
「こんな部品があれば……」「こんな部品が欲しい!!」との欲求から始まるのがカスタマイズの世界。市販パーツがあるのなら良いが、自分のカスタム構想に則したパーツが存在しないことは少なくない。オンリーワンのカスタマイズを目指しているマニアックなファンがいるなかで、ときには必要に迫られて作らなくてはいけないケースもある。ここでは、ホンダシャリィ用FRP製フレームカバーを自作した様子【後編】リポート。
目次
フレームと合体!!形状を合わせよう
車体フレームの上に載せ、完成時をイメージしながらトリミングした。カット&形状合わせをする際には、モデルとなったベース部品ではなく、脱型した製品と取り付ける部分の形状合わせが大切だ。最終的にはペイント仕上げとなるため、FRP張り込み時に発生した小さなピンホールや欠落部分や凸凹部分の面出し作業を進行する。凹部分はポリパテで埋め、乾いては磨きを繰り返し、段差が無くなるまで仕上げていこう。
仕上げ前のプラサフ段取り
ペイントの下地となるプライマーサフェーサー仕上げまでマキシさんにお願いした。最終的な半艶ブラックのペイントはマシンオーナーが担当。いい感じの下地まで仕上げられたので、黒色の仕上げペイントも楽だった。
ABS樹脂板でブラケットも自作
単にカバーをフレームの上へ載せてボルトで締め付けるだけではカタカタしてしまう。純正カバーやマスターカバーと同じように、前方のフレーム部分に引っ掛ける突起を取り付けることにした。FRPとの相性が良いABS素材板から幅20mmくらいでピースを切り取り、カバー前方の段差部分に切り出した板を接着固定する。まずは形状作りから始めよう。ABS板は熱で簡単に曲がるのだ。ハイカロリーなハンディヒーターを使い素材板温めて曲げ加工を行なう。駐車場のカーポートに使われるポリカーボネート板やABS板は加熱によって気持ち良く曲がるのだ。火傷にはくれぐれも注意。木片を型代わり使い、温めて柔らかくなりつつあるABS板を押し付け、木片カーブと同じように曲げる。この曲げ部分を利用してフレームへの引っ掛けを作るのだ
完全固定前の仮固定で位置確認
最初からFRPでペタペタやって合体させることを考えず、まずは瞬間接着剤の応用テクニックでピースを仮固定する。ここではジェル状瞬間接着剤を利用した。大量に塗布しないで良い。固定したい部分にピースを押し付けるが、瞬間接着剤は条件が整わないと瞬間的に接着できないので、ここではピースを保持しつつ「瞬間接着剤凝固促進剤」をファ~っと吹き付け仮接着。この状態で念のためにフレームの上へ載せたが、位置的なズレも無くイイ感じに取り付けられそうだ。
タルク樹脂でブラケット根元を充填
FRP樹脂部品製作では充填剤となる含水珪酸マグネシウムの微粉末、通称「タルク」をFRP樹脂に混ぜて接着する。流動性があるポリ樹脂にタルクを混ぜて練っていくとパテのようになる。突起部品の周辺にタルク樹脂を塗りつけて外側を覆い込むように接着する。塗り過ぎると強度が逆に落ちるのであくまで適量にしておこう。模型専門店などで一般購入できる。割り箸を使ってパテのようなタルク樹脂を塗りつけ、ちょっと待つと表面が馴染んで盛り付け部分が平坦になっていく。これより補強開始。
仕上げ補強にはFRPクロスを利用
FRPクロス繊維の切れ端を準備し、タルクで覆った突起部分を補強していく。2~3プライも張り込めば、突起部分は本体と一体化され、接着部分から割れてしまうことが無いようだ。張り込むクロス繊維に小さな切り込みを入れ、突起部分を切り込み部分に通すようにガラス繊維を張り込んでいく。このように張り込むことで、接着強度はより一層高まっていくのだ。タルク樹脂が半乾きの状態になったら、通常のFRP張り込みと同様に、主剤100対硬化剤1の割合で混ぜたポリ樹脂をハケで塗布する。タルク層との境界部分にエア噛みしないように注意。これで張り込み完了。24時間以上放置し、完全硬化を待ってからフレームとの最終合わせ作業を行った。完全乾燥後ならヒーターでピースを温めることで突起角度を微調整できる。
リヤ寄り上面に固定ボルト用の穴を開け、ボルトで仮固定することでワンオフカバーの完成。恒久装着時には、カバー締め付け部分の裏にカラーを入れ、ガッチリとトルクを掛けて締め付けられるようにした。大満足の仕上がり!!イイ感じだ!!
- ポイント1・FRP関連の商品は模型店などで少量販売商品がある
- ポイント2・FRPと相性が良いABS素材板でブラケットを接着固定
ワンオフ製作中のFRP製フレームカバーは、ホンダのシャリィ(初期シリーズ)用に作っているものだ。多くのカスタム車がビッグキャブを取り付けた際に、キャブは露出し飛び出したまま、スロットルケーブルも飛び出したまま、などの取り付け方法としているが、それでは「シャリィらしさが無い!?」と考えた。また、実用の際に飛び出したキャブを蹴飛ばしてしまう(バイクに跨るときに)ことも少なくない。そんなトラブルを回避するためにワンオフを目指したのが、このFRP製フレームカバーである。
デザインベースとなったのはアフターパーツのシャリィAT用フレームカバー。そのパーツをベースに、エクステンションを取り付けてFRPのメス型を製作。そのメス型にFRPを張り込む作業を進めてきたが、結果はご覧の通り。最終的にはウレタン塗装(2液タイプのウレタン缶スプレーを利用)にて、半艶ブラック仕上げとしたが、あまりにもデザインに溶け込んでいるため、バイク仲間に気が付かれないことが多い。
ここでは、仕上げの工程をリポートするが、単に被せるだけのカバーではなく、突起フックを取り付けることで、しっかり固定できる満足の仕上がりを得られた。取り付けたABS素材板は、FRP樹脂との相性が良く比較的接着しやすいマテリアルだそう。また、ヒーターで温めれば簡単に曲げることができる素材であることも大きな特徴だろう。アクリル板のカットと同じように専用のPカッターで切り取ることができるので、材料片があれば樹脂部品の修理時(サイドカバー修理など)にも役立つはず。FRP工作やアクリル工作に強い模型専門店ならABS素材板も購入できる。
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