どんなメンテナンス実践でも、必要不可欠と言えるのが各種工具類。車載工具だけで、何とかなるものですか!?といった質問が時折ある。車載工具はあくまで応急処置的な工具であって、メンテナンスの心得を知る者なら「車載工具で修理しよう!!」なんて考えることはまず無いはずだ。ここでは、キャブレターのメンテナンス時、修理や分解洗浄作業時に、手元にあるとスムーズに作業進行できる「使える各種工具&道具」に注目しよう。

キャブメンテ専用の使いやすさ




ドライバーにも様々なタイプがあるのはご存じの通り。一般的には1番、2番、3番と大きさに準じたサイズがあり、例えば、3番サイズの+(プラス)ドライバーと言えば、旧車のクランクケースカバーやクラッチカバーを締め付ける鍋小ネジ=パンスクリューサイズと覚えておこう。つまり、現実的にバイクメンテナンスで使うサイズとしては「最大サイズの+ドライバー」と知っておこう。ちなみに、同じ3番の+ドライバーでも、メーカーによって溝へのタッチ感が異なるため、ベテランサンメカになると「この場所はこれ」「こちらはこれ」と言うように、必ずしもメーカーの統一にこだわらないメカニックが多い。ここで利用しているのは、自動車&バイク用工具をメインに取り扱うストレートの商品。このキャブレター用ドライバーは、キャブの分解組み立て用として開発されている商品。太さ違いの2種類のマイナスドライバーを背中合わせにした抜き差し式。軸の太さ設定もさることながら、マイナス軸の先端がテーパーではなく平行になっていて、各種ジェット溝をナメにくく、チカラを伝えやすい形状設計となっている。さらに奥深い部分に締め付けられているジェットへのアクセスを良くし、脱着が容易に行うことができるストレート軸設定になっているのが実に嬉しい専用ドライバーである。

ガソリンタンクではなく通称「点滴」




キャブメンテナンス時には、最終的にガソリンを流し入れてオーバーフローや漏れ滲みの確認を行う。そんな際には、専用の通称「点滴タンク」を利用するのが良い。単気筒でも4連キャブでも、エンジン側マニホールドに装着してから点検開始するのではなく、組み立て完成したキャブAssy単体にガソリンを流し入れて、各種点検作業を実践するのが正しいやり方だ。特に、4連キャブは、車体に組み込むだけでひと苦だ。組み込み後、ようやくガソリンを流し入れたら、ポタポタッと………。そんな状況にならないために、組み立て前にガソリンを流し入れて、しっかり点検しておくことが「急がば回れ!!」になるのだ。また、フレッシュなガソリンかつタンク内部がよく見えるので、ゴミの有無を確実に管理することができる。「オーバーフローが止まらない……」といったトラブルの多くに、実は、ガソリンタンク内部の汚れやサビの発生がある。不純物がフロートバルブに引っ掛かってオーバーフローの原因になっている可能性が、実は多いのだ。タンク内部のコンディション、大丈夫ですか!?

極小ピックツールの威力には感動




各種スクリューを取り外して通路内部をエアーブローした瞬間に、スクリュー穴の奥から「黒い部品が飛び出して……」といった経験を持つサンメカは数多いはずだ。スクリューの奥や取り外した部品の締め付け座面にガスケットが貼りついて残留していて、圧縮エアーを吹き付けたとたんに剥がれてふっ飛ばし……といったケースが多いのだ。そんなことになる前に、ネジ穴の奥底に貼りついているOリングやガスケットを取り出すための専用工具が、この極小ピックアップツールだ。工具ショップのストレートが独自に開発製造している商品でもある。

「突っつき過ぎ=失敗のもと」








しばらく不動車だったバイクの多くは、キャブ内通路が劣化したガソリンで汚れ、通路が詰まっていることが圧倒的に多い。そんな通路の詰まりや各種ジェット類の詰まりは、ケミカルで溶かして通気させなくてはいけない。しかし、汚れが酷いと、なかなか通気してくれないことが多いのだ。そんなときに便利なのが、ジェットリーマと呼ばれる孔ほじり用のツール。しかし、間違えてはいけないのが、このリーマの使い方だ。特に、燃料流量を管理する各種ジェットの孔(番手孔)や、ブリード孔(メイン通路に対して横向きの孔)にリーマを差し込み「ホジホジし過ぎて」しまうのが良くない。あくまで通気目的にリーマを利用しよう。つまり、必要最小限の通気にとどめ、その後は、洗浄ケミカルで汚れを溶解分解洗浄するのが正しい作業手順だ。通路をホジりすぎたことが原因で「ノーマルのジェット番手なのにガスが濃い」といった症状になる。こうなると何が基準になるのか、わからなくなってしまうのだ。明らかにヘンだ!?と気が付いた時には、そのジェットは使わないことである。また、洗浄時にあると便利なのが、先端ノズルを交換することができるエアーガンである。極細ノズルがあるだけで、キャブメンテナンスの作業性が驚くほど良くなることに気が付くはずだ。

スクリューの微調整で威力発揮






キャブセッティングの段階では各種スクリューを回して調整作業を行うが、キャブ側面に締め付けられているスクリューは、通常のドライバーや前出のキャブ用ドライバーで容易に調整することができる。しかし、キャブ底面のエンジン側に締め付けられているパイロットスクリュー(ガソリンとエアーが混ざった混合気の流量を調整するスクリュー)の場合は、通常のドライバーはもちろん、全長が短いスタッビドライバーでもアクセスできないことが多い。そんな場面であると便利なのがアングルドライバーと呼ばれる特殊工具である。ストレートのセットは、ベベルギヤを採用し、ドライブ角度を90度変換するタイプ。キャブメンテナンスに限らず、この工具があることで作業効率が良くなる場面は、以前に何度も経験したことがある。

静的油面と動的油面の違い




キャブメンテナンス時のキモになるのがフロートレベルの調整。フロートレベルが高ければ「オーバーフローの原因」になり、逆に低いと、スロットル開け始めで、ポーッと息つきしてしまう「ガス欠症状」に陥ってしまう。

そんなことが起こらないために調整するのがフロート高さ=フロートレベルの調整。基本になるのが静的な調整だ。キャブボディの下面、フロートチャンバーのガスケット面周囲にリブがある場合は、メインジェットの延長上にあるリブ端面から、フロート下面までの高さをデータ通りに調整する。フロートバルブのスプリングが縮んでいない (突っ張っている) 状況で、設定値通りにフロート端面が軽く当たるように、フロートバルブを押し込むベロ(舌)部分を曲げて調整する。

余談になるが、調整ベロに当たったバルブニードル先端の摩耗痕や打痕が引っ掛かり、フロートが作動できないことがある。それがオーバーフローの原因という実例が数多いので、キャブを分解した際には、フロートのベロ部分のコンディションを確認し、必要に応じて切削&磨き込みするのが良いだろう。真鍮製の中空フロートは、腐食やパンクが発生するとガソリンが入り込み、調整不能になるため、取り外したときには耳元でフロートを振り、ピチャピチャ音がしないことを確認しよう。

撮影協力:ストレート 

POINT

  • ポイント1・「専用工具」と呼ばれる意味がそこにはある 
  • ポイント2・無理せず部品本体にダメージを与えないのが成功の秘訣
  • ポイント3・「たまに使うからこそ必要」と思うのがサンデーメカニック

確実にメンテナンスしたい、そんな実践時に必要不可欠なのが各種工具類。同じ役割のオープンエンドレンチ(一般的にスパナと呼ばれることが多い)でも、車載工具のそれと、一般販売されている工具メーカー製工具とでは、大きな違いがあるのはご存じの通り。車載工具はあくまで「出先でトラブったときの応急処置用」と考えるべきだろう。

精度が高く、使いやすい工具が手元にあればすべて大丈夫、というものではなく、要所要所には「専用工具」とか「特殊工具」と呼ばれる工具や道具を使いたいものだ。例えば、前後サスペンションから前後ホイールを取り外すのは一般的な工具で実践できる。しかし、その先の部品分解、一例としては、ベアリングを取り外すためには「ベアリングプーラー」が必要になる。様々な太さのアクスルシャフト径に対応するためには「ベアリングプーラーセット」も必要だろう。例えば、原付クラスなら内径Φ12mmやΦ15mm。中型~大型クラスなら、Φ17/20/25mmなどなどのベアリング内径に対応できる先端ツールが必要になる。ベテランサンメカなら、間違いなくベアリングプーラーセットを所有しているはずだ。

如何にも特殊な部品のひとつにキャブレターがある。21世紀に入ってから以降に登場したモデルの多くには、FI=フューエルインジェクションシステムが搭載されているが、サンデーメカニックにとっては、まだまだこの先、何年もお付き合いすることになるのがキャブレターだろう。ここでは、そんなキャブメンテナンス時にあると便利、というか、間違いなく「使っておきたい特殊工具や道具」をご覧いただこう。メンテナンス中のボルトが緩まずナメかけてしまったり、スクリューの溝をナメてしまったなどなど、メンテ中に失敗してしまうことがある。そんな不測の事態に見舞われないためにも、様々な場面で所有しているだけで、「転ばぬ先の杖」として心強い味方になるのが特殊工具でもある。

そんなメンテナンス時の注意点として覚えておきたいのが「絶対に無理をしない」ことだろう。スロットルバルブが抜けないから、マイナスドライバーを使ってベンチュリ側からこじって(テコの原理で)、スロットルバルブを無理やり抜き取るなどはもってのほかだ、そんな分解作業時には、工業用ハンディヒーターなどを利用して、分解前のキャブボディを温めてから作業進行することを肝に銘じよう。

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