
電装パーツの中でも、とくにメインハーネスは、バイクにとっては中枢神経であり、動脈、静脈、血管などなど、すべてに例えることができる極めて重要なパーツ。旧車に多いトラブルの筆頭が、このメインハーネスの劣化に起因した「電気系」にあると言っても過言ではない。だからこそ、常にコンディションカ良くありたいものだ。ここではメインハーネスやイグニッションコイルのハイテンションコードなど、配線類のコンディションに注目!!可能な限り、健康状況を回復させよう。
目次
ハイテンコードとプラグキャップ
70年代後半に登場したイグニッションコイル(IGコイル)の中にはハイテンションコードを交換できるタイプがある。プラスチックの劣化によってコイル本体に亀裂が入ってしまう例もあるので、ガソリンタンクを取り外したときにはコイル本体を凝視してみよう。小さな亀裂でも内部から絶縁ロウが溶け出てきたらIGコイル交換だ。今回は大丈夫だったが、ハイテンコードは劣化でカチカチになっていた。気楽に交換することができるプラグキャップは手元に新品(海外製)があったので交換した。信頼できる日本のメーカー製が最高だと思います。
交換可能なら迷わずに交換しよう
ハイテンコードは黒色被覆で派手ではないものをチョイスした。四輪用として切り売りされていた国内大手メーカー製なので安心だ。保護チューブは肉厚で耐熱仕様の収縮シリコンチューブを利用。IGコイルとハイテンコードの接続部分はこのようなゴムスリーブと皿ワッシャで構成されている。80年代のホンダ車は、このようなショートパーツも単体部品として発売していた(時期もあったが……)。劣化でカチカチに硬化していた純正ハイテンコートをすべて取り外し、全気筒ともに+20mmくらいでコードを切り取り、保護チューブも同じような寸法&位置関係で被せてヒーターで収縮。このような単品パーツを熱収縮させるときには、ヒートガンを固定して熱風吹き出し付近に収縮チューブを当てて作業を進めるのが良い。作業後のヒートガンは即電源OFFではなく、クールモードでクールダウンさせてから作業終了することでヒートガンの寿命は確実にながくなる。
マルチシリンダーなら番記対応
完成したハイテンコード。耐熱シリコンゴムの収縮チューブなので柔軟性が確保されている。以前はカチカチだったが、現在はフレキシブルさが確保されて、取り回しが極めて楽になった。気筒番号を示すマークチューブが無くなってしまうため、後々、何らかの方法でマークチューブを取り付けたいと思う。シリンダー番号を間違えてプラグキャップを阻止込み、始動困難になって困ったこと、ありませんか?
くたびれた保護チューブの交換がカギ
車体に組み込まれた状態だとなかなか凝視することができないのがメインハーネス。「取り外したら元通りにできませんよっ!!」といった弱音は吐かず、旧車オーナーなら、一度は車体から取り外し、傷んだ箇所や劣化硬化でカチカチになった保護チューブなどを交換することで、間違いなく予防的メンテナンスの実践になる。基本的には同じ色同士を接続すれば良いが、今ひとつ心配な時には、携帯のカメラ機能で分解前のディティールを撮影しておくのが良いだろう。
配線を露出させてクリーニング
パリパリに硬化していて、柔軟性がほとんど無い保護チューブに覆われたメインハーネス。柔軟性は無いものの、電装系は正しく機能していたので、特に、断線は無いと考えられる。コードそのものには弾力性があるが、保護被覆のビニールチューブがカチカチ。柔軟性が必要な部分を補修しようと思う。
携帯撮影通りに正確な復元
テールランプ周りの配線には保護チューブが無くコードがムキ出しでコード色がわからないほど汚れているものもあった。ウエスを敷いた上で、家庭用洗剤の「かんたんマイペット」をスプレー。不要になった歯ブラシを使って汚れ落とし開始。ステアリングネック部分は太い保護チューブで覆われている。束になったコードがタンク下からヘッドライトケース内まで、ひと束でレイアウトされている。カチカチチューブを切開してコードを洗浄。砂利やホコリで汚れている。マイペットだけでは落ちない汚れは、花咲かGワックスで磨いた。気が付いた部分の汚れはしっかり落とした。そんな汚れが、次の汚れを呼び込むようだ。テーピング部分もすべて新規でテーピングし直した。携帯電話で復元前の状況を写真撮影しておくことで、復元時に接続ミスを起こしにくくなる。メモよりも写メモの方が間違わなくて良い。オールクリーニングで完全にリフレッシュ!!ヘッドライトケース内へ入るメインハーネスを太い1本から2本仕様に変更。フレキシブルさを増す取り回しに変更した。
- ポイント1・単純な断線や接触不良が大半の旧車トラブル
- ポイント2・プラグキャップやハイテンションコートは積極的に交換しよう
- ポイント3・ギボシ端子の交換で通電抵抗は低下しスムーズ回路へ
車体各部に取り回されたままでは、クリーニングが著しく面倒なのがメインハーネス。電装系部品の中枢神経とも呼べるメインハーネスは、日頃からキレイでありたい部品だ。車体に取り回されたままではなく、取り外してクリーニングするのが一番確実かつ手っ取り早い。ただし、復元時に困らないために、分解事前に電装系の各機能は必ず点検し、正しく作動&稼働することを確認してから、作業に取り掛かろう。
具体的には、仮に不動車であっても、分解する前にバッテリーを接続して、各部の動きは確認しておきたい。セルモーターは回るか?キルスイッチ機能は生きているか?ヘッドライトは点灯するか?各種ハンドルスイッチの機能は万全か?ブレーキランプは点灯するか?などなどのすべてが、点検項目である。
この実践モデルの場合は、テールランプとメーター照明が時々点灯しないことがあった。色々と探ってみたところ、メーター照明の不具合は配線コードがメーターカバーに挟まって締め付けられ、その部分でコードが切れ掛かっていたのが原因だった。テールランプは、走行距離が5万キロオーバーということもあって、バルブ接点が振動で磨耗。それが原因で、接触不良を起こしていた。テールランプレンズを手のひらで「ポン!!」と叩くと点灯するので、バルブを外してみたら接点が磨り減って接触不良を起こしていた。
各機能の作動確認後に分解クリーニングを開始するが、復元時に間違えて配線接続しないように、携帯電話のカメラ機能やデジカメで撮影しておくのが良いだろう。電気が苦手なサンメカは多いが、ヘッドライトケース内の各接続部、サイドカバー内の各種電装部品の繋ぎ込み状況、ガソリンタンク下にある電装部品の接続状況などなど、細かい部分を撮影しておくことで、復元作業を楽に進めることができるようになる。
分解した各種電装部品と各種ハーネスは、汚れ落としをしっかり行なおう。機能部品はマイペット+不要なハブラシで汚れを落とし、劣化でカチカチに硬化したメインハーネスなどは、保護チューブをハサミで切開して内部のコードを露出させた状態で汚れ落としを行なおう。テープを巻き付けた部分は、何回かに分けて剥がしながら汚れを落とし、新品ハーネステープで復元するのが良い。新しいビニール製保護チューブにハーネスを通す際には、カプラから端子を拭き取る、もしくは、コードを切断してチューブに通すことになるが、カプラとコード色の位置関係を写メモしておくことで、復元作業が楽になる。順序良く確実に作業進行しよう。
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