
50ccの原付一種から250ccクラスまで、現在のスクーター用エンジンは2ストロークに比べて静かでマフラーから白煙も出ない4ストロークばかりです。そんな4ストエンジンを好調に保つ重要な要素のひとつがエンジンオイル管理です。定期的な交換はもちろんですが、汚れやスラッジをろ過するフィルターのチェックも欠かせません。ここではろ紙タイプではなく金属メッシュのストレーナーを使用するエンジンのオイル交換の手順を紹介します。
エンジンの機能が向上するにつれて役割が重要になるエンジンオイル

ヤマハNMAX155(2020年モデル)のオイルドレンボルトはエンジン左側面にある。エンジン下部ばかりを探しているとオイルストレーナーキャップを先に外してしまいかねないので要注意(ドレンボルトとオイルストレーナーキャップはどちらが先でも良い)。オイルの流れがメインスタンドに接近しているので、オイルをキャッチするドレンパンの形状次第ではサイドスタンドで抜いた方が良い場合もある。
4ストロークエンジンにとってエンジンオイルが重要なのは、スポーツバイクでもスクーターでも同じです。しかしスポーツ性をウリにする一部のモデルを除けば、大多数のスクーターユーザーはオイルに対してのこだわりは少ないようです。オンロードでもオフロードでも、趣味性やスポーツ性を前面に打ち出したバイクに比べて、外装パーツによってエンジンの存在感やメカニズム性が包み隠されているスクーターには機械らしさが少ないのもオイル管理に意識が向きづらい理由の一つかも知れません。
しかしエンジンの好調さを維持するには、定期的なオイル量チェックと交換が不可欠です。ここで紹介する機種(ヤマハNMAX155)は軽二輪の中でも人気の150ccクラスのスクーターですが、パワーと省燃費性を両立させるため4バルブや可変バルブタイミング機構なども当たり前のように採用しています。
最高出力を発生するエンジン回転数こそスポーツバイクより低い7000~8000rpm程度ですが、無段変速のため力強く走行する際は高回転の使用率も高まります。エンジンをコンパクトにまとめるため、エンジンオイル容量が1リットル程度と少なめに設定されているのもスクーターならでは。250ccのヤマハセローもオイルフィルター交換時容量が1.3リットルなので、とりたてて少ないわけではありませんが。
フューエルインジェクションの装備をきっかけとしてECUを装着したことで、走行に付随する各種情報をライダーに知らせることができるようになったのは、現代のバイクの特長です。このNMAX155にはエンジンオイルトリップメーターが装備され、走行6000kmごとにライダーに知らせるようになっています。オイル交換後にリセットすれば次に点滅するのは6000km後なので、メンテナンスの時期を忘れることがなく重宝します。
メーカーが設定している交換スパンは6000kmごとですが、走行条件によってはもっと短い距離で交換しても構いません。しかし走行距離が6000kmに満たないからといって何年も同じオイルを使い続けるのは避けましょう。エンジンオイルはエンジン作動中の熱によって酸化劣化が進行しますが、エンジン内であるだけでも空気に触れて温度変化のある中で性能が低下します。取扱説明書には6000kmごと、または1年ごとの交換が指示されているので、走行距離が少ない場合でも定期的な交換が必要です。
オイルドレンボルトはクランクケース下部にありますが、その位置はエンジンによって微妙に異なります。一般的にはエンジンの最下部となるケース下面というイメージがありますが、このエンジンのドレンボルトは左側面にあります。下面ばかりを探していると見逃しかねない場所で、これが本当にドレンボルトなのか?と疑ってしまいますが、側面にあることで着脱しやすいメリットがあります。
- ポイント1・スポーツバイクもスクーターもエンジンオイルの管理が重要
- ポイント2・オイルドレンボルトの取り付け位置はエンジン形状や機種によって異なるので確認が必要
エンジン内部の汚れをキャッチするオイルストレーナーも確認しよう

オイルイストレーナーキャップはドレンボルトより低い位置でエンジン下面にある。キャップの周囲には空冷エンジンのようなフィンがありメガネレンチが干渉するため、着脱する際はソケットレンチを使用する。

キャップ内側にはストレーナーを固定するスプリングがあるので、勢いよく外れないようエンジン側に押しつけながら緩めていく。エンジンオイルは先にドレンボルトから抜いてあるので、ストレーナーキャップを外して出てくる量はほんの僅かだ。

エンジン内部を循環したオイルはストレーナーキャップ部分に溜まり、オイルポンプによってストレーナー内側から吸い上げられる。従ってオイル内の異物や汚れはキャップ内側とストレーナーメッシュの外側に付着する。

カップ状のストレーナーと上部のゴム製ガスケットは分離しない一体部品。メッシュの内外からパーツクリーナーで丁寧に洗浄する。金属粉が付着している時はシリンダーヘッド内部やカムチェーン、ピストンやクランクシャフトなどエンジン内部に異状がないかを確認しなくてはならない。

エンジンオイル内を浮遊する汚れはストレーナーに付着するかキャップの内側に沈殿する。エンジン左側のドレンボルトはキャップより高い位置にあるので、ストレーナー洗浄を行わずオイル交換だけを繰り返していると、汚れが詰まりストレーナを通過するオイル量が減少してしまうリスクもある。

キャップの汚れはパーツクリーナーで丁寧に清掃しておく。キャップ外周のOリングは部品購入できるので、オイルドレンボルトのガスケットと同時に新品に交換しておくと安心だ。断面が潰れたOリングを再使用すると、シール性の低下によりオイル滲みの原因になる

キャップで圧縮したスプリングがガスケットを押して、ストレーナーをエンジンに密着させている。エンジンに接触するガスケット面が損傷して隙間があると、ストレーナーを通らないオイルがエンジン内に循環してしまうリスクがあるので、組み付け前にしっかり確認しておくこと。

最初からソケットレンチを使うと、ネジが斜めでも強いトルクが加わってしまうためキャップやエンジンにダメージを与えるおそれがあるので、スプリングの反力に逆らいながらキャップを押しつけ、ネジが噛み合うまでは工具を使わず手で回す。

取扱説明書にオイルフィルターの交換が掲載されている機種は、オイルのみ交換時の容量とフィルター交換時の容量を区別しているが、ストレーナー洗浄の言及がないのでオイル容量は0.9リットルの一種類のみ。最初から全量を入れるのではなく、0.7リットル程度を入れた状態でアイドリングさせて、エンジンを止めてからレベルゲージで油量を量り、不足している分を注ぎ足して調整する。
エンジンオイル交換時に合わせて行うのがオイルフィルター交換です。オイルフィルターにはオイル内のゴミや異物を取り除く役割があることは、バイクのメンテナンスに興味のあるライダーなら誰もが知っているはずです。
NMAX155(2020年モデル)の場合はろ紙タイプのフィルターではなく、金属メッシュタイプのオイルストレーナーを使用しています。ろ紙にくらべてメッシュの方が目が粗くゴミや異物の捕獲性能が劣るように感じるかも知れませんが、クラッチやギアを潤滑しなくて良いエンジンにはメッシュで必要充分とメーカーが判断したのでしょう。ちなみにスクーでも内蔵式やカートリッジタイプのオイルフィルターを装備する機種もあります。
ストレーナーはオイル内の異物をキャッチする重要な部品ですが、取扱説明書にはその存在や洗浄タイミングは記載されていません。ちなみに先にエンジンオイル容量の比較で掲出したセロー250のオイルフィルターエレメントは、初回1カ月点検時または1000km時、2回目以降は9000km走行ごとに交換するよう指示があります。
オイルドレンボルトがエンジン横にあるのに対して、オイルストレーナーはエンジン下面に取り付けられています。そのキャップ(部品名称はドレンプラグ)はいかにもドレンボルト然とした形状で、オイルドレンボルトと誤認してしまいかねないものです。先に正しくドレンボルトを外してからストレーナーキャップを外せばエンジンオイルはほとんど出てきませんが、ドレンボルトを外す前にストレーナーを外すといきなりエンジン内部のオイルが流れ出すので注意が必要です。
取扱説明書に表記がなくても、オイルストレーナーの清掃は重要であり有効です。潤滑装置のレイアウト上、オイルストレーナーはオイルドレンボルトよりも低い位置にあり、ストレーナーのキャップ内側は異物が沈殿するようすり鉢状になっているからです。もちろん、メッシュ状のストレーナー自体がキャッチした汚れを確認して除去することでエンジン内部のコンディションを類推できます。
上記の通りNMAX155の取扱説明書にオイルストレーナーの清掃時期は記載されていませんが、オイル交換間隔の6000kmど同時に取り外して清掃することは有効です。普段の足に使うことが多いスクーターだからこそ、潤滑系統の異物混入を確認できるオイルストレーナー清掃の重要性を知っておくことが重要です。
- ポイント1・潤滑系統内にはオイル中の異物を取り除くためオイルフィルターまたはオイルストレーナーが内蔵されている
- ポイント2・メッシュタイプのストレーナーはオイル交換と同時に清掃確認を行っても良い
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ヤマハのブルーコアエンジンはオイルの減りが異常に早くアクシスZは3000kmで焼き付く現象が多数報告されていてヤマハも無償修理している。
ブルーコアエンジンは1000km事にオイル量の確認をお勧めいたします。
Nmaxに乗っていました、2.000k毎にオイルを補充していましたが結局14.000kでエンジンが焼き付きオーバーホール、修理代に¥140,000かかりましたが実費でした。