エキスパンションチャンバーの装着と排気ポート加工による仕様変更で、それまでとは違った加速力を身に着けることができたヤマハLB80ボビー。走りの変化に合わせ、二次減速比を変更したくなった。ここではギヤ比の変更と、以前からチェックしておきたかったオイルポンプのコンディションを点検してみることにしよう。

「吹け切りが早い!?」ならばギヤ比変更

モンキーやスーパーカブのエンジンチューニングでは当たり前の世界だが、パワフルになり、加速力が高まったエンジンはすぐに吹け切ってしまうことが多い。そんなときにはファイナルギヤ比を変更するのが良い。手っ取り早いのが、ドライブスプロケットの変更だ。ギヤ軸が同じスプラインサイズで、同じドライブチェーンサイズなら流用できる。ヤマハボビー用としてチューニングパーツなどもはや無いので、流用可能なドライブスプロケットを準備した。14Tと15Tを購入した。実走行でフィーリングが良いギヤ比を探り出すのも楽しい作業だ。

オイルポンプはモデルごとにタイプが違う



オイルポンプを正しく作動させるためには、スロットルケーブルの作動性にも気を配ろう。ポンプ側ケーブルが不良になると(タイコ抜けなど)、焼き付きの原因にもなるので要注意だ。スロットル全閉時にプーリー横に立っているパンスクリューのセンターとプーリー外周の突起先端が一致、もしくは突起のズレが下側に1mm以内になっているか確認するように指示されていた。

メーカーデータを参考にオイルポンプを調整

国内ボビィや同系列エンジンを搭載したチャピィ用サービスマニュアルが見つからなかったので、北米輸出仕様のボビィと言える「ヤマハチャンプ」のサービスマニュアルとオーナーズマニュアルを海外のネットオークションで購入した。英語のサービスマニュアルだが、日本人が作っているからなのか、たいへん理解しやすい。バイクいじり経験があって、メンテナンス用語を理解していれば、難しい英語ではないようだ。

ダイヤルゲージでストローク確認







ダイヤルゲージスタンドを用意して、ダイヤルゲージの先端をポンプ中心のプランジャピンに当てる。ゲージスタンドは先細のバイスグリップにプレートを溶接してアームを締め付けている自作品だ。ダイヤルゲージをセッテアップしたらエンジン始動。そして、アイドリング時のダイヤル振れ幅を目視確認する。このアイドリング時のプランジャ作動ストロークは0.20~0.25mm。作動量が少なければオイルの吐出量が少なく、作動量が大きいとオイル量過多だと判定できるので、違っているときにはロックナットを緩めてアジャストボルトで規定数値範囲に調整しよう。アイドリング時のプランジャ作動量を確認したら、アイドリング状態のままポンプケーブルを故意に手で引っ張り上げてポンプ全開にする。このときの作動量は0.75~0.90mmの範囲だ。

何事も無く走っていたとしても、時には現状コンディションを確認するために現状測定データを知っておくのも良い。メンテナンスが楽しくなるはずだ。

POINT

  • ポイント1・エンジンチューニングと二次減速比=ギヤ比変更はセットで考えよう 
  • ポイント2・分離給油の2ストモデルはオイルポンプのコンディションが生命線
  • ポイント3・メーカーデータを参考にオイルポンプを調整確認

2ストエンジンにとってオイルポンプは心臓のようなもの。60年代の中頃、日本のバイクメーカー各社は混合ガソリン仕様からオートルーブやジェットルブ、インジェクションルブにCCIなどなど、商標登録名こそ違えど、分離給油を自動化しているといった意味では、同じ役割を果たしている。燃料給油時にエンジンオイルの混合を忘れたり、混合比を間違えたりするなどのトラブルが減り、自動給油装置付きになってからの2ストエンジンは、焼き付きトラブルがかなり減ったそうだ。

そんな「高性能オイルポンプ」でも、調整を間違ったり、ポンプケーブルが切れていたり、ケーブルエンドのタイコが抜けてしまうなどのトラブルが発生すると、あのイヤな「ダキツキ」や「焼き付き」トラブルに遭遇してしまう。以前にあった出来事だが、ひたすら長く、勾配が厳しい登坂を全開で駆け上がり、下り坂に入ったときにスロットルを戻したとたんにリアタイヤがロック!!といったトラブルに見舞われたバイクがあった。これがまさにダキツキ症状の典型パターンといえるだろう。その後の下り坂で空走中にシリンダーが冷えて、ダキツキが解消され、エンジンはキック始動できるようになったが、小排気量の空冷2ストエンジンでは、こんなパターンが多い。水冷エンジンのメッキシリンダーモデルなら、このような例は少ないと言えるが、旧車の2ストモデルにありがちなトラブルである。普段の街乗りはもちろん、過去のツーリングでそのようなトラブルに見舞われたことは無いそうなので、走行ルートでオーバーヒート気味になりそうだと感じたら、あらかじめトラブル予防の意味でガソリンへ少量のエンジンオイルを混合しておくのも良いだろう。オイルポンプが作動しているのであれば、100対1程度の混合比でも、十分な効果を得ることができる。これこそが「保険」でもあるのだ。

また、冬場のエンジン始動直後に全開走行すると、エンジンが温まっていないうちに高回転になるため、ピストンスカートが踊ってポートが抵抗になり、やはりダキツキが起こりやすいもの。夏冬限らず始動直後の全開走行は慎みたいものだ。

エキスパンションチャンバーの装備や排気ポート加工によって、以前のノーマル時と比べて明らかに速くなったヤマハボビィ80。発進加速のローギヤでの吹け切が早く感じたので、ドライブスプロケットをセッティング変更してみた。ドライブシャフトのスプライン寸法と取り付け方法が同じで、ドライブチェーンサイズが同じなら(今回は420サイズ)、ドライブスプロケットの流用は容易に行うことができる。特に1歯違いなら、ドライブチェーンのコマ数に変更なく取り付けられるケースが多いのでお勧めだ。

また今回は、エンジンチューニングで好結果を得られたので、転ばぬ先の杖として、オイルポンプのコンディションを確認した。一般的な要チェックポイントは、アイドリング時のプーリーポジション。ボビィの場合はプーリー外周の突起位置で確認できる。次に、アイドリング時のプランジャ作動量。そして、アイドリング時に故意にポンプケーブルを引っ張り上げて全開にして、そのときのポンプストロークを確認すれば良いだろう。今回は、故意にエンジンオイルの吐出量を増やすのではなく、規定の調整範囲の最大値でストローク調整することにした。

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