
「あれぇこのボルトちょっと固いかナ……?」なんて思いながらぐんぐんトルクをかけていくと、突然ふにゃっとあっけなく手ごたえがなくなるあの瞬間。
やっちまった……という感じは立ちごけにも似ています(個人の感想)。ボルトのアタマがなめてしまった経験、誰もが一度は苦い思いをしているはず。
長年いじっていないボルトや錆びボルト、ありあわせの工具のせいなどと、ボルトがなめる原因はさまざま。「オイルを染ませておけばよかったんだよ!」「そんなに錆びさせるからだよ?」「工具のサイズが合ってないよ……」「なめる前の対策が大切だ!」……ってそんなお説教、やっちまった後には聞きたくないですよね。でも、なめたボルトを摘出する方法もたくさんあります。そのための特殊工具もいろいろ! けして絶望してしまう必要はないんです。その代表が特殊なギザギザの歯を持つプライヤー「ネジザウルス」。ボルトのサイズにもよりますが、たいていのボルトはこいつで対処可能。
ところが、それはあくまで「ボルトのアタマが飛び出している場合」のこと。フラットな皿ネジなど、つかみどころのないボルトにネジザウルスは使えません。最悪のパターンは深い穴の奥のボルトをなめてしまった場合で、プライヤータイプの工具ではにっちもさっちも行きません。しかもDIYの家具なんかならともかく、バイクパーツだとけっこうそういった「穴の中のボルト」って多いんですよね。どうしようもなくなり、泣く泣くバイク屋さんへ……というのは悲しいオチのひとつ。
今回紹介する「MOTO HACK」では、そんな穴の奥のボルト「ブレーキキャリパーのパッドピン」がなめてしまった「こばんさん」の作業を紹介します。ブレーキキャリパーって汚れがちなこともあり、なめやすいパーツです。「こばんさん」も穴の奥の六角ボルトを完全になめてしまい、万事窮す……というところで、登場したのは「ネジモグラ」という聞きなれない工具。これは名前の雰囲気からだいたい想像つきますが、「ネジザウルス」を製造するエンジニア製、「六角ボルト専用のドライバービット」なのです。
その構造はシンプルで、逆ネジを切ってあるビットをボルトに食い込ませて緩ませるというもの。メカニックが使用する逆ネジドリル「エキストラクター」にも似た工具なのですが、その特徴はあくまで手の力を使うというところ。ドリルでボルトを破壊したりエキストラクターを打ち込もうとした場合、ドリルが貫通してネジ山を破壊したり、エキストラクター自体が折れてしまったり(特殊鋼なので、これが折れると本当にお手上げ)と、素人にはなかなか困難な作業になるのですが、「ネジモグラ」ならそういった心配はまったくありません。
いざ「やっちまった」となった時の転ばぬ先の杖として、ひとつ工具箱に忍ばせておくと安心な工具ですね!
舐めたパッドピン救出
2022年10月06日 こばんさんの整備日記より
作業工程1
フロントブレ―パッドを交換しようとして完全にパッドピンの頭をなめた。
無駄な抵抗・試行錯誤の結果、穴が大きく広がり、もう六角レンチでは回らない。
取り返しがつかなくなる前に次の手を考える。
作業工程2
「ネジモグラ」5mmを投入。
先が逆タップで、緩め方向に回せば「ネジモグラ」がボルトの中に潜っていく仕組みである。
写真の専用ハンドルは役に立たず、長めのモンキーレンチでトルクをかけて回した。
作業工程3
何とか救出。
新旧パッドピン比較。
作業自体は10分。無駄な試行錯誤と考える時間を合わせると約1時間。

こちらが気になるその構造。ドリルとは違う大きな逆ネジ構造で、六角ボルトに食い込ませて回すという仕組みです。手動で行う作業なので、ガッチリ固着には使えない可能性に注意!(画像:エンジニアより)
今回の「MotoHack」では「こばんさん」の「舐めたパッドピン救出」を紹介しました。レポートをありがとうございます!
これからもこのコーナーでは、Webikeユーザーの皆さんの、ちょっと便利なアイデアやグッズをどんどん紹介していきます。次回もお楽しみに!
この記事にいいねする
この工具のキモは先端なんだから、先端の画像載せろよ。