旧車バイクが見直され、そのムーブメントが定着した中で、古いオートバイをメンテナンスして走らせたい!!レストア再生して、コンディションを整えたい!!と考えるユーザー数が日々増えている。特に、生産期間が長く、昔はビジネスモデルの象徴的存在であり、今では「オシャレバイク界の重鎮」として、存在感を年々高めているのが、ホンダのスーパーカブシリーズだろう。ここでは、同シリーズを始め、4ストローク(4サイクル)エンジンを搭載したモデルを「久しぶりに走らせてみよう」と考えている時に、実施したいメンテナンス手順を再確認してみよう。

現状エンジンオイルコンディションを知ろう



どんなエンジンでも久しぶりに始動するような時には、エンジンオイルのコンディションを確認するのが第一のお約束。単純に、エンジンオイルを抜き取ろうとドレンボルトを回したら「量はおちょこ数杯、しかも墨汁のようで……」といった例は数多い。特に、スーパーカブの場合は、そんな状況でも走ってしまうから恐ろしい……。エンジンオイルを抜き取ったら、レベルゲージの下限まで新品エンジンオイルを入れて、作業進行するのが一般的なのだが……。

エンジン内部の汚れはどうしたものか……!?



実はこのエンジン、数十年間放置されていたので、エンジンの始動確認後にエンジンを降ろし、シリンダー腰上とクランクケース左右カバーと内部部品を取り外し、クランクケースの汚れはパーツクリーナーとブラシでゴシゴシ擦って洗浄してみた。クランクケースやエンジンカバーの内側は、油垢で相当汚れていたが、実は、この程度の汚れなら、高性能フラッシングオイルを利用することで、クラッチ周りの部品はもちろん、クランクケース内のパーツ、クランクシャフトやミッションパーツもすべて、クリーニングできたはずである。慌てて作業進行した、失敗例と呼ぶことができそうな顛末だ。

分解前に使いたい高性能フラッシング



エンジン内部の汚れ具合は、排出したエンジンオイルのコンディションもしくは、オイルフィラーキャップ内に懐中電灯を照らすことで、ケース内部の状況をある程度は判断することができる。流れ出るエンジンオイルが汚れているときには、おおかたエンジン内部が油垢で真っ黒になっていることが多い。新品エンジンオイルに交換しても、汚れた部品がエンジンオイルによって洗われ、新しいエンジンオイルがすぐさま真っ黒になってしまうことがある。そうならないためにも、エンジン始動が可能な状況なら、高性能フラッシングオイルでエンジン内部を洗浄してから、新しいエンジンオイルへ交換するのが望ましい。

エンジン始動→暖気の繰り返し後に

高性能フラッシングオイルをレベル下限まで注入したらエンジン始動。しっかりエンジン暖機してから、極低回転、低スピードで実走洗浄してみよう。一般的なフラッシング剤とは異なり、オイルベースのフラッシング剤「フラッシングゾイル」なら、走行洗浄することができ、実は、それが効果的でもある。エンジンが冷えたら、同じ作業を繰り返し行うことで、エンジン内部の洗浄効果をより一層高めることができる。フラッシングオイルを注入して、何分か暖気するだけではなく、実走行でのフラッシングを何度か繰り返せば、驚くほど汚れたエンジンオイルを排出することができる。

1958年から生産され続けるスーパーカブ

2022年で生誕64年目になるホンダスーパーカブ。元祖モデルは50ccOHVエンジンのC100系を搭載。年毎にアップデートを繰り返しながら、1966年春にはOHCエンジンを搭載したC50へと進化。その後、同型エンジンながらFI搭載モデルへと進化し、今尚、生産販売され続けているのがスーパーカブシリーズである。今回、メンテナンス実践したのは、初代OHVエンジンシリーズの最終系で、1964年(昭和39年)の秋に生産されたモデル。テールランプがピノキオと呼ばれるタイプから、逆三角形のおむすび型へと進化したのが特徴で、このデザイン車は1966年(昭和41年)春まで生産された。

POINT

  • ポイント1・久しぶりのエンジン始動時に超効果的なフラッシング。エンジン内部の汚れ落としは「様々な発見の源」になる
  • ポイント2・しっかりエンジンを温めることで「洗浄効果は圧倒的に高まる」ことを覚えておこう
  • ポイント3・オーバーホール前にフラッシングしておくことで、分解時のパーツ汚れが少なく洗浄作業も楽々

スーパーカブに限らす、久しぶりにエンジン始動するバイクの場合は、事前に様々な確認を行わなくてはいけない。ここでは、4ストロークエンジンの「始動前注意点」を再確認しておこう。まずはエンジン本体以前に、エンジン周辺のコンディションにも気を配ろう。エンジン始動の流れを「川の流れ」に置き換えると、その上流にあるのがガソリンタンクである。タンク内に汚れやサビ粉が堆積していないか?必要に応じたメンテナンスが不可欠なのは当然だ。その直下のキャブレターに詰まりは無いかなどなど、エンジン本体を手掛ける前に、周辺コンディションをしっかり確認しなくてはいけない。

調子の良し悪しに関係なく、エンジン始動できる状況であれば、まずはスパークプラグを取り外して、空キックでスパークプラグに元気な火花が飛ぶか確認してみよう。その方法は、プラグキャップへプラグを差し込み、プラグのネジ部分をエンジンに押し付けた状態でキックを踏み込むことで、電極に火花がバシバシッと出ることを確認することができる。またこの際に、ハイテンションコード(プラグコード)にプラグキャップがしっかり組み込んであるか?キャップを引っ張って確認してみよう。コードに対してキャップがユラユラ動いたり、簡単に抜けてしまうときには、コードからキャップを抜き取り(半時計回転で回しながら引き抜く)、コードエンドをニッパで7~8ミリほどカットしてから、キャップ側に付く木ねじ接点をハイテンションコードにしっかりねじ込もう。

ガソリンタンク内が汚れていたり、賞味期限切れで揮発性が低下したガソリンが入っているときには、メンテナンス用の点滴タンクにフレッシュなガソリンを入れてキャブレターへ流し込み、エンジン始動の準備を進めよう。

エンジン始動の段取りができたら、慌てて作業進行せずに、まずはエンジンオイル量を確認しつつドレンボルトから古いエンジンオイルを抜き取ろう。仮に、フィラーゲージでオイルレベルを確認したら、既定の範囲内にあり、しかもクリアな状態(透明な状態)のことがあっても、始動前には必ずオイル交換すべきである。何故なら、一見ではキレイに見えるエンジンオイルでも、長期にわたってオイル交換していない場合は、オイル内の汚れ成分が沈殿して、いわゆる「上澄みクリア」状態になっているケースもあるのだ。そんな上澄み部分でオイル汚れを確認しても意味が無い。だからこそ、久しぶりのエンジン始動する時には、問答無用でエンジンオイル交換するのがベターである。

そんなオイル交換時に試してほしいのが、高性能フラッシングオイルとして知られる「フラッシングゾイル」だ。一般的なフラッシング剤は、有機溶剤や洗剤成分で形成された商品が多いが、フラッシングゾイルは、ベース成分がオイルで、そこに洗浄成分や金属表面を改質するスーパーゾイル成分を配合したフラッシングオイル。古いエンジンオイルを抜き取ったら、注入レベル下限までフラッシングゾイルを注入し、エンジン始動してみよう。走れるコンディションなら、エンジン回転を高めず、低回転域を保ちながら、しっかり暖気運転するようにエンジンを温めよう。エンジンが冷えたら、再始動して、低回転で温めながら暖機運転しよう。そんな作業を何度も繰り返すことで、エンジン内部の汚れ(クランクケースにこびりついた汚れや油垢など)が驚くほど落ちる、洗浄効果が高いフラッシングケミカルなのだ。

有機溶剤や洗剤を使った一般のフラッシング剤で「走行洗浄はもっての外」。エンジン内部を痛めてしまうのが関の山だ。オイルベースで精製されたフラッシングゾイルだからこそ、そのような走行洗浄行為が可能なのだ。特に、近々オーバーホールを予定しているエンジンなら、是非、試して欲しい。オーバーホール時は、分解後の内部パーツ洗浄やクランクケース内側の油垢落としに時間を費やしてしまうが(それがオーバーホールあるあるでもある)、分解前にフラッシングゾイルを使ってクリーニング実践することで、エンジン分解後のパーツ洗浄を「楽々行うことができた!!」といったお話は珍しくない。

走行できなくてもエンジン始動が可能なら、エンジン始動後にしばらくアイドリングさせ(20~30分のアイドリング)、軽い空吹かしを繰り返し行ってからエンジン停止。エンジンが冷えたら、再びエンジン始動し同じ作業を何度も繰り返す。そんな作業を繰り返した後にエンジン分解したところ、油垢で真っ黒に汚れていたエンジンが、驚くほどキレイになっていた(作業前にオイルパンを外してエンジン内部は覗き込み確認していた4気筒エンジン)。もちろんケース内側の油垢だけではなく、クランクシャフトやミッションパーツにこびり付いた油垢もサッパリ美しく落ちていた。そんな使い方が可能なフラッシングゾイルの存在を、是非、覚えておいて欲しい。

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