
エンジンオイル交換時に不可欠なオイルドレンパン。汎用品はさまざまな機種に対応できるよう上面が大きく開いていますが、持ち運ぶ際にオイルがこぼれやすいのが弱点です。そんな場面で重宝するのが、エンジンオイル2リットル未満の原付、小型モデルに特化したペットボトルを流用したオリジナルドレンパンです。
ドレンボルトの位置が低い小型車やスクーター向けの薄型ドレンパンは便利だが要注意

ここで使用しているのはウィンドウォッシャー液の2リットル容器。飲料系のペットボトルに比べて背が低い分底面の一辺が長くなり低さ優先とはならないが、センタースタンドで立てたホンダスーパーカブのオイル交換には充分な余裕がある。切開した部分は切り取らず、オイルを受けるじょうごのように機能させている。

ホンダ横型エンジンのオイル量は0.6リットル程度なので、2リットルボトルで充分足りる。抜いたオイルを廃油処理ボックスに移す作業をスムーズに行うには、開口部をキャップの近くに空けておくと良い。ペットボトルは要因変形するので、地面とエンジンの間にボトルが挟まるほど低い機種では、ドレンボルト位置までボトルを押し込んでからオイルを抜くこともできる。
最もベーシックなメンテナンス項目であるエンジンオイル交換。お気に入りのブランドや粘度にこだわったり走行距離や季節ごとに几帳面に交換するなど、オイル交換はライダーごとの個性が露わになる作業でもあります。
エンジンからオイルを抜く際に、専用のオイルドレンパンを使うか可燃物としてそのまま捨てられる処理ボックスを使うかは人それぞれでしょうが、ドレンパンには抜いたオイルの状態を確認できるメリットがあります。
明確な異音が出ていなくても、ドレンパンに金属粉が混ざっていればエンジンのどこかで摩耗が進行しているのは確実で、水冷エンジンから抜けたオイルが乳化していれば潤滑系統のどこかで冷却水が混入している証拠です。
市販のオイルドレンパンにはバケツのようなものや、平らなバットのようなものなどさまざまな形状があります。地面からオイルパンまでの最低地上高に余裕があれば、バケツのように深さのあるドレンパンが使えますが、車高の低いビジネスモデルやスクーターはドレンパンも薄いタイプを選ばなくてはなりません。
ただしオイルを溜める部分が浅くなると、一般的には容量が少なくなります。浅さと容量を両立しようとすると面積が大きくなってしまうからです。浅いオイルパンいっぱいに入ったオイルを動かすとどうなるか? 気を遣ってエンジン下から静々と引っ張り出そうとしても、オイルが容易に波打ちオイルパンからこぼれてしまいます。したがって深さの少ないドレンパンの容量は2リットルが上限となっているものが多いようです。
原付や単気筒250ccクラスならエンジンオイル容量はたいてい2リットル以下なので、フラットなタイプのドレンパンで抜いたオイルを受けることができます。しかし、底面積がコピー用紙ならA3サイズに近いほどになるドレンパンに溜まったオイルはなかなかの難敵です。雑に持ち運べばタップンタップンと波が立ち、床に置いたドレンパンを不用意に蹴飛ばせば大惨事です。
大容量タイプには、縁部分に飛び出しを防止する「カエシ」が付いたドレンパンもあるのですが2~4リットルクラスの小容量タイプにはそれがなく、じょうごを付けることで流路を絞って飛び出しを防止するドレンパンは地面から高くなるため最低地上高が低いエンジンには不向きです。そうなると、抜いたオイルの状態が確認しづらいことには目をつぶり、直接廃油処理ボックスに注いでしまうのが安全かも知れません。
ただし、廃油処理ボックスはウエスや繊維などの吸収剤にオイルを吸わせてしまうため、抜いたオイルの異状を把握しづらいという弱点があります。また吸収剤の中に落としたドレンボルトを拾う際にガスケットが外れ、そのままボルトのみを締めてオイルが滲んでしまったというビギナーもいます。これはオイルドレンボルトには必ずガスケットがセットされるという常識を知っていれば防げるミスですが、廃棄までにワンクッションあるドレンパンであれば底に張り付くことで発見できるはずです。
- ポイント1・最低地上高が低いバイクのエンジンオイル交換用の浅いオイルドレンパンはオイルがこぼれやすいリスクがある
- ポイント2・廃油処理ボックスに直接オイルを排出するとエンジン内部の異状に気づかないこともある
オイル容量1.5リットルぐらいまでなら2リットルペットボトルが使える

ドレンボルトガスケットが外したドレンボルトに付いてくるかクランクケースに張り付いて残るかはその時の運次第だが、エンジン側に残った場合でも剥がして座面の確認が必要。新品ガスケットを使ってボルトを締めてもじわじわとオイルが滲む原因がネジ部周辺のクラックだった、という場合もある。

ドレンボルトガスケットにはプレーンタイプと潰れて気密性を確保するクラッシュタイプがある。プレーンタイプのガスケットを使ってを適正トルクで締め付けてもボルトにオイル滲みがある時は、両面がゴムコーティングされたデイトナ製ガスケットがお勧め。ガスケットとの接触面が多少荒れていても、ゴムが追従して漏れを防いでくれる。
最低地上高が低い機種に対応できる分、浅くこぼれやすいオイルドレンパンに代わるものとして有効なのが空のペットボトルです。主にお茶やソフトドリンク用として使われている角型の2リットルボトルの一辺は80~100mm程度であることが多く、薄型ドレンパンより若干厚い程度です。仮にエンジン底部に引っかかってもドレンパンより素材が柔らかいので若干潰しながら押し込むことも可能です。
オイル排出口の位置に応じて、好みの場所に最小限のサイズで穴を空けられるのもペットボトル流用の利点です。傾けたり揺すったりすると中のオイルが簡単にこぼれてしまうのがドレンパンの不安な点ですが、カッターナイフなどで切り開く面積を小さくすればオイルの飛散を軽減できます。天面が全開となっているドレンパンに比べて、小さな穴しか空けなければ視覚的にも安心できます。90°転がればこぼれるので注意は必要ですが。
その上で、透明のペットボトルには抜いたオイルを上下左右から観察できる利点があります。黒いドレンパンに排出したオイルの底にキラキラ光る金属粉を見つけた時、ウエスや指で拭って確認しますが、ペットボトルなら底が透明なので裏から覗いてチェックできます。
溜まったオイルを廃油処理ボックスに吸わせることを考慮して、ペットボトルに空ける穴をキャップに近い位置にしておけば、キャップを外すためにボトルを傾けた際にこぼれづらくなる=オイル容量の多い機種にも対応できるようになります。また廃棄物の再利用としては、飲料用ペットボトル以外にも洗車用のカーシャンプーやロングライフクーラントの容器も加工しやすくこぼれにくいドレンパンを作るのに適しています。
原付から大型車までどんなバイクでもオイル交換は必要で、できるだけドレンパンをひっくり返したり周囲を汚すことなく作業を行いたいものです。そんな時に、最低地上高やドレンボルトの位置に応じてワンオフ感覚で簡単に加工できるペットボトル改ドレンパンがあれば、快適なオイル交換ができることでしょう。
- ポイント1・2リットルのペットボトルの短辺は80~100mm程度で浅いドレンパンと同程度の高さにおさまり最低地上高の低いエンジンの下に入れやすい
- ポイント2・開口部面積を最小限にすることで排出したオイルの飛散を抑えてオイル交換時のリスクを軽減できる
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飲料系のペットボトルは確実にリサイクルして下さい。
一人一人の意識が大事。