キャブレター仕様の変更によって、キャブボディとカバーが干渉してしまい、フレームカバーが装着できなくなってしまった。もしも 「カバー形状がもう少し高ければ……」と思ったので、FRP製フレームカバーのワンオフ製作にチャレンジしてみた。アイディアを具現化したときの充実度は、満点!!ここではその作業の前編をリポートしよう。

キャブ交換でカバーが閉じない……。






ホンダシャリィ純正キャブレターのままでは、エンジンチューンに対応した燃料供給ができない。だからビッグキャブを取り付けたくなるのだが、数多くのチャリィユーザーが、この段階で困ってしまう。フレーム形状の関係でキャブが大きく飛び出してしまうのだ。そこで考えたのが「そこそこサイズのビッグキャブでトルクフルな走りを実現しよう!!」というもの。そこで組み込んだのがカワサキKSR110用純正キャブレター改だった。このキャブやホンダエイプ100用純正キャブのボディサイズなら、後期型シャリィAT用のカスタムカバーをベースにFRPカバーをワンオフ製作すれば、部品同士の干渉を避けられそう!?という結論に達した。後期型カバーの前側を基準に、リヤ側を持ち上げた形状のフレームカバーをワンオフすれば、何とかなりそうだと判断!?モデルクリエイトマキシの板橋さんに相談してみた。

「カサアゲ」仕様のカバー製作








型取りに利用したのはATモデルなどの後期型シャリィのデザインを踏襲した初期シリーズのシャリィ用カスタム部品。このカスタムカバーをベースに、さらにエクステンションを取りつけ、それをモデル(元型)としてメス型を製作しようと考えた。カバーサイドに抜き穴があるため、この穴はアルミテープで閉じる。穴開き状態のままだと型作り用のFRPが硬化後に引っ掛かって脱型することができなくなってしまうのだ。延長=エクステンション部分はダンボール紙で作った。ここでは後方への延長と前側基準で後ろに向かって下側見切り線が序々に末広がりになっていく形状で作業を行った。ガムテープでエクステンションを製作したが、ダンボール紙のままだとFRP樹脂が染み込んで一体化してしまい型の表面が凸凹になってしまうのでアルミテープを貼ってポリ樹脂のしみ込みを防いだ。

離型処理後に型取り開始






FRP部品作りのハイライトは製品を張り込んで乾燥した後に脱型するシーンだろう。そんな脱型作業をスムーズかつキレイに行なうために離型ワックスで磨き込む。今回は白ゲルコート仕上げにするため、まずはゲルコート樹脂を型全体に塗りつけ、表面が乾くのを待って再度塗り込むといった作業を繰り返してゲルコート層をある程度厚くした。積層作業用として使う「パラフィン入りポリエステル樹脂」を使い、まずは乾いたゲルコート膜の上に樹脂をペタペタ塗りつけ、その上からガラスマット繊維を載せてポリ樹脂をさらに塗布し積層する。折り返し部分などはマット繊維を指先でほぐして柔らかくすると張り込みが楽になる。完全乾燥したらエアーガンのノズルを隙間に差し込んでエアブローしてみよう。果たしてどうなる?今回は丸1日乾燥待ちした。

一体型成型でも抜き取り可能ならOK!!


コンプレッサーの圧縮エアーを型と製品の間に吹き込んだ。ロングノズルのエアーガンを利用すると作業性は良い。ワックスが効いていると「カポッ、バリッ」といった音とともに脱型することができるが、今回は形エッジがある形状なので、簡単にカポッとは抜き取れなかった。しかし両手で引っ張り抜き取ることができた。追加延長したエクステンション部分の表面はさすがに製品部分とは違う。何個も製品作りをしなくてはいけない場合は、こんな型では使い物にならない。今回は1個だけの製品作りなので、応急処置を含めて何とかしよう。

製作型のFRP張り込み部分を離型処理




FRP樹脂を張り込んだ後の離型時に表面があれ気味のエクステンション部分は作業性が今ひとつ。そこでFRPを張り込む部分にアルミテープを貼り、離型しやすくなるように養生した。離型剤には様々な商品があるが、もっとも一般的かつ普及している離型ワックスを利用した。ワックス掛けはクルマやバイクのワックス掛けと同様に、塗布後に乾燥したら、しっかり拭き取り=磨き込むのが鉄則だ。

後々のペイントを考えて白ゲルコート仕様






製品作りの際の表面処理樹脂として知られるゲルコート。今回はペイントしやすいベース色となる白色ゲルコートを使った。比較的容易に購入できる。FRPのポリ樹脂やゲルコート樹脂は硬化剤を混ぜることで硬化する。ここでは、FRPに使う硬化剤と同じパーメックNという商品を利用。混ぜる比率はFRPもゲルコートも樹脂100対1硬化剤の割合だ。硬化剤を混ぜてしっかり攪拌した後のゲルコートをメス型に塗り込む。一箇所ばかりに集中せず、ハケで全体的に塗り込み、表面が馴染んできたら2層目を塗り込む。小型パーツなので手塗りで対応したが、大型カウルや自動車バンパーなどの大型部品はペイントガンで隅々まで吹き付け塗布するそうだ。

白ゲルは生乾きで張り込み可能










ゲルコート樹脂を塗布したら即刻張り込み作業に取り掛かるのではなく、ゲル表面がうっすら乾き始めてから作業進行しよう。ゲルコート膜を保持する意味でも、表面が乾燥するのを待とう。ここで使ったポリエステル樹脂は積層に適したパラフィン入り。最初にFRPマットを重ね張りし(2プライ)、仕上げにFRPクロスを1プライ張り込んだ。ポリ樹脂は紙コップ半分程度作った。コーナー部分や突起部分、凹部分には特に念入りにハケを押し付けて形状に追従させる。特に、樹脂が硬化し始める直前は形状追従しやすいので、そのタイミングでハケを丹念に押し付けると良いそうだ。パーツ上部の凸凹デザイン部分にはエアー噛みが発生しやすいので、ハケの先端で突くように凸凹部を押し付ける。樹脂を染み込ませる範囲は、パーツの見切り(カット線)を超えるようにしよう。ゲルコート塗りの開始からガラス繊維を張り込み終えるまで小一時間。作業開始前に、張り込むガラス繊維は寸法形状通りにカット段取りしておこう。R形状がキツイ部分はガラス繊維の細切れを先に張り込むのが良い。

圧縮エアーの併用で脱型は楽々!!





常温乾燥でほぼ丸1日経過。カチカチに乾燥しているのを確認しよう。離型ワックスの効果もあり、ロングノズルのエアガンを隙間に吹き込むことで「バリッ」といった快音と共に製品が抜け出た。しっかり塗り込んだつもりでも、ゲルコート層にはムラがあった。脱型した製品の見切り線よりも外側部分にマーキングを入れ、薄刃のディスクグラインダー(FRP用がベスト)でマーキング通りにカットする。いきなり仕上げようとすると大失敗になるので要注意!!ほぼ8割がた形状が決定したので、実際に車体に取り付けて微調整を行なう。シャリィのメインフレームはモナカ合わせなのでセンターにリブフランジがあり、その逃げが「前側の位置決め」となる。
撮影協力:モデルクリエイトマキシ

POINT

  • ポイント1・部品そのものをベースに改造部品を作ることもできる 
  • ポイント2・型取りするときには離型を考えてしっかりとワックス処理しよう
  • ポイント3・製品の抜き取りが難しいそうなときには分割型製作も視野に入れよう

一度でも体験したことがある者なら、FRP工作特有の面白さや充実感はご理解いただけると思う。しかし、作業手順を間違えて、あっと言う間にポリエステル樹脂が熱くなりながら硬化進行……、ガラス繊維でチクチク、カユカユ……。作業着を家族の洗濯物と一緒に洗濯機に放り込んでしまったことで、家族全員がチクチク、カユカユに!?なんて経験をすると、それはもうトラウマになってしまい「FRP工作はご勘弁を~」となってしまうこともある。とは言え、一度でもその素晴しさを知ってしまうと、機会があるときには是非とも楽しんでみたいと考えてしまうもの。

【前編】と【後編】の2回に分ける今回は【前編】。純正部品をベースに型取りまでを制作進行してみよう。具体的には、マスター型作り→メス型起こし→張り込み→製品作り→製品加工→完成までの流れをリポートするが、裏テーマとしてズバリ「なるべく簡単に!!」ということ。我々編集部のテクニカルアドバイザーであるモドルクリエイトマキシの板橋さんへお話しすると、「間違えないで欲しいのは、普段はここで紹介するようなやり方はしていません。かなり手抜きの作業手順ですが、サンメカが部品1個だけを作りたいという条件ならば、こんなやり方もありだと考えてください」。さらに「型作りの段階で如何にしっかり作るかが、製品の出来栄えを大きく左右するものです」と板橋さん。

いい加減な作りの型だと、その型通りの製品しか抜けないそう。抜いた=仕上がった製品は、出来る限り無加工で商品化されるのがベストであって、脱型後にパテ入れしたり研ぎを入れたりすりのは、もっての他だそう。そのような意味でも、マスター型を作る段階から後々のことを考え、可能な限り手抜きをしないで、しっかり作り込むことが大切なようだ。

例えば、マスター型が華奢な作りでグラグラ動いてしまうと、FRP繊維の張り込みをスムーズに行なえなくなってしまう。そんなときには関係無い部分(裏側など)に、補強を入れてマスター型をしっかりさせるのが良い。ここでは、アルミテープで穴埋め作業を行なっているが、アルミテープを貼ったことで段差が発生する部分には、油粘土を糸のように細くして、段差部分に押し当て、さらにヘラを使って段差をモールディングするような段取りを行なうのが良い仕上がりへの近道だそう。

離型ワックスを塗布するときにも、単にワックスを伸ばして塗布するだけではなく、クルマのワックス掛けと同様に、乾燥したら「乾いたらウエスでワックスをしっかり拭き取る」のが基本だ。このワックス掛け作業を3~4回繰り返すことで、ワックス層が厚くなり、脱型の際にスムーズに作業が進む=製品表面がきれいに仕上がる。いい加減なワックス掛けだと、ワックスを擦り込んだ際の模様が製品表面に反映されてしまうこともある。ウエスでしっかり拭き取らないと、間違い無くそうなってしまうはずだ。そのような細かな部分に「こだわり」を持ちながら、マスター作りにチャレンジしてみよう。

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