
加減速時のショックや走行距離を重ねることで徐々に伸びるドライブチェーン。調整限度まで伸びたチェーンを交換する際に、純正リンク数で交換すれば間違いありませんが、愛車のリンク数が分からない、スプロケットの歯数を変更してるような場合、チェーンメーカーが販売する標準チェーンを購入し、実車に合わせて調整することで対応できます。
二次減速比をロングにすると届かなくなることもある
チェーンの遊びが多くなったら、リアタイヤのアクスルシャフトを後方に引いてたわみを減らす。だがチェーンの伸びが多くなるとチェーンアジャスターの範囲では引っ張りきれなくなる。そうなったらドライブチェーンの交換時期である。ドライブチェーンが伸びるのはリンク同士をつなぐピンの摩耗が原因であり、ピンの摩耗によってスプロケットと噛み合うローラー間のピッチが徐々に広がっていく。するとスプロケット側も摩耗していくので、チェーン交換時にスプロケットも同時交換した方が良いこともある。
原付からビッグバイクまで、エンジンの駆動力を後輪に伝える手段として今も昔も主流なのがチェーン駆動です。小型以上の機種なら大半の市販車がシールチェーンを標準装備するようになった現在、適切なメンテナンスを行っていればチェーンの寿命はかなり長くなっています。
それでも金属部品が接触し、擦れ合い、引っ張られながら回転するドライブチェーンにはいつか交換時期がやってきます。チェーンが伸びる際はスプロケットを噛み合うピッチが広がるため、スプロケットの交換が必要になることもあります。鉄製の純正スプロケットをアルミ製に交換しているような場合は消耗スピードが早い場合があるので注意が必要です。
ドライブチェーンを交換する場合、リンク数(コマ数)を把握することが重要です。ドライブスプロケットとドリブンスプロケットの歯数がノーマルであれば、その機種の標準リンク数のチェーンを入手します。一方でスプロケットの歯数を変更している場合はリンク数が変わってくることがあります。
ドライブスプロケットでもドリブンスプロケットでも、歯数を増やした場合は必要なリンク数は増え、歯数を減らすとリンク数が減ります。ドライブスプロケットの歯数を増やすと、同じギア段数とエンジン回転数なら速度が上がる方向になります。これはドリブンスプロケットの歯数を減らすのと同じ効果があります。
逆にドライブスプロケットの歯数を減らすと、同じギア段数とエンジン回転数なら速度が上がらない、つまり加速性が上がる方向になります。これはドリブンスプロケットの歯数を増やすのと同じ効果があります。
この時、チェーンアジャスターの位置がカギとなります。アクスルシャフトが調整範囲の中間にあって、前方にも後方にも移動できるようであれば、歯数の変更に対応できるかも知れません。しかしアジャスターが前寄りだった場合、ドライブスプロケットの歯数を増やすとチェーンが届かなくなる可能性があります。このような状態でそれでも二次減速比を小さくしたい場合、ドリブンスプロケットの歯数を減らすことでチェーン交換をしなくても二次減速比の変更が可能になる場合もあります。
逆に二次減速比を大きくして加速重視の特性に変更したい時、ドライブスプロケットの歯数を減らせばチェーンのリンク数は余る方向になります。しかしその状態でチェーンアジャスターを後方いっぱいまで引いてなおチェーンの遊びが大きいようなら、ドリブンスプロケットの歯数を増やすことでアジャスターを適正範囲で使えるようになることもあります。
これら二次減速比の変更は前後スプロケットとドライブチェーンの相互関係によって組み合わせが変わってくるので、リンク数を変更しない状態で歯数をどの程度まで変更できるかは一概には分かりません。むしろ現状のフィーリングをどうしたいのか、その際に前後スプロケットをどのように変更するのか、変更した結果必要なリンク数はどれだけになるのかという順序で変更していくのが一般的といえるでしょう。
- ポイント1・チェーン駆動のバイクは前後スプロケット歯数の比率による二次減速比を変えることで駆動力の特性を変えることができる
- ポイント2・ドライブチェーンのリンク数は、前後スプロケットの歯数を変更することで純正リンク数から変化する場合がある
ウェビックならリンク数を指定してドライブチェーンを購入できる
江沼チヱン製作所のEK420STDは原付クラス用のノンシールチェーン。既製品としては100、110、120、130、140、250リンクがある。ホンダモンキーやヤマハチャピィなどのレジャーバイクは100リンクでも余るが、マグナ50は100リンク、NSR50は106/108リンクということもある。
前後スプロケットが純正なら、Webikeで88リンクをオーダーして無調整で取り付けることができるが、100リンクの既製品を購入したので長さを調整する。アクスルシャフトをアジャスター範囲の前端にスライドしてチェーンを掛け、内側のリンク同士が突き当たるようにカットする。スイングアーム部分でチェーンがたるんで見えるが、あと2リンク分詰めると遊びが減りすぎてリアショックのストロークに影響するため、この状態でジョイントしてアジャスターで遊びを調整する。
前後スプロケットが純正歯数であるなら、交換するドライブチェーンのリンク数も純正通りとなります。愛車のチェーンのリンク数はパーツリストやネット上の情報や、実際に車両のドライブチェーンを数えてみることで分かります。
チェーンのリンクは内外のリンクプレートを数えていく以外に、リンクのピンの本数を数えても分かります。ジョイント部分のピンをマーカーペンなどでチェックして、タイヤをゆっくり回転させながらピンの本数をカウントすることで、正確なリンク数を把握できます。ひとつのリンクには2本のピンが圧入されているので、合計のリンク数は必ず偶数になります。
チェーンメーカーによって違いはありますが、市販されているチェーンは100、110、120、130リンク……というようにキリの良いリンク数で販売されています。これに対して車体のリンク数は車両によって異なります。例えばキャブレター時代の50ccホンダモンキーは年式によって72、74、76リンクがあり、写真で紹介するヤマハチャピィは88リンクです。
このような機種は標準市販品ではリンク数が合わないので、何らかの調整が必要です。そんな時に重宝するのが、この記事を掲載しているWebikeのショッピングページです。ここでは各チェーンメーカーの製品をリンク数を指定して購入できます。製品写真を掲載している江沼チヱンの420サイズスタンダードチェーンの場合、60~160リンクまで2リンク刻みで指定して購入できます。
リンク数の具体的な調整手順は後述しますが、リンク数を指定して購入できればチェーンカッターなどの専用工具は不要になり、また必要なリンク数を購入することでカット後の無駄なリンクが余ることがないため標準リンクで購入するよりリーズナブルになる場合もあります。
- ポイント1・既製品のチェーンは純正リンク数に関わらず標準リンク数で販売されている
- ポイント2・Webikeのショッピングサイトでは、チェーンのリンク数を指定して購入できる
標準リンク数で購入してからチェーンカッターで現物合わせする方法もある
カット位置を決めたらチェーンカッターでリンクピンを押し抜く。ピンは両端をかしめてあるので、原付クラス用の420サイズでも専用工具が必要。写真の工具は切断からシールチェーンのかしめ作業まですべて可能で、これとは別に切断だけに特化したリーズナブルなチェーンカッターもある。
リンク数の調整時は、端部が内プレートになる位置で切断することが重要。画像で切断した位置の隣のピンを抜くこともできるが、それではジョイントがセットできない。
原付クラス用のノンシールチェーンなので、付属するジョイントリンクはクリップ式となっている。シールチェーンは外プレートと内プレートの間にゴム製のシールが組み込まれ、組み立て幅も重要になるのでプレートを圧入してピンをかしめて固定する。そのためジョイントを組み付ける際には専用のチェーンツールを使用する。
ジョイントリンクでチェーンをつないだら、閉じたU字側が進行方向に向くようににクリップをはめる。クリップがしっかりはまっていないと走行中に脱落し、チェーンが外れてしまうこともある。クリップをはめたら、ステンレスワイヤーで縛るワイヤーロックを行うのも有効。
左右のチェーンアジャスターの位置を合わせたら、チェーンとスプロケットの間にドライバーやTハンドルやウエスを挟んでタイヤを回転させる。これによってアクスルシャフトが前に引っ張られてアジャスター部分の僅かな遊びがなくなるので、この状態でアクスルナットを本締めする。
前後スプロケットが純正の歯数であれば、パーツリストに記載された標準リンク数でチェーンを購入すれば良いのですが、最初に説明したように二次減速比を変更している、あるいはチェーン交換と同時に変更したい場合には、純正リンク数では過不足が生じる可能性があります。その際は標準リンク数の既製品を購入して、現車に合わせてリンク数を調整します。
具体的には、アクスルシャフトをチェーンアジャスターの範囲で前端にセットして、前後スプロケットにドライブチェーンを掛けてちょうど良いリンク部分で長さを合わせます。注意すべき点は、長さを合わせる側のチェーンは内側のリンクが残る位置で切断することです。長さが合ったからという理由だけで、外側のリンクが残る位置でカットしてしまうと、継手となるジョイントリンクを取り付けることができません。少し考えてみれば当然ですが、スプロケットの歯にチェーンを掛けて長さを合わせることだけに集中してしまうと、構造的に当たり前なことを見落としてしまう場合もあります。
チェーンを切断する際はかしめられたリンクのピンを抜くための専用工具、チェーンカッターが必要です。チェーンカッターには単純にチェーンを切断するためだけの製品と、シールチェーンで必要なジョイントプレート圧入とピンのカシメができる製品があります。また420、428、520、530……といったチェーンサイズによって工具の寸法も変わりますが、製品によって対応できるサイズ範囲もまちまちなので、愛車のチェーンサイズに適した工具を入手することも重要です。
リンク数を指定して購入する場合に比べて、自分でチェーンの長さを調整する際は工具が必要な分だけ余計な費用が掛かります。しかしカシメタイプのジョイントを使用するシールチェーン装着車の場合、リンク数を指定して切断の手間を省いたとしても、ジョイント部分のピンをかしめるための専用工具が必要です。そう考えれば、標準リンク数の既製品を購入しても切断は容易です。
ドライブチェーン交換は安全性にとってきわめて重要な作業となります。交換用のチェーンや専用工具は容易に購入できますが、正しく安全に作業を行うには充分な予備知識と慎重さが不可欠であることを認識しておくことが必要です。
- ポイント1・スプロケットの歯数を変更して純正リンク数から変わっている場合は、既製品を購入して現物合わせで調整する
- ポイント2・チェーンの切断やシールチェーンのカシメに用いる専用工具を使用する際は慎重に取り扱うことが必要
この記事にいいねする