塗装やメッキやアルマイトと並ぶ金属パーツの表面仕上げ方法が「研磨」です。アルミニウムパーツで有名なのがバフ研磨ですが、もうひとつの研磨方法として知られるのが大量生産を行う工業製品の研磨に用いられることが多いバレル研磨です。ガンコートの販売元であるカーベックが開発した「MURAMASA」は、工業用バレル研磨機をダウンサイズして、独自の三次元研磨機能を加えた高機能バレル研磨機です。純正パーツがカスタムパーツに生まれ変わるバレル研磨の魅力を紹介します。

油分で磨くバフ研磨に対して素材自体を輝かせるのがバレル研磨

250ccスクーターの純正ホイールをサンプルにMURAMASAによるバレル研磨を実践。純正ホイールは半ツヤグレーの塗装仕上げで、塗膜はかなり薄め。バレル研磨を行う際はあらかじめタイヤ、ブレーキローター、ホイールベアリングを取り外しておく。

古い塗装を剥離するにはいくつかの方法があるが、作業を見せていただいたカーベックでは同社で販売も行う強力剥離剤を使用する。剥離剤が強く塗膜が薄いため純正塗装はものの数十秒で簡単に剥がれてしまう。剥離後は水ですすいで乾燥させる。

サンドブラストで隅部分に僅かに残った塗膜の除去と下地作りを行う。このブラストキャビネットもカーベックが開発した製品だ。

バレル研磨は機械任せとはいえ、素材のコンディションによって仕上がりも左右されるので下地作りは重要だ。モーターに取り付けて回転するホイールは、リムの外縁とハブの中心部では周速が異なるため、どうしてもハブ中心の方が磨きが甘くなる。それを補うために、サンドブラスト後にサンドペーパーやサンダーなどで予備磨きをしておくことでより均等な光沢仕上げが可能となる。

粘土状の研磨材を擦りつけたバフ布でアルミパーツを磨くバフ研磨は、仕上がり後のクオリティはともかくDIYでも可能なカスタムとして人気があります。アルミを磨くための研磨材にも様々な種類があり、フロントフォークのアウターチューブやキャストホイールをピカピカの鏡面仕上げまで磨き上げれば、それだけで高いカスタム効果が得られます。使用する研磨機の種類や能力によって差はあるものの、バフ研磨は作業者が研磨機かパーツを持って磨きたい場所を磨く必要があります。

一方、工業用の研磨として一般的なバレル研磨は、研磨材が入ったバレル=樽の中に磨きたい物を入れて、流れるプールのようにグルグル回すことで人の手を使わず研磨します。個々で使用する研磨剤は液体やペーストではない粒状や球状の固体で、磨きたい物は粒状や球状の研磨材の中でかき混ぜられることで全体的に均等に磨かれていきます。身の回りでは鍛造やプレスで打ち抜かれた工具のバリ取りや、同じく大量生産で作られるスプーンやフォークのメッキ前の下地作りなどで使用されています。

バフ研磨の場合、個人レベルであれば電動ドリルやエアーリューターでも一定レベルの光沢が出せますが、バレル研磨を行うには研磨材が入った研磨槽が必要なため、プライベーターが簡単にできるものではありません。

バフ研磨とバレル研磨では使用する設備だけでなく、研磨の原理も異なります。アルミパーツをバフ研磨する際、サンドブラストやサンドペーパーで下地を整えた後に使用する研磨棒は、金属を磨く研磨材成分が油分の中に練り込まれています。つまりバフ布で磨くと同時に擦り込まれる油分がワックス効果の高い光沢の元となっているのです。そのためパーツクリーナーで拭いたり時間が経過すると油膜が落ちたり酸化することでツヤ感が減衰したり、素材表面の小キズが浮き出してくることもあります。

これに対してバレル研磨で用いる研磨材は樹脂やセラミックの粒で、これ自体に油分やワックス効果はありません。バレル中の無数の研磨剤の中でかき混ぜることでパーツと擦れ合る過程で、アルミ素材自体が光沢を発生します。これはサンドペーパーの番手を細かくしていくと、金属磨き用のケミカルを使わなくても光沢仕上げになるのと同じ理屈です。

バレル研磨の場合、研磨材とパーツが手磨きのペーパーとは比較にならないほど効率的に接触し続けることで、ごく短時間のうちに光沢仕上げにすることが可能です。そしてバレル研磨が終了したパーツ表面は脱脂洗浄された状態になっているので、通常のシャンプー洗車やパーツクリーナーで拭いても光沢は変わりません。ただし時間の経過により脱脂状態のアルミ表面が酸化することで光沢が低下するため、定期的な手入れは必要です。

大量生産を行う工業系の現場ではずっと以前から用いられていたバレル研磨機を、バイクショップやカスタムショップでも導入できるサイズと価格で製品化したのが、高機能塗料のガンコートやパウダーコーティング、温風循環式乾燥器などを販売しているカーベックです。

同社のバレル研磨機「MURAMASA」は、研磨用メディアが入った容量600リットルのバケットにパーツを押し込み強力なモーターで回転させることで強制的に研磨材を押しつけて研磨します。研磨材は粗研磨用と仕上研磨用の2種類があり、サンドブラスト仕上げのパーツをたったの30分程度で光沢研磨できるのが大きな特長です。

POINT

  • ポイント1・アルミパーツを研磨する方法にはバフ研磨をバレル研磨の2種類がある
  • ポイント2・バフ研磨が研磨材中の油分をツヤ出しとして利用するのに対してバレル研磨はアルミ地肌のポテンシャルによって光沢を出す

独自の三次元研磨でホイールやエンジンカバーやスイングアームをムラなく磨く

容量600リットルの2つのバケットには、それぞれ粗研磨用樹脂メディアと仕上研磨用セラミックメディアと水が入っている。粗研磨から仕上研磨に変更する時は、ハンドリフトでバケットを入れ替える。

モーターシャフト先端のヘッド部分にホイールを固定する。このホイールの場合はハブ部分が隠れてしまうので、全面を均等に磨く場合はホイールの裏表を付け替えて作業する。粗研磨と仕上研磨では、仕上研磨の方が短時間に設定される。

モーターでホイールを回しながら、エアーシリンダーでヘッドを上下・スイング運動させる。粒の小さな仕上研磨用研磨材はホイールの隅々まで行き渡り、三次元的に動くホイールと接触しながら効果的に研磨を行う。

ホイール1本あたりおよそ30分間のバレル研磨で一気にカスタムパーツ感がアップ。手磨きでここまで仕上げようとすると相当な手間と時間を要するが、バレル研磨機ならあっという間。個人用の設備ではないが、この仕上がりを見て導入するショップが増えている。自分が他の仕事をしているうちにMURAMASAが磨いておいてくれるのだから作業効率も時間効率もアップする。

純正なのにまるでカスタムパーツのように見えるバレル研磨ホイール。パウダーコーティングのアクリルクリアで塗装すれば、メンテナンスフリーでこの光沢を維持できる。バレル研磨後は脱脂洗浄された状態なので、汚れが付着した際はアルミクリーナーなどで手入れを行う。

一度に数多くの素材を磨くバレル研磨の場合、バケット内の研磨材自体を洗濯機の水流のように流動させて、その中に入れた素材は研磨材の中で動きながら磨かれます。これに対してカーベックのMURAMASAは、バケット内の研磨材は動かず研磨するパーツが動きます。

その動きは回転に上下運動とスイング運動が加わる三次元研磨で、ホイールのように形状が複雑なパーツも隅々まで研磨材が行き届くのが特長です。バフ研磨の場合はバフ布の当たり方や研磨材への熱の加わり方によって光沢にムラが出ることもあり、角断面スイングアームの側面など平面的な部分を均等に磨くには相応の技術が必要です。研磨材が当たらない部分が磨けないのはバフ研磨もバレル研磨も同様ですが、バレル研磨は研磨材さえ届けば連続的かつ均等に磨けるのでムラになりづらいのも魅力です。

また、MURAMASAはユーザーが設定するプログラムによって研磨を行うので、作業者の体調や気分、見逃しなどによる仕上がりのバラつきも発生しません。磨き具合に納得できなければ三次元研磨の設定を見直し、よりよい仕上がり条件を見つけることで、その後は常に安定した仕上がりを得られます。

モーターヘッドに研磨するパーツを取り付けて回すMURAMASAの場合、バレル研磨とはいえ流動槽を流すように一度に大量の部品を磨くことはできません。また上下動やスイング運動の幅はプログラムで任意に設定できますが、バケットに収まらないパーツは研磨できません。

しかしホイール仕上げやバイクや自動車のカスタムを行うショップを数多く顧客としていすカーベックでは、製品開発時に入念なリサーチを行っており、バケットはさまざまなニーズに応えられるサイズに設定。またモーターヘッドに取り付けるアタッチメントもユーザーがそれぞれ開発を進めることで、例えばバイクのエンジンカバーやステッププレートやアウターチューブなど一度に複数個のパーツを研磨することも可能となっています。

バフ研磨とは異なるバレル研磨は、レストアやカスタム時に新たな魅力を与えてくれるのは間違いありませんが、エンドユーザーの立場からすると個人でMURAMASAを購入するのは現実的ではありません。ネットで検索するとMURAMASAを活用して研磨作業を行っているショップの情報が見つかるので、そうしたショップにオーダーすることで愛車のパーツをバレル研磨仕上げすることが可能です。

POINT

  • ポイント1・カーベック製バレル研磨機「MURAMASA」は回転・上下・スイングの三次元研磨によってパーツを研磨する
  • ポイント2・粒状の研磨材が連続的に当たることで形状が複雑なパーツでも隅々まで残さず研磨が可能

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