自作工作&DIY好きのサンメカなら、過去に1度はFRPパーツ作りをしてみたい!!なんて考えたことがあるのではないだろうか?ここでは、強度があって軽く作ることができる「ドライカーボン(っぽい)」DIY部品作りに挑戦してみよう。

オーブンと含侵済みカーボンシートを利用

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

カーベック製の高温乾燥器CVジュニアを使ってドライカーボンもどきに挑戦。本当のドライカーボンは、型に真空引き機能があり、余分な樹脂を吸い出しながら乾燥させるシステムらしい。家庭用オーブントースターを2階建てにしたようなカーベック製CVジュニア。小物部品なら焼付けペイントの乾燥器として最適だ。PSE規格を取得し安全性も考慮した商品である。薄いカーボンクロスにマトリックス樹脂(エポキシ系)があらかじめ含浸されている、三菱レイヨン製のパイロフィル・プリプレグ。冷温保存でも賞味期限が短いため、買い置きできる素材ではないのが残念だ。今回は1mだけ購入した。

アルミ板を曲げて形状型を創造

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

A5052材のアルミ製素材板を曲げることで、簡易的かつ巣簡単に製作した押し型。L字アングルのあいだにカーボンプリプレグを挟んで、高温乾燥させてみようというのが、この作業の狙いである。果たして、ドライカーボンっぽい!?仕上がりになるのだろうか?

材料は無駄なくハサミでカット

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

アルミ板型の大きさに合わせて型紙を切り、ドライブチェーンプロテクターをイメージしながらペンで書き込む。イメージ画をハサミで切り抜いたら、プリプレグの台紙に形状を転写。高価な材料なので、無駄にならないようにツメツメにカットした。一番外側の露出側は、カーボンの織り目が目立つため、流れ=織り目の向きに気を配ってセットした。厚みを稼ぐためにFRPガラス繊維のマットを挟んだ。このマットも無駄な樹脂を吸い込んでくれるはず。

温めながらアルミ板の型へ材料セット

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

ハンディーヒーターでCF(カーボンファイバー)繊維を軽く温めるだけで柔らかさは増すが、それと同時にベトベト感がより強くなるため、温め過ぎには要注意である。軽く炙る程度で十分だった。通販で購入した平織りプリプレグは1m四方で1万数千円。大変に薄く1プライで0.23mm程度(型紙から4ピース切り抜いた)しかないため、厚さを得るためにFRPマットを挟んでみた。保護フィルムをピンセットで摘んで剥がし、台紙からも剥がしてアルミ板型に張り込む。

オーブントースターで高温乾燥しよう

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦



オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

オーブントースターを使ってドライカーボンっぽいパーツ作りに挑戦

ヒーターで炙ってベトベト感を増すことで、FRPマットは接着するように張り込むことができたが、含浸樹脂の滲み出る量は大変少ない。このガラスマットを境に剥離してしまわなければ良いが。プリプレグ2枚+FRPマット1枚+プリプレグ2枚の合計5枚を張り込み、アルミの押し型で強制的に挟み込む。シャコ万ではなく大型クリップで挟んでもテンションが強いものであれば大丈夫だと思う。アルミ型板の「折り曲げ方」を凝れば凝っただけ、仕上がり時の剛性は高まるはずだ。

POINT

  • ポイント1・樹脂含侵済みカーボンシートでアイデア実現 
  • ポイント2・アルミ板材を型にして高温乾燥してみよう
  • ポイント3・成形作業は完全換装後に実践しよう

カーベックが取り扱う小型高温乾燥器「CVジュニア」は、ペイント関連のインフラの充実を目的に、カーベックが開発販売を手掛ける人気商品。バイクいじりが大好きなサンデーメカニックのみならず、実は、手芸や陶芸などを趣味にしている女性にも、人気の商品らしい。家電のオーブンレンジと似た雰囲気だが、石英ガラスの熱源ではなく、金属パイプを熱源としているのが特徴で、一般的な家電オーブンを「二階建て」にしたかのような商品サイズも人気の理由となっている。

このCVジュニアは、焼付けペイント時の乾燥器として、特に、ブレーキキャリパーやマスターシリンダーをガンコートでペイントする際には、使い勝手が良く大変重宝している。ちなみに4ストミニ系エンジンならば、シリンダーヘッドやカバー類はもちろん、クランクケースまで入るのでCVジュニアで焼き付け乾燥させている。

そんなCVジュニアを使って「ドライカーボンのようなことができないものか?」とチャレンジしてみたのがこのリポートだ。本物のドライカーボンがどのような工程で製造されているのか、その特徴をかいつまむと、ドライカーボン製部品が薄く硬いのは、型にカーボンを張り込み、バキュームポンプで余分な樹脂を吸い取り加熱強制乾燥させているから。型にはオス型とメス型があるが、バキューム時に製品の裏にラップのようなシートを張り、真空状態を作って余分な樹脂を吸い取るといったケースもあるそうだ。

いずれにしても「余分な樹脂を使わない」のがキーポイントである。この樹脂量が製品重量に大きく影響するのはもちろん、製品強度にも大きな影響を与えてしまうらしい。ウエット製法でもドライ製法でも、樹脂を固めて成形することに変わりは無いが、余分な樹脂をしっかり吸い取り、軽く薄く仕上げられているのがドライカーボン最大の特徴である。そんなドライカーボン成型を、さらに軽く、薄く、最小限の樹脂量で行う技術が「プリプレグ繊維」を利用した製法。プリプレグとは、カーボン繊維にあらかじめ硬化樹脂を含浸した商品だ。樹脂が含浸されたカーボン繊維を型に強く挟み強制乾燥させることで、含浸されていた樹脂が溶け出て全体に馴染み、その後に硬化するといった工程で硬化成型が進む。余分な樹脂を使わずに、超高性能な商品作りが可能になることから、大型旅客機のボディやレーシングマシン、競技用自転車のフレームなどにも、このプリプレグ繊維が採用されている例が多いようだ。

ここでは、アルミ板の型でドライブチェーンプロテクターのようなものをイメージしてみたが、その出来栄えは想像していた以上に良かった。仮に、8~10プライくらいで型に押し付けて強制乾燥させれば、かなり剛性感の高い部品として仕上がるはずである。残念ながらプリプレグ繊維は日持ちしない素材なので(含浸樹脂が低温でも自然硬化してしまう)、実践する際には、すべての段取りを徹底してから「素材を準備」するように心掛けるのが良いだろう。

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