
文/Webikeバイヤー:エグチ
数年前からバイクのカスタム市場において存在感を増しているリチウムバッテリー。
現在では複数ブランドがリチウムバッテリーのシリーズを展開しており、ユーザーの選択肢も増えてきている状況です。
そのような中で新製品として登場したNOCOのリチウムイオンバッテリーは一体どのような特徴をもつのでしょうか?
実物の詳細から実際にバッテリーを搭載するまで徹底レビュー!
目次
NOCOって一体どんなメーカー?
NOCOの設立はなんと1914年!1914年と言われてもどんな時代か想像が付きませんが、第一次世界大戦が開戦した年と知ればイメージがしやすいかもしれません。日本の年号で表せば大正3年です。
オハイオ州で生まれたNOCOは「NCP」と呼ばれる世界初のバッテリー腐食防止剤を開発しました。
このNCPは後に「NCP2」という腐食を2ステップで防ぐケミカルという形に進化を遂げました。
NCP2はスーパーロングセラー商品で、100年以上にわたって世界中の10億を超えるバッテリーの腐食を防いでいるとのこと。
現在ではケミカルだけではなく自動車用バッテリーやジャンプスターター、更にはバッテリー充電器など、様々なバッテリー関連商品をデザインし生産しています。
今回紹介するのはそんな老舗メーカーの放つ最新リチウムバッテリーです!
リチウムバッテリーのメリット・デメリットをおさらい!
NOCOのパワースポーツバッテリーの紹介に移る前に軽くリチウムバッテリーの基礎知識についておさらいしましょう!
・大電流を流せる
・自己放電しにくい
・液漏れしない
・リチウムは燃える?というイメージ
以上のメリット・デメリットを踏まえて、今回ご紹介するNOCO パワースポーツバッテリーの特徴をご紹介します!
NOCOのリチウムバッテリーの特徴とは。他のリチウムバッテリーと何が違うの?
現在では各社それぞれがリチウムバッテリーを販売している中で、NOCOのリチウムバッテリーは一体どのような特徴を持っているのでしょうか。
今回は2つの視点にフォーカスします。
特徴はなんといっても”圧倒的”安心感!
NOCO パワースポーツバッテリーの最大の特徴はBMS(バッテリー管理システム)になります!
このBMSがトラブルや前述したリチウムバッテリーの管理がシビアな側面をサポートするのです。
BMSはバッテリー内部のリチウム電池セルを常時モニタリング。
リチウムバッテリーにつきまとう過充電や過放電といった下記のトラブルからバッテリーを守ります。
・OVER-CHARGE 過充電
原因を取り除いた後に自動的に復帰。
・SHORT-CIRCUIT 短絡
バッテリーへの負荷を取り除いた後に自動的に復帰。
・OVER-DISCHARGE 過放電
充電器に接続し充電することで自動的に復帰。
・EXTREME-HEAT 高温
動作温度範囲に戻ることで自動的に復帰。
・EXREME-COLD 低温
動作温度範囲に戻ることで自動的に復帰
・OVER-CURRENT 過電流
電力の供給が間に合っていないため、接続先を見直すことで復帰。
これらの6要素によってリチウム電池セルがダメージを受ける前に、BMSが自動的にセルの通電を切断することで保護し、トラブル解決後には自動的に再起動するように設計されているのです。
またBMSはセルバランス機能を搭載しており、常に各セル間の電圧バランスを維持して最適なバッテリー性能を確保。
リチウムバッテリーのデメリットであった、過充電や過放電といった管理のシビアさを見事にケアする形となっています。
またリチウムイオンバッテリーの中でも「リチウムフェライト」という発火しない素材を採用したバッテリーなので、「リチウムバッテリーは燃える」といったようなイメージとも無縁です。
またBMSでの保護機能だけではなく、メーカーの保証が業界最長クラスの5年保証!
ある意味「5年の使用ではトラブルの心配がない」というNOCOの自信の裏付けと言えるかもしれません。
一般的に鉛バッテリーの寿命が2~3年という中で、5年間の保証というのは正直驚きです。
またバッテリーの外装にあたる部分などは、バッテリー内部保護の観点から、減衰ゴムをベースにフォーム(スポンジ)構造でデザインされています!
更にこちらのバッテリー本体は防水で、IP66の規格を取得しています。
このようにBMSによる内部からの保護機能、そして外部はフォーム構造による振動防止機能による保護、極めつけにはメーカーからの5年保証という3つのサポートが生み出す圧倒的安心感がNOCO パワースポーツバッテリーの特徴と言えます。
とにかく見た目がめちゃくちゃカッコいい!
散々性能に関する話をしていたのに突然見た目の話?と思われる方もいるかも知れません。
ただ、このバッテリー本ッ当にデザインがカッコいいんです!
バッテリーといえばどのメーカーも似たようなデザインで、見た目に個性が現れるような商品は基本的にありません。装着時には外から見えることも無いパーツなので、当然と言えば当然のことです。
ですがNOCOのリチウムバッテリーに関しては話は別!
SFチックでスタイリッシュなデザインは個人的にクリティカルヒットです。
こういった見えない部分にも関わらず凝ったデザインの部品を見ると興奮しますね。
こちらは公式サイトにあるバッテリーの寸法図なのですが、寸法図からも男の子が好きな要素が滲み出ています。
筆者はモ◯ルスーツの設計図的なイラストを連想しました。
本来簡略化した図と寸法さえ書いてあれば寸法図の機能としては問題無いはずですが、それでもこのデザインで来る心意気がイケてます。
バッテリー端子も「マルチコネクションターミナルズ」と呼ばれる三方向から端子を装着出来る構造をしています。
純正装着される鉛バッテリーからサイズなどが変わってしまうことを想定し、配線のレイアウトを柔軟に変更出来る機能となっています。
機能もそうなのですが、これがまた端子自体の形状が美しいのです。
実物を見ながら詳細レビューしていきますのでお付き合いください。
実車に装着してレビューしてみよう!
今回レビューするモデルは「NLP5」です。
NOCOのリチウムバッテリーのラインナップの中では最も小さい容量・サイズのモデルで、YTX7L-BSやYTZ5S-BS(他社品番)などといった小排気量向けの比較的小型なバッテリーに適合するモデルです。
他のサイズバリエーションはこちら(メーカー公式ページ)
早速ですがもう既にパッケージのデザインが非常にカッコいいですね!
パッケージ上部にはハニカム構造のようなモチーフが入っています。
メーカーの説明によれば”フォーム構造”を採用ということなので、衝撃吸収構造を表現しているのかもしれません。
パッケージと本体を詳しく見てみよう
外箱は二重構造になっています。バイクのパーツ、とりわけバッテリーのパッケージとしては他に類を見ない凝り様ではないでしょうか。
外箱を開けなければ目に入らない1914の文字もオシャレです。
バッテリーのパッケージというよりは、ゲーミングPCのパーツやデバイス系のような豪華さです。
開封するとこのような感じに。
内容物としてはバッテリー本体、スペーサー×2、説明書、緩衝材、六角棒レンチ1本です。
本体のデザインも言わずもがなスタイリッシュです。
各部にあしらわれたNOCOのロゴも、プリントではなくすべて刻印という部分にメーカーのこだわりを感じます。
全体的なデザインはバイクのバッテリーというよりは、もっとSFチックなメカのバッテリーのようにみえます。
例えばビームライフルのマガジン(弾倉)とか…
こんなにカッコいいデザインのバッテリーを車体の内部に収めた後に、更に蓋をして見られなくなってしまうのが悲しくて仕方ありません。
リチウムバッテリーは性質上、ほぼバッテリーが上がってしまうことが無いので、しばらくバッテリーボックスを開ける機会が無いというのが、更に悲しみに拍車をかけます。
バッテリー上部はこのようなデザインになっています。X字型のモールドデザインがイカしてます。
このデザインのためにQRコードも角度を付けた配置になっているのミソですね!
とりあえずカッコいいデザインありきで、そこに合わせて他の要素を配置するというのは、何かイタリアのバイクのような心意気を感じます。
端子カバーもNOCOのリチウムバッテリーの特徴である特殊な端子に合わせたデザインです。
普通、外したバッテリー端子カバーなどはそのままゴミ箱に直行するものだと思われますが、今回はロゴ入りかつ無駄に凝った形状のカバーなので捨てるに捨てられません。カッコいい。
というかこのロゴがエンボス加工されている部分に至っては、実際の端子と見比べてみるとわかるのですが、「ロゴを入れてかつカッコいい形にする」ためだけの形状になっています。粋ですね。
端子カバーを外すと中身はこのようになっています。
この端子が先程ご紹介した「マルチコネクションターミナルズ」なのですが、とにかく凝った造形をしています。
端子単体で見るとこのような感じ。
三面レイアウトで端子接続の自由度が上がるという機能性もさることながら、エッジの処理など非常に美しく、コストがかかっているように見受けられます。
端子上面の部分に至っては肉抜き加工が施してあります。これだけのサイズであれば、数グラム変わるかどうかというところですが、見た目の引き締まり感は倍増です!この端子形状に、NOCOのデザインに対するこだわりが凝縮されているのではないでしょうか。
神は細部に宿る…なんて言葉が脳裏に浮かびます。
リチウムバッテリーは純正サイズの鉛バッテリーに比べてサイズが小さくなることがあります。
そのためバッテリーサイズが小さくなり、余ってしまうバッテリー格納スペースには緩衝材などをスペーサーとして入れるのが一般的です。
ですがNOCO パワースポーツバッテリーの場合は専用デザインのスペーサーが用意されています。
今回はそれぞれ20mmと24mmのスペーサーが付属。
ただでさえ装着すると外からは見えないバッテリーの、更に裏面という見えないof見えない部分にまでロゴが入っています。
サイズバリエーションであるNLP14に至っては、およそ17種類の他社品番サイズと互換性があるため、スペーサーも5個付属します。
専用デザインであるため、積み木のようにスペーサーを組み合わせてもまったくデザインが崩れないというのが素晴らしいです。
実際に取り付けてみよう
今回NOCOのリチウムバッテリーに交換する車両はこちら。
Webikeスタッフが通勤に使用するアドレス110です。
スクーターにリチウムバッテリーなんて高級なバッテリーを?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、エンジンの停止・始動の回数が多く、更に通勤で最も重要な要素と言える燃費も、リチウムバッテリーによる軽量化で向上間違い無し!
スーパースポーツにも通勤車にも効果バツグンです。
こちらの年式のアドレスはバッテリーがフロントカウル内に搭載されていますので、まずはカウルを外してバッテリーにアクセスします。
純正搭載されていたバッテリー型式はYTX7L-BSです。外したバッテリーの重量を測ってみましょう。
純正の鉛バッテリーの重量は約2.4kgでした。
NOCOのリチウムバッテリーの重量を測って比較してみましょう。
結果はなんと約0.7kg!純正と比較して1/3以下の重量となっています。
バッテリーを高性能なものに変えた上に、更に1.7kgの軽量化も可能ということを踏まえると、なんてコスパの良いカスタムなんだと思えてしまいます。
今回交換するYTX7L-BSとはかなりのサイズ差があります。幅と奥行きは同寸法ですが、高さに大きな違いがあります。
説明書にあるサイズ互換表はこのようになっています。
純正バッテリー | スペーサー |
---|---|
BTZ5S | なし |
BTX4L-BS | なし |
BTX5L-BS | (1)20mm |
BTX7L-BS | (1)20mm(1)24mm |
説明書に記載されたサイズ互換表に従い、今回は20mmスペーサーと24mmスペーサーの2つを使います。
専用デザインなのでスペーサーを装着しても見た目はスッキリとしています。
次は車体にバッテリーを搭載していきます。
ここで問題発生
バッテリーを車体に仮置きしてみると、3つ程問題があることに気づきました。
1つ目は車体側バッテリー端子形状と、バッテリー本体の端子形状のマッチングについてです。
アドレスを始めとして、恐らく画像のようなコの字型のバッテリー端子を採用しているバイクは多く存在します。このタイプの端子とNOCOのマルチコネクションターミナルズは相性が悪いようです。
端子の天地をひっくり返して無理矢理に接続することも可能ですが、配線にテンションがかかってしまい危険です。
このタイプの端子を採用しているバイクかつ配線加工に自信がある方は、NOCOのリチウムバッテリーを装着する場合こちらのような端子に交換することをおすすめします。
今回は応急的にプライヤーなどを使ってコの字型端子を平たく加工して装着することにしました。
正攻法ではありませんし見た目もよろしくないので、車体側の端子交換を強くお勧めします。
2つ目の問題は、スペーサーを2個使った状態で装着しようとした場合、端子の位置が高すぎてしまうということです。
若干ですが端子の位置が純正よりも高く、また車体側の配線長に余裕がなかったため、スペーサー2つの状態で接続しようとすると配線がパッツパツに…
そのため今回は24mmスペーサー1つを使い固定することにしました。
このサイズでもステーが端子に被ってしまうなどの位置的な問題はありませんでした。
3つ目の問題は車体側端子の穴径が小さく、バッテリーに付属してきたボルトが入らないということです。今回はリーマを使って車体側端子の穴を拡大して取り付けをしました。
交換完了!
多少の加工が発生してしまいましたが、無事に装着することが出来ました。
車体側の端子形状によっては文字通り”ポン付け”だったかもしれません。
その後はなんの問題もなくエンジンを始動できました。
ちなみに交換したNOCOのリチウムバッテリーの使用前電圧は12.97Vでした。
対して取り外した純正バッテリーは12.72Vでした。多少なりとも劣化はしていますが、十分に使用可能な電圧でした。
まとめると、NOCOのリチウムバッテリーへのバッテリー交換において気をつけるべきポイントは「車体側純正端子の形状」に終始します。
実際にバッテリーを交換する前に、愛車の車体側バッテリー端子形状を確認してから作業に入りましょう。場合によっては今回のように加工が必要な場合があります。
交換後の違いは体感出来る?
始動時にセルモーターの回り方が目に見えてパワフルに!などのような、すぐに気づけるような目に見えた違いはありませんでした。交換前のバッテリーがそこまで劣化していなかったのが大きな要因だと思われます。
また1.7kgの軽量化を果たしたとはいえ、一般ライダーが街乗りをした程度では違いを感じ取ることは難しいところ。
なので軽量化による燃費向上を給油の際に実感するか、年単位のスパンで使用した際の劣化の少なさなどが、体感出来る違いになるのかと考えていました。
ですが、今回バッテリーをNOCOのリチウムバッテリーに交換したアドレスのオーナーである弊社スタッフから、予想を良い意味で裏切る言葉が飛び出しました。
「バイクの動きが違う!」
前述したように1kg、2kg程度の違いでは差を体感しにくいはずなのですが、今回の場合はバッテリーの搭載位置にカラクリがありました。
一般的なバイクではシート下などにバッテリーが格納されることが多いです。
この場合、バイクの重心にバッテリーが近いため、バイクの動きに明確な変化は起きにくいのが想像いただけると思います。
対して今回バッテリーを交換したアドレスの搭載位置はこのようになっています。
バッテリー搭載位置が操舵輪(フロントタイヤ)の直上かつ重心位置から遠く離れていることが分かります。ただでさえ車体重量が軽いうえ、重心位置から遠く離れた場所にあるパーツが2kg弱軽くなったとすれば、自ずと重心位置は変わり乗り味にも違いが出てきます。
フロントが軽くなったことが良いのか悪いのかは置いておきますが、リチウムバッテリーへの交換で、明確な違いを体感できたことは事実です。
リチウムバッテリーはバイクカスタムで最もコスパの良いカスタム!
個人的な意見としては、純正の鉛バッテリーからリチウムバッテリーへの交換は、どの部分のパーツ交換よりもコスパの良いカスタムだと考えています。
今回のようにバイクを2kg弱軽量化しようと思ったら、外装をカーボンに変えたり、軽い素材を使ったサイレンサーに変えるなど、かなりの投資をしなければいけません。
それを考えると純正の鉛バッテリーにプラス6,000円程度を払えば、バッテリーが上がりにくくなり、始動性が改善し、バッテリー液の管理から解放され、更に軽量化出来てしまうのです。
NOCO パワースポーツバッテリーは更にリチウムバッテリーのデメリットであった管理の難しさやリスクをカバーする機能が備わっているので、もはや交換しない理由が無いとさえ言えます!
スクーターにも!ビジバイにも!カフェレーサーにも!旧車にも!スーパースポーツにも!すべてのバイクにオススメです!
この記事にいいねする
鉛バッテリーは徐々に弱って交換時期が判るが、リポバッテリーは突然死があるから怖い。
出先でのリスクを考えると、まだまだ鉛バッテリーでしょう。
JAFで充分かな