強度アップのために焼いているわけではない。加熱温度の管理は使用するプリプレグ材によって異なり、70℃用、130℃用、180℃用などなどがあるが、今回の作業では130℃用を利用してみた。「急速硬化タイプ」もあり、約5分程度で硬化できる商品もある。ちなみに何度で焼いても基本強度に差が出ないのも、カーボン繊維の特徴である。
この「強度」は、真空状況下における樹脂密度の高さがカギを握っている。型に圧力を掛けて密着させ、窒素ガスによる加圧で材料を圧縮。この圧縮具合で強度を高めているのだ。要するに、強度が高いから薄く成形でき、その結果「軽い商品作り」が可能になる。前述したように、カーボン繊維だからといって、すべてが軽くなるわけではない。
今回は、簡易的にシャコ万を利用して石膏型を圧縮固定し、強度アップを狙ってみた。ちなみに石膏型は比較的手軽に作ることができ、完全乾燥によって耐熱型を作ることもできる。しっかり作れば金属鋳造にも使うことができるほどだ。型作りでは、水分が完全に抜けるまで乾燥させるのがセオリーでありカギを握っている。一気に加熱乾燥させると石膏が割れてしまうので、数日、数時間、数ステップに分けて温度を徐々に高めながらゆっくり乾燥させ、使用温度以上に加熱乾燥させる製作工程を心掛けよう。冷ます際にも、ゆっくり冷まさないと割れてしまうので要注意。また、石膏型を作るときにはオス型、メス型を作るが、製品の板厚分は必ず寸法を差し引くようにしよう。
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