
みんな大好き倒立フォーク。
高剛性なのでフロント周りの感触が良くなる垂涎の装備。
モデルチェンジしたら倒立フォークになって悔しい思いをした方も多いでしょう。
そんな倒立フォークですが、その性能と引き換え注意しなければならないのがオーバーホール頻度です。
かなりテキトーに扱っても長期間それなりに機能してくれる正立フォークに対して、倒立フォークでテキトーな扱いをするとフォーク本体に大ダメージが発生してしまうのです。
倒立フォークの構造上避けて通れない宿命について、わかりやすく解説します。
目次
逆さまなのでオイルシールが痛みやすい?
そんな事ないです。
倒立フォークは本体の上にオイルが入っていて、常にオイルの重みが乗っているし、常にオイルに触れているので正立フォークよりオイルシールが痛みやすい(漏れやすい)という話を聞いた事はありませんか?
私はあります、と言うより最初に入ったバイク屋さんにそう教わりました。
当時は「なるほどなー」と思っていましたが、そんなの真っ赤なウソ。
オイルシールが傷んでオイル漏れするようになった際、正立フォークは動かさなければ漏れて来ないのに対して、倒立フォークは拭いても拭いても漏れ続けてくる事からそんな気がしたのでしょう。
逆さまだからオイルシールが痛みやすいなんて事はありません。
倒立で漏れる状況なら正立でも漏れます。

倒立フォークだからオイルが漏れやすいなんて事は無いです。しかし倒立フォークはオイルが漏れ始めると延々と漏れ続けるので悲惨な見た目になって印象に残りやすいのかもしれません。
タイヤの横にオイルシールがあるのでオイルシールが痛みやすい?
そんな事ないです。
正立フォークはタイヤどころかフロントフェンダーより上の位置にオイルシールが位置しているのに対して、倒立フォークはもっと下側なので雨の日に水溜まりを通過するとタイヤで押し退けた水が直撃するように見えるし、いかにも傷みやすそうに見えます。
でも、水溜まりを通過して水が左右に割れながら飛び散ったとしても、オイルシールに当たるほど急角度で上に上がったりはしません。
どの車種もおおよそ45°で水を跳ね上げるので、泥水が直撃するのはオイルシールではなくライダーのブーツです。
タイヤの跳ね上げる水はオイルシールを直撃しないし、オイルシールが痛みやすいなんて事はありません。

水溜まりを通過しても泥水がオイルシールを直撃しない事はこの写真を見れば想像できるはず。もっとゆっくり走ったとしても、もっと水溜まりが深かったとしても、ほぼ接地面の真上にあるオイルシールになんか当たりません。
タイヤから飛んで来る小石でインナーチューブにキズが入りやすい?
そんな事ないです。
倒立フォークは高速回転するタイヤやブレーキディスクの横にインナーチューブ位置しており、いかにも傷みやすそうに見えます。
しかし、タイヤが巻き上げた小石や砂は遠心力でタイヤの円周方向にふっ飛んで行くはずです。
その証拠はフェンダーの裏を見れば一目瞭然で、キズはフェンダーの中央付近に集中しているはず。
タイヤの「横」になんてほぼ飛んできません。
倒立だからインナーチューブが痛みやすいなんて事はありません。

タイヤから飛び散る物は外周のセンター付近から遠心力で飛んで行くので、タイヤの横にあるインナーチューブやオイルシールにはほぼ影響しません。フェンダーの裏側はセンター付近がすぐにガビガビになりますがフロントフォークの内側はガビガビになりませんよね?
実は正立フォークの方が痛みやすい部分も多い
倒立フォークはオイルシールやダストシールが下向きなので内部に水が溜まる事は稀です。
しかし、正立フォークはダストシールの隙間から入った水が抜けないので、内部が真っ赤にサビている事がよくあります。
ダストシールが劣化してヒビ割れているような車両であれば、室内保管でもない限り内部はサビサビのはず。
逆に倒立フォークでは湿気でサビている程度で、クリップがサビに埋もれているほどサビている事は滅多にありません。
また、正立フォークは正面から見るとインナーチューブが丸見えなので、前方から飛来する小石などは全部直撃してしまいます。
インナーチューブの表面はハードクロームメッキが施されているので簡単にはキズが入りませんが、長期間乗っていると明らかに何かが衝突した痕跡(小さなキズ)が入ってきて、手で触るとポツポツとした引っ掛かりを感じるようになるはずです。
幸い正立フォークはインナーチューブを回転する事が可能なので、定期的に90°回転させる事でキズの入る位置を変える事ができます。(倒立フォークはできません)
飛び石が気になる方はたまに回しておくと寿命を伸ばす事ができます。(スライドメタルが強く当たる部分の均一化も図れるのでオススメです)

正立フォークは前方から飛来する小石などが直撃するので、長年乗っていると細かいキズが入り、そこから点サビに発展しがちです。

正立フォークのダストシールを通過した雨水もオイルシールまでは通過できない事が多く、このように内部に溜まってしまいがちです。見えない部分なので気付いた時にはクリップが埋もれて見えなくなるほどサビている事も……。
では倒立の方が傷みやすい部分とは??
やっと本題です。
実は倒立フォークは普段目に見えない部分が痛みやすいのです。
もっと具体的にはフォーク内部のスライドメタルと、スライドメタルと摺動接触するインナーチューブが痛みやすいです。
なぜ倒立フォークだと内部が痛みやすいのか?
構造上仕方ないのです……。
まず、フロントフォークは正立も倒立も『伸び縮みする棒』なので、容易に擦り減らないように内部のダンパーオイルで接触部分が潤滑されています。
しかし、伸び縮みする棒は常に車体を支えているうえ、ブレーキング中は物凄い力で曲げようとされるので、潤滑されていても多少は擦り減ってしまいます。
フォーク本体が擦り減ると困るので「スライドメタル」という擦れる事を受け持つ部品が内部に存在するのですが、この部品の表面コーティングやダンパー内壁の削れた粉がダンパーオイル内に混じってしまいます。
オイル交換のために抜いたオイルが黒くなっていたりギラギラと金属粉が混じっている感じがするのは、削れた粉が混入するのが原因です。
削れた粉は乗っていない間にオイルの底に沈殿します。
ここまでは倒立フォークも正立フォークも同じですが、問題はその「底」がどの位置にあるかという事。
正立フォークであればボトムケースの底、フロントフォークの一番下の位置に堆積します。
分解すると一番底の部分に真っ黒なヘドロ状になった粉の残骸が溜まっているのは良くある光景です。
では倒立フォークの場合は??
倒立フォークでも一番下にあるボトムケースの部分にオイルは入っているので、正立と同様にヘドロ状の粉が堆積します。
それと同時にアウターチューブの一番底にあたる部分、ちょうどオイルシールがある部分にも堆積してしまうのです。
なぜなら、その場所もオイルの入っている容器の底に相当する場所だから。
堆積したヘドロ状の粉は研磨剤と同じ役目を果たしてしまい、オイルシールやスライドメタルと接触するインナーチューブの表面やアウターチューブの内側を削ってしまいます。
正立フォークの場合はどこにも接触しない部分に溜まるので大問題にはならないのですが、倒立フォークはそうは行かないのです。

正立と倒立のフォーク断面図
正立フォークであれば削れた粉はほぼ影響のない一番底に沈殿するだけで済みますが、倒立フォークではオイルシールの上にも沈殿してしまいます。そしてその場所は摺動時に最も力の掛かる最悪の場所です。
削ると言っても明らかにキズが入ったりはしない
オイルシールと接触するインナーチューブの隙間に積もった粉が研磨剤と同じ役目を果たしますが、インナーチューブの表面はハードクロームメッキなので非常に硬く、容易にキズが入ったりはしません。
堆積した粉は非常に粒子の細かい粉なので、いきなり「ガリッ」と縦キズが入るような物ではないです。
しかし、フォークが動く度に少しづつ削れているのは事実。

目視できたり爪が引っ掛かったりする「大きくて深い縦キズ」が入るわけではありません。
コーティングしてあるインナーチューブは大ピンチ
高級な倒立フォークではインナーチューブ表面に特別なコーティングが施されている事があります。
金色に輝くチタンコーティング(チタンナイトライド)が有名ですね。
このコーティングですが、通常の硬質クロームメッキ層の上に追加でコーティングされている事もあり、非常に薄いものです。
もともと低摩擦係数狙いのためのコーティングなので滑りが良く、滅多な事でコーティングが摩耗したりはしないのですが……、
なにしろ元が薄いコーティングなので、ちょっと削れると薄いコーティングがさらに薄くなってしまうのです。
コーティングが無くなるほど薄くなってもフォークにガタが出たりする事はありませんが……、何と!コーティングの色が薄くなってしまいます!
せっかく美しい金色のインナーチューブだったのに、走行中によくオイルシールと接触している部分範囲(インナーチューブの見えている部分の上側あたり)が単なるクロームメッキの銀色に戻っていく……そんな減り方をします。
コーティングの性能が無くなって普通のフォークと同じになるのも悲しいし、オイルシール付近が単なる銀色に戻ったフォークは見た目がとても残念な事になります。
せっかくの高価で高性能なフォークが台無し。

コーティングの無い普通のハードクロームメッキのインナーチューブでも、摺動部分の表面が僅かに削れてピカピカになってしまう(摺動抵抗が増して動きが悪くなる)速度が早まります。
小まめなメンテナンスが大事
残念な事態にならないためには、粉が堆積する前にフロントフォークをオーバーホールする事で回避できます。
その際、フォークオイル交換だけではオイル内に浮遊している粉しか交換できず、沈殿している「一番マズイもの」は抜けきれません。
ヘドロ状に堆積しているのでオイル交換程度では全然洗い流されないのです。
なので、分解して内部を綺麗に洗い流すのが倒立フォークを長持ちさせる秘訣!
小まめに分解整備して堆積した粉(スラッジと言います)を取り除くようにしましょう!
正直なところ、フロントフォークのメンテナンスは「する人」と「しない人」の差が物凄く激しい整備項目だと思います。
「しない人」は車両を購入してから1度もオーバーホールしていない事も多々あるのでは?。
「する人」はサービスマニュアルに記載されている走行距離ごとに(何も問題が起こっていなくても)整備していると思います。
しかし「倒立フォークだから分解整備を更に頻繁にしよう」と思っている方は非常に稀でしょう。
サービスマニュアルに記載されている走行距離ごとに指定された整備を行えば性能に問題は発生しません。
ですが、私はもっと早い期間での分解整備をおすすめしたいです。
インナーチューブのコーティングが薄くなった場合、メーカーでは「インナーチューブAssy交換」という指示になるはずです。
それはそうなのですが、こちらとしては高価なインナーチューブAssy交換はできるだけしたくないので、できるだけコーティングが減る要素を排除したいところ。
オイルシールやスライドメタルは比較的簡単に交換可能で部品代も作業工賃も安めですが、インナーチューブ交換となると部品は高価だし交換工賃もめちゃくちゃかかるし大変です。
なので、高価な倒立フォークを使っている方は残念な事になる前に小まめなオーバーホールをオススメします。

フォークオイル交換時にオイルシールとダストシールとスライドメタルをセットで交換しておくのが吉。
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正立フォークの方がダストシールを通過する雨水と塵の影響でオイルシールが痛み易いというが、倒立フォークはダストシール上の堆積スラジでオイルシールのリップ接触面を「常時」削るので、「雨天走行しない、雨曝しにしない」条件下では倒立の方が漏れやすい(構造的に弱い)んじゃないの?
倒立フォークは、ブレーキダストをもろに被る位置に
インナーチューブがあることをスルーしてますよね。
ブレーキダストが付着しやすくても問題ないでしょう
だって乗ってればすぐ落ちるし、放置していれば正立でも倒立でも問題あるもん
とゆーか、今回の話はそこではなくて内部のスラッジが倒立だけ良くない位置に溜まるから問題だという話でしょ
メロンパンがおいしいって話をしてる時にクリームパンだっておいしいですよね?と言い出されてもねぇ
インナーチューブより後方にマウントされてるキャリパー内で発生したダストが走行風に逆らって前方に流れることってあるの?
ブレーキダストを気にするくらいなら正立フォークに高速で叩きつけられる空気中のゴミを気にしたほうがいいと思うし、そんなもんが深刻になるくらいならメーカーはフォークブーツ標準にしてるのでは。
バイクの歴史では、倒立フォークのほうが
長く採用されてきているはずです。
ですので、ある程度は、倒立の優位性が、
正立を上回っていると 感じます。
ですが、メンテナンス等においては、正立のほうが、楽に出来るので、70年代以降、正立を採用
することが、多くなってきたと思われます。
(ガブ等、低価格で 剛性を 確保しなければならないバイク等、ほとんどは、倒立からスタートしています。)ちなみに、私は、完全に、見た目
だけで、倒立フォーク採用のバイクを 購入条件
に、していますけどね。
倒立フロントフォークは、正立に対して、地上からの高さや様々なダストがふちゃくしやすいので、どうしてもインナーチューブは錆びやすくなりますよね。
自分のXR250は倒立ですが10年以上整備したことがないですが、清掃はこまめにしているので、サビはなく、オイル漏れもないです。
メンテナンスというか、こまめな清掃と防錆対策が大切かなと
こんな記事載せて
フォークオイル購入紹介ボタンがあるって。
webikeは信用して買えない。
拗らせすぎ
カブにテレスコピック式が採用されたのはいつ頃からですか?
ボトムリンクのレバー式かと思ってました。
70年代以前の倒立フォークも減衰にオイルを使ってるんですかね?
教えて偉いひと。
喧嘩はやめて
正立・倒立ともにダストシールがヒビ割れてて泥や水がオイルシールまで入ってしまうことによるダメージの方が多いと思う