
シリンダーベースガスケットからオイル漏れ!?ガソリン漏れ(混合気漏れ)!?を発見。エンジン汚れの原因だし、2ストエンジンなので一次圧縮の低下=エンジンパワーの低下につながるのは明らかである。いずれにしてもガスケット交換は必至である。そこで作業実践するが、シリンダーを取り外すのなら、同時にピストンコンディションやピストンリングの摩耗状況を確認しておこう。
旧車を永く楽しみたいのなら……
2スト旧車は4ストエンジンの旧車と比べて消耗部品が多い。そのひとつにピストンがある。すでにメーカーでは販売中止になっているが、社外ピストン専門メーカーから発売されていた!?ヤマハミニファンのユーザーから、ボビィにはミニトレ用ピストンが使えると伺い、半信半疑で購入すると、確かにボビィエンジンから取り外したピストンとほぼ同じ寸法形状のピストンが出てきた。末永く乗り続けたいと考えた時には、ピストンに限らずガスケットなどもスペアパーツを確保しておこう。
まだ使えると判断!!でもケアは必要
エンジンの中から出てきたピストンのボアはきっちりΦ47mmだったのでSTDサイズ。実走行2万キロ以上走ってきたわりには程度が良く、焼き付きの痕や引っ掻きキズの痕などまったく無い程度極上品。優しく走られていたのだろう。こんなにイイ感じのコンディションなら、まだまだ余裕で使えると判断した。PETボトルの底部分をカッターナイフで切り落とし、ピストンを逆さまにしてキャブクリーナーケミカルをプシューッと吹き付けて、しばらく待ってみた。底に溜まった溶剤に浸って、ピストントップに堆積したカーボンが溶けるのだ。
ピストンリングは合口隙間を確認
取り外したピストンリングをシリンダー内にセットし、シックネスゲージでリングの合口隙間を測定した。使用済みで擦り減ったリングは、コンプレッション低下の主な原因だが、旧リングは想像以上に減ってなかった。新品リングとの比較も行なったが、残念ながら大きな差が無かったのには驚いた。比較的最近!?ピストンリング交換されていたのか?とにかく不思議だが、減っていないので新品ピストンリングは引き続きスペアパーツにした。合口隙間はエンジン個々でデータは異なるが、2ストロークエンジンの場合は、0.3~0.4ミリが標準的寸法で、0.7ミリが摩耗限度と考えよう。高回転まで回して走っていたエンジンは、摩耗限度を遙かに超え、合口隙間1.2ミリといった例も珍しくはない。
リードバルブエンジンならバルブ洗浄
一次圧縮のコンプレッションをキープする役割がリードバルブ。ピストンバルブエンジンは、読んで字の如くピストン本体そのものが一時圧縮を保つバルブの役割を果たしている。このリードバルブが開き気味になってしまうと一次圧縮が低下し、エンジンパワーが低下してしまう。分解&点検してみたが、バルブ板とボディの当たりは良く、ゴミ噛みやカーボン付着などは無かった。いずれにしてもシリンダーを取り外したならリードバルブも分解洗浄しておこう。バルブ板を取り外し、ボディ側の当たり面はオイルストーンを利用して優しく磨こう。
そもそもエンジン腰上を分解した原因である、シリンダーベースガスケットの漏れ滲みを無くすため、ベースガスケットは新品に交換した。スクレパーを使って慎重にガスケットを剥がしたら、オイルに浸したオイルストーンでシリンダーベース面とクランクケースのガスケット座面をしっかり磨いて面出し。新品ガスケットの両面には耐ガソリン性液状ガスケットを薄く塗布しつつ復元した。
- ポイント1・2ストロークエンジンのピストンは、エンジンの構造上、減りやすいので消耗部品と考えよう
- ポイント2・スペアパーツを確保する時には、同時に周辺部品も確保する。例えばピストンを確保するのならピストンリングやガスケット類も同時に確保しよう
- ポイント3・分解したピストンスカートは磨かない。エッジのバリ取り、面取り程度にとどめよう
ピストンとその周辺部品を分解した理由は、実走行で「パンチ感が無い」「走りが遅い!!」と感じたからだ。同系列エンジンを搭載した仲間のバイクに試乗させていただくと、トルクフルで速く、しかもパンチ感があった。それと比べて、このボビィ80は、明らかに遅い。もっさり感のかたまりでもあった。そこで、ピストンを取り出し、ピストンの摩耗やピストンリングの摩耗を確認点検してみた。
驚いたことに、エンジン内から出てきたピストンのコンディションは著しく良く、ピストンリングも摩耗限度に達するどころか、ほぼ標準値で減りも少なかった。分解ついでにリードバルブのコンディションも確認したが、それも大丈夫だった。
いろいろ調べた結果、パワー不足の原因は「マフラーではないか?」と判断。マフラー本体やエキパイのカーボン焼を試してみたが(ガスバーナーでしばらく焼いた)、内部に堆積したカーボンを焼き切ることができない様子……。そこで、他モデル用のエキスパンションチャンバー(パッソル用)を購入。ボビィ50用の純正エキパイを溶接で合体して、オリジナルチャンバーを自作。試運転してみると、これまでの走りとは一変!!パワー感やスピード感、何よりもパンチ感が様変わり!!大満足の走りに変貌したのだった。
構造がシンプルかつ簡単な空冷2ストエンジンの腰上を分解する時には、例えば、主要交換部品のピストンやピストンリング以外に、周辺部品の準備も忘れずに行おう。各種ガスケットなどは、購入し忘れやすい部品なので、エンジン腰上にしてもクラッチにしても、エンジン部品を分解する際には、各種ガスケットを忘れずにゲットしておこう。
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