スクーターやシャフトドライブを除けば、原付からメガスポーツまでほとんどのバイクが、エンジンからの駆動力をドライブチェーン(以下チェーン)で伝達しています。

チェーンにはチェーンオイルの注油が必要なのは知られていますが、それと同様に重要なチェーンの張り具合、たわみ量の確認や調整も重要です。


チェーンのたわみがサスペンションの動きにも影響する!?

年式や排気量、オンロードやオフロードなどジャンルを問わず、動力伝達手段として、最もポピュラーなドライブチェーン。

原付に多い420サイズから大型車向けの530まで、さまざまなチェーンが使われています。

 

バイクのチェーンを長持ちさせるためには定期的な洗浄と注油が欠かせませんが、もうひとつ大事なことが「適度なたわみを持たせる」ということです。

ここでいう「たわみ」とは、前後のスプロケットの中ほどで、チェーンを上下に動かしたときの移動量を指します。

 

自転車では意識する機会が少ないチェーンのたわみが、なぜバイクには必要なのか?

その大きな理由のひとつが、リアサスペンションの存在です。

バイクのチェーンはスイングアームピボットを中心に上下に動くリアタイヤ、そこに組み付けられたドリブンスプロケット(リアスプロケット)と、エンジンに組み付けられたドライブスプロケット(フロントスプロケット)をつないでいます。

もし、ピボットシャフトとドライブスプロケットの中心が同一の位置にあれば、リアサスが動いてリアタイヤの位置が上下しても、前後スプロケットの距離は不変なのでチェーンのたわみは増減しません。

外付け変速機を持たない自転車と同じですね。

しかしほとんどのバイクのドライブスプロケットは、ピボットシャフトより前に取り付けられているため、リアサスが動いてタイヤが上下した際にドリブンスプロケットとチェーンの軌道にズレが生じてしまいます。

チェーンの適正なたわみ量は、このズレを吸収するために存在しているのです。

POINT

・チェーンメンテは清掃と注油、そして「適度なたわみ」が重要

・チェーンの軌道はタイヤの上下運動でズレが生じる。

「適度なたわみ」は、このズレを吸収するためにとても重要

リアサスが縮んでも,たわみが残っていることが重要



バイクの走行距離が増えてくると、一般的にチェーンのたるみは増加します。

スイングアーム下部でチェーンを摘まんで揺すって、上下にダルダルに動くのはたわみが大きすぎるサインです。

どの程度のたわみが適正かは、モデルごとの取扱説明書に記載されており、バイクメーカーによってはメーカーサイトで情報を公開している場合もあります。

 

ではそうした情報がない場合、どの程度のたわみ量に調整するのが妥当なのでしょうか?

ボルトやビスでは「緩まないように強めに締める」という気持ちが働くことがありますね。

それと同じように「緩めよりも張り気味の方が良さそう」と思うかもしれませんが、チェーンの場合は張りすぎは禁物です。

前後スプロケット間の距離と、スイングアームピボットからドリブンスプロケット間の距離の違いによって、サスペンションの縮み具合、つまりリアタイヤの位置によってチェーンのたわみ量が変化するのがバイク用チェーンの特長です。

 

そしてライダーの体重や走行状態によってサスペンションが縮むにしたがってチェーンのたわみは減少していきます。

つまり適正なたわみ量とはサスペンションがフルボトム状態でもなお、チェーンが突っ張らずたわみが残った状態であると言うことができます。

 

もし「緩めよりも張り気味の方が良さそう」という感覚で空車時のたるみ量を減らすとサスが縮むにしたがってチェーンの張りが強くなります。

前後スプロケット間のたるみがゼロになり、それでもなおサスに縮む余地があった時にはチェーンには過大な引っ張り力が加わって、一部分が伸びる「偏伸び」の原因になったり、ドライブスプロケットに大きな力が加わることで、エンジン本体に負荷を与える原因となります。

たわみ量が過大でもチェーンがスプロケットの歯を飛び越えたり外れるリスクがあり、また加減速の際にスイングアームに接触するなどの不具合もあるので、たるみ量が多ければ安心というわけではありません。

あくまで、機種ごとに設定された標準値内にセットすることが大切です。

POINT

・チェーンの張りすぎ「偏伸び」エンジン本体への負荷の原因になるのでNG

・チェーンの張りが緩いとスプロケットの歯を飛び越えたり外れたりするのでNG

・チェーンの張りは機種ごとに設定された基準値内にセットすることがとても大切

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