「良い空気」「良い圧縮」「良い火花」は、エンジンにとって重要な3大要素と言われています。このうち良い火花を受け持つのが点火系統です。ここでは絶版車の定番メンテ項目であるポイント調整は難しいのか?調整によって得られるメリットとは?について説明します。

フルトラやCDIと違ってポイント点火はメンテナンスが必須

コンタクトブレーカーの取り付け位置はクランクシャフト端部が多く、4ストローク車ではカムシャフトに付くこともある。カワサキZ1/Z2シリーズやホンダCB750 フォアなどアフターマーケット製無接点点火システムが販売されている人気絶版車もあるが、マイナーな小排気量車はアップデート化の手段はほぼないので、純正部品でメンテナンスするしかない。

ヤマハが1960年代に発売したAT90、HS1などリトルツインと呼ばれるモデルはクランクシャフト端のローターの外側にステーターコイルが付き、コンタクトブレーカーはローターの外部に露出している。180度クランクのため2個あるコンタクトブレーカーは1個のカムで開閉する。ポイントカムの上にフェルトがあり、定期的(AT90の場合5000kmごと)にグリスを染み込ませて潤滑を保つ。

ポイント開閉時に発生する火花で接点が荒れている時は、#400~600のサンドペーパーを挟んでポイントを閉じ、静かに引き抜いて表面をならす。接点が平行に閉じなくなることがあるので、ヤスリなどで片面ずつを擦らないように。

今ではすべてのバイクが無接点の点火装置を装備していますが、昔は機械的な接点を使ったポイント点火しかありませんでした。昔は当たり前だったポイント点火がフルトランジスタ点火やCDI点火といった無接点式に変化したとも言えます。その理由は主にメンテナンス性と性能向上の2点から説明できます。

メンテナンス性については、ポイント点火の作動原理が機械式であり、経年変化による摩耗や消耗が避けられないことが無接点化に移行した大きな理由として挙げられます。4ストエンジンのカムシャフトと同様に、コンタクトブレーカーのポイントはクランクシャフト(またはカムシャフト)の回転に合わせて開閉することでスパークプラグに火花を飛ばします。

そのためポイントを開閉するカムとポイントのヒールは物理的に接触した状態で作動します。エンジンのカムシャフトはシリンダーヘッド内のエンジンオイルで潤滑されますが、フライホイールと一体化したカムで開閉されるポイントヒールはクランクケースの外にあるため、両者の接触部分を潤滑する手段がありません。「ない」というと語弊があり、実際には回転するカムに接触しながら油分を供給するフェルト材が併設されていますが、その油分が枯れてしまえば潤滑要素はなくなります。耐摩耗性に優れたベークライト材を使用しているものの、金属製のカムと擦れ続けることでヒールは摩耗します。

ポイント接点も一次コイルの電流を断続する際の電気的な変化によって消耗します。それを平滑にするためにポイントにはコンデンサが併設されていますが、電流が流れ続けている方が安定するポイントを強制的に開いて流れを断ち切るので、相応のダメージが蓄積されます。これらの原因や症状から、コンタクトブレーカーは定期的なメンテナンスと交換が必要なのです。

性能面では、エンジンの高性能化や制御系の進化に対応できなくなったことが衰退の原因として挙げられます。高出力化のためにエンジンが高回転型になると、当然ながらクランクシャフトやカムシャフトも高速で回転します。クランクシャフトに取り付けられたフライホイールのカムで開閉するコンタクトブレーカーも短時間で開閉しなくてはなりませんが、高回転になるほど正確に追従できなくなり、点火状態が不安定になってしまいます。開いたポイントが閉じなければ一次電流が流れず、一次電流が不足すればポイントが開いた際にイグニッションコイルの一次側に流れる電流も小さく、その結果スパークプラグに火花を飛ばすための二次電流も小さくなり失火の原因となります。

そうしたデメリットを解消するのが、機械的な接点を使わずイグニッションコイルの一次側への電流の断続を行うトランジスタ点火でありCDI点火です。コンタクトブレーカーのような追従遅れや失火の原因を排除した上で、エンジン回転数によって点火時期を変化させる進角機能も電気的に行い、回転数に加えて負荷状況に応じて点火時期を変化させる個とも可能となりました。

新たに製造されるバイクや自動車の点火系統は無接点になり、プロメカニックを要請する教育課程でもポイント点火に触れることはないようですが、現存中の絶版車の中にはポイント点火車が一定数存在します。ですから、実際に作業するか否かは別としても、ポイント点火の絶版車オーナーは点火時期を調整する原理は知っておいても損はありません。

POINT

  • ポイント1・トランジスタ点火やCDI点火の普及により定期的なメンテナンスが必要なポイント点火の新規採用はなくなった
  • ポイント2・絶版車に採用されているポイント点火エンジンの好調さを保つには点火系統のメンテナンスが不可欠

エンジンごとに定められた点火時期に応じてポイントが開く瞬間を決める

プラグ穴に取り付けることで上死点や任意のピストン高さを設定できる、マイクロメーターのヘッド部分のような形状のゲージを使用して上死点を把握する。中心のスピンドルをフリー状態しにしてピストン上部に接触させて、上死点付近までピストンを上昇させる。上死点までは伸びたスピンドルはピストンが降下を始めると突き出し量が短くなるので、クランクシャフトを正回転と逆回転に細かく回しながら最も長く突き出す位置を確定し、シンブル部分の数字を0に合わせてから側面のネジを締め込んでスピンドルをロックする。

クランクシャフトを回してポイントが一番大きく開いた位置でシクネスゲージで隙間を測定する。規定値の0.3~0.35mm以外の場合はコンタクトブレーカー側接点のロックナットを緩めて隙間を調整する。隙間調整ができないタイプのコンタクトブレーカーの場合、点火時期の調整に合わせて隙間は自動的に決まってしまう。

クランクシャフトを逆回転させてからゲージのシンブルを回して、スピンドルを燃焼室内に1.8mm突き出させる。次に静かに上昇させたピストンがシンブルに当たれば、ピストンは上死点前1.8mmであると分かる。スピンドルのロックネジを締めていても、ピストンを勢いよく上昇させるとロックがずれたりピストンに傷が付くことがあるので、ピストン接触時の感覚を逃さないようクランクシャフトを慎重に回す。

クランクシャフト端部の赤い線が刻まれたワッシャーの向かいにあるタイミングプレートの固定穴は長穴で、一定範囲内のどこでも固定できてしまう。そこで上死点前1.8mmに合わせたクランクシャフト側の刻み線と一致する位置でビスを締め付けることで、上死点前1.8mmの目印が確定する。タイミングプレートが調整可能な機種の場合、ピストン基準で上死点を点火時期を決めて、そのクランク角度に合わせてタイミングプレートを固定する順序で基準を決める。

点火時期の瞬間に接点が開くよう、コンタクトブレーカーベースの固定ビスを緩めて調整する。ビスを緩めすぎると締め付ける際にブレーカーベースが動いてしまうので、緩め量は必要最小限にとどめておく。調整後はクランクシャフトを点火時期前後に回して、刻み線が一致する瞬間に接点が開くことを確認し、合っていないときは微調整を行う。コンタクトブレーカーが2個あるので、もう一方でも同じ作業を行う。点火時期が完璧に合っていると、キックペダルをゆっくり踏み降ろしてもエンジンは気持ちよく始動する。

ポイント点火車でも無接点点火車でも、ピストンが圧縮上死点に達するいくらか前にスパークプラグに火花を飛ばすのは同じです。ピストンと混合気の燃焼を考えると、ピストンが上死点を超えて下がり始めるタイミングで燃焼圧力が最大になれば、ピストンを勢いよく押し下げることができると想像できるでしょう。

一方で、スパークプラグが混合気に着火して燃焼圧力が最大に上昇するまでには一定の時間が必要です。エンジン内部での時間はクランクシャフトの角度に置き換えることができるので、燃焼時間をさかのぼると着火タイミングは上死点前になるというわけです。これが点火時期となります。

エンジン回転数が上昇すると、一定時間でクランクシャフトが回転する角度はより大きくなります。しかし混合気の燃焼速度がエンジン回転素に合わせて速くなることはありません。そこで着火するタイミングを早めることで、燃焼圧力が最大になるタイミングを合わせる点火進角を行うのです。

4ストロークエンジンの場合、ポイント点火時代は遠心力を利用したガバナーと呼ばれる装置で機械的に点火時期を変化させており、これはトランジスタ点火になったことで電気的に行われるようになっています。

対して2ストロークエンジンでは、新旧問わず多くの機種が点火時期は変化しない、変化しても幅は僅かとなっています。また4ストロークでも小排気量車を中心として点火時期固定の機種も多数存在します。ここで紹介するのは進角機能のない2ストロークエンジンです。

ポイント点火車の「良い火花」にとって最も重要なことは、適正な点火時期にポイント接点が開くことです。適正な点火時期はエンジンごとに異なりますが、画像のヤマハAT90 の場合はピストン上死点前1.8mmでポイントが開くのが適正な点火時期であるとサービスマニュアルに記載されています。

上死点前1.8mmのピストン位置を知るには、基準となる上死点を知ることが必要です。機種によってはフライホイール外周に上死点と点火時期を示す刻み線があり、これをクランクケース側の目印に合わせてポイントが開くタイミングを決められる機種もありますが、このバイクには上死点の合いマークがないので、ピストン位置を確認できるゲージをプラグ穴に取り付けて測定します。

上死点が確定したらクランクシャフトを逆回転させ、ゲージを燃焼室内に1.8mm突き出して固定し、クランクシャフトをゆっくり正回転させてピストンがゲージに触れた位置で止めてクランクシャフト端部とコンタクトブレーカーの刻み線を合わせます。これにより上死点前1.8mmが分かるようになったので、今度は刻み線が一致する位置でポイントが開くようコンタクトブレーカーの位置を調整します。

先の通りポイントは、カムとコンタクトブレーカーのヒールが接触しながら開閉し、閉じたポイントが開く際の変化はほんの僅かなので、正確に開き始めを把握するには点火時期付近でフライホイールやクランクシャフトを正転、逆転させてポイントがほんの僅かだけ動く位置を把握することが重要です。

タイミングライトがあればエンジンを稼働した状態で点火時期を確認できるため、調整後の答え合わせが可能です。タイミングライトがなければ小さな電球の明暗の変化でポイントが開くタイミングを知ることができます。この方法はまた別の記事で紹介しますが、簡単に説明するとメインハーネスから引き抜いたポイントのリード線にバッテリーと電球を接続し、もう一方をクランクケースにアースした状態でフライホイールをゆっくり回し、電球が僅かに暗くなった時がポイントが開いたタイミングになるというものです。

ポイント点火車の場合、仕組みを理解せずコンタクトブレーカーを動かしてしまい、何だか分からないがエンジンが掛からなくなってしまった、というパターンが少なくないようです。メンテナンスやコンタクトブレーカー交換を行った時は、注意深く点火時期を確認し、コンタクトブレーカーを慎重に調整することが重要であると覚えておきましょう。

POINT

  • ポイント1・ポイント接点が開くことでスパークプラグに火花を飛ばすポイント点火車は点火時期調整がきわめて重要
  • ポイント2・2ストローク車の場合は上死点到達前のピストン位置で点火時期を決める場合が多い

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