絶版車のハンドルスイッチには、メーカーや機種ごとにさまざまな個性があります。バイクが新しくなるほど機能が充実するのは確かですが、ノスタルジックな雰囲気を感じさせるレトロな見た目も捨てがたい。ここでは廉価仕様のハンドルスイッチがついた愛車を、上級モデルのパーツ移植でアップグレードできる可能性を探ってみましょう。

プッシュキャンセルやパッシング、ハザード機能はやっぱり便利

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

ウインカーがプッシュキャンセルになる以前、1980年代前半のカワサキ車に多く見られたハンドルスイッチ。左スイッチではホーンとパッシングボタンが一体化されており、→スイッチではスタータースイッチとエンジンストップスイッチ(キルスイッチ)が同じボタンを共用する。ディマースイッチの右にいかにも後から塞いだように見えるキャップが取り付けられている。

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こちらが本来の姿と言うべき、部品取りで購入したハザードスイッチ付き左スイッチ。ハザード専用回路がありカプラーの形状も逆(純正カプラーがメスなのに対してこちらのスイッチはオスカプラー)で、クラッチレバースイッチも異なるため、ハザードスイッチ部分だけを純正スイッチに移植する。

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ハザードスイッチの有無にかかわらずハウジング内部形状はほぼ同じなので、スイッチを移植するのは比較的容易に見える。純正ハザードスイッチ付きの方はディマースイッチの基板に付く配線も多くなっている。

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

部品として移植するハザードスイッチは単純なロッカースイッチで、オレンジ/緑がリレーに、緑と灰が左右のウインカーにつながる。スイッチが入ると左右同時に点滅電流が流れることでハザードランプとして機能する。

ハンドルスイッチは単なる操作装置というだけでなく、バイクの個性を引き立てる重要なパーツのひとつです。操作性が良いことが重要であることはもちろんですが、機種ごとの特徴となっていることも少なくありません。

例えば現行モデルのウインカースイッチはプッシュキャンセル式がポピュラーですが、1980年代以前はスライド式だったのはもちろん、ヘッドライトの上下を切り替えるディマースイッチと一体式のスイッチがあったり、ホーンボタンが上でウインカースイッチが下という機種もありました。ここで紹介するカワサキの1980年代モデルはホーンとパッシングが一体で、ボタンの押し方によって機能を使い分けています。

それらが分かりやすく使いやすかったか否かはその後の歴史が証明していますが、少なくとも個性を象徴するパーツであったことは確かです。そして現在の絶版車や旧車の世界では機能性や性能向上だけではなく、使い勝手が多少劣っても「ああ、当時はこういうパーツだったよね」と郷愁に浸ることもまた絶版車の楽しみ方であると広く認知されている中、当時のオリジナル仕様が尊重される傾向にあります。

とはいえ、携帯電話をスマホからガラケーに戻すのが無理なのと同様に、一度便利な機能に慣れるとそれがないと不便だと感じるのも事実です。やみくもに使うべきではありませんが、パッシングやハザードランプはあれば便利な機能であることは確かです。それらを追加するために高年式モデルの純正部品を流用するモディファイも一般的で、汎用部品としても購入することができます。

一方、機能は充実させたいがレトロな見た目も捨てがたいなら、上級モデル用の部品を流用してハンドルスイッチをアップグレードする方法もあります。自車のスイッチが廉価仕様で同系列に上級グレードが存在するという限定条件がありますが、ハンドルスイッチの一部がキャップで蓋をされているような場合は、機能追加の可能性があります。

Z-GPやGPZ-F時代に一般的だったカワサキ車の左ハンドルスイッチには、ディマースイッチの右側にハザードランプスイッチが組み込まれている機種がある一方、その部分に蓋がされているモデルもあります。この場合、純正ハンドルスイッチのデザインを損なうことなく、ハザード機能を追加することができます。

POINT

  • ポイント1・使い勝手の善し悪しとは別に絶版車や旧車では当時の雰囲気を重視した純正ハンドルスイッチが重用される
  • ポイント2・同年代の純正部品を流用することで新たな機能を追加できる場合がある

同一系列モデルのハンドルスイッチからハザード機能を移植

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

純正スイッチと流用スイッチの配線色と機能をテスターで確認しておく。純正ハザードはウインカーリレーと別に専用リレーがあり、車体側にもそのための配線がある。ハザードなしの純正ハーネスにはその配線がない。

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

ハンドルやメーター周辺に汎用スイッチを設置しても良いのだが、このスイッチを使えば純正風仕上げでハザードランプを機能させられる。純正色を生かすため配線は長めに切断した。

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

ウインカーリレーを1~100W対応のワイドタイプに交換することで、純正ウインカーの回路にハザードスイッチを割り込ませることができる。配線の端部だけでなく中間でも被覆が剥けるワイヤーストリッパーがあれば、既存配線を切断せず結線できるので便利だ。

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

同一メーカーで同年代の機種からの流用なので配線色も同一。ハザードスイッチ配線をはんだづけした後に熱収縮チューブで絶縁するため、ウインカー配線はいったんウインカースイッチから外しておく。

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

熱収縮チューブで絶縁したら、元のウインカースイッチ端子にはんだづけする。スイッチハウジングに固定する前に、ウインカーとハザードがそれぞれ正しく機能することを確認しておく。

同一メーカー流用で違和感のない仕上がり。ハンドルスイッチ改造で便利機能を追加

スイッチから外側の純正配線に手を加えることなくハザード機能を追加できた。キャップで塞いであった部分は元々ハザードスイッチが付くべき場所だったので違和感はまったくない。

ハンドルスイッチをアップグレードする際に、スイッチを丸ごと流用できれば最も容易です。ただしスイッチの見た目が似ていても、装着される機種が異なると配線仕様も異なる場合があります。

ここで紹介する機種でも、元々車両に装着されているハザードスイッチなしのハーネス先端のカプラーはメス端子なのに対して、ハザードスイッチ付きのカプラーはオス端子で、そのままでは車体側のハーネスに接続できません。さらにカプラーのオスメス形状が異なるだけでなく、機種が異なればスイッチハーネスの端子の配列も異なる可能性もあります。

2個のスイッチを並べて配線色を確認して、流用スイッチのカプラーを純正と同じメス端子に変更すれば丸ごと交換も可能ですが、スイッチハウジング形状が同じで必要なのはハザードスイッチだけなので、ここだけを取り外して純正スイッチに移植します。

同系列のスイッチハウジングだけあって、小加工でハザードスイッチを移植することができましたが、スイッチ配線の追加に工夫が必要です。純正でハザードスイッチが装着される機種の多くは、ハザード専用のリレーを搭載しています。流用元となった機種にもウインカーリレーとハザードリレーがあり、それぞれのリレーにつながる配線があります。

つまりスイッチ配線端部のカプラーには、車体側の2つのリレーにつながるオス端子があります。その一方で、これからハザードスイッチを追加しようとする機種にはそもそもハザードリレーはないので、ハンドルスイッチにもハザード用の配線はありません。

新たにリレーを設置して専用の配線を引いても良いのですが、既存のウインカーリレーをLED対応のワイドタイプに変更することで、ハンドルスイッチ内の配線変更だけで対応できる場合もあります。純正ウインカーリレーは前後2灯+インジケーターが消費する電力に合わせて仕様が決められているため、前後左右4灯が点滅するハザードランプには対応できません。

しかし最近の高機能ウインカーリレーには、消費電力が極端に少ないLEDからウインカー球に多い21W(または23W)×4灯同時使用の80Wクラスまで使える1~100W対応の超ワイドタイプがあり、このリレーを使えば通常のウインカーでもハザードランプでも1個でカバーできます。

ワイドタイプのリレーを使用する場合、リレーからウインカースイッチにつながる配線にハザードスイッチを新たに割り込ませます。ウインカースイッチを操作した場合は点滅電流は左右いずれかのウインカーだけに流れますが、ハザードスイッチを操作するとリレーからの電流は左右両方のウインカーに流れるためハザードランプとして機能します。

ウインカーとハザードを同じリレーで作動させるためハザードが優先的に機能しますが、2個のリレーを設置する場合でもウインカー使用中にハザードスイッチを入れればハザード点滅が始まるので、結果としては同じです。

この改造は、マイナーチェンジによって途中からハザードスイッチが追加された他の機種でも応用が可能です。純正スイッチの雰囲気を変えることなく新たな機能を追加する手法として覚えておくと良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・同一メーカーの多機種からハンドルスイッチを流用する場合、回路や配線の変更が必要になることがある
  • ポイント2・純正ハザードスイッチには専用リレーが設置されることが多いが、高機能リレーを使うことでひとつでウインカー/ハザード機能を併用できる

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