
3年ぶりに開催されたWebike Cafe Meeting 2022会場の一角、アネスト岩田スカイラウンジのサテライトで行われた実践企画が「ギボシ端子の上手なカシメ方体験講座」です。ここではWebike Plusでメンテナンス記事の連載も行う、バイクメンテナンス雑誌「モトメカニック」編集部の田口、栗田の二人が、USB電源やグリップヒーター取り付け、ウインカーやテールランプ交換など、愛車に電気系いじりに不可欠なギボシ端子のカシメ方を来場者の皆さんに体験してもらいながら、ありがちな失敗や上手く仕上げるちょっとしたコツの解説を行いました。
圧着電工ペンチの機能を知れば電気いじりがもっと楽しくなる!

2022年8月20日にターンパイクのアネスト岩田スカイラウンジで開催されました。

メーカーやコンストラクターの出展ブースから離れたアネスト岩田スカイラウンジの2階サテライトは冷房が効きソファもある快適空間。電気好きやメンテナンス好きのライダーが入れ替わり立ち替わり訪れてくれました。

ギボシ端子かしめを初めとした電気工作に不可欠な電工ペンチ。ギボシ端子と圧着端子用ペンチはカシメ部分の形状が異なり互換性がないので、ギボシ端子にはギボシ端子用ペンチが必要。デイトナの電工ペンチはバイクや自動車作業用なので問題なく使えます。

電気系アクセサリーの電源として最も一般的なギボシ端子。上下のオスメスの太さが若干異なるのは、上はホンダ&スズキ純正サイズで下がヤマハ&カワサキサイズのため。バイクメーカーに関わらず汎用性が高いのは下の太さ。ホンダ&スズキ用のオスをヤマハ&カワサキ用のメスと組み合わせると簡単に抜けてしまうので注意が必要です。

電工ペンチや配線、ギボシ端子などはデイトナさんにご協力いただき、この場を訪れた皆さんは納得できるまでかしめ作業を繰り返すことができました。
普段はWebike Plusのメンテナンス記事やバイク雑誌「モトメカニック」を通して、サンデーメカニックと呼ばれる皆さんにメンテナンスやバイクいじりの楽しさを伝えている編集部スタッフの田口と栗田がWebike Cafe Meeting 2022の会場に出掛けたのは、電気いじりの基本であるギボシ端子のカシメを「興味はあるし実践しているけど意外と上手くいかない」と感じているライダーが少なくないと聴いたことがきっかけでした。
雑誌で電気いじりの企画を行うたびに圧着電工ペンチを使ったカシメ作業のノウハウを紹介してきたつもりでしたが、誌面だけではニュアンスが伝わっていないのではないか?実際に電工ペンチを手にとっていただき、作業してもらうことで苦手なポイントが共有できるのではないか? そう考え、電気系のアクセサリーや工具、部材を数多くラインナップしているデイトナ(https://www.daytona.co.jp/)さんにご協力いただき、Webike Cafe Meeting 2022内に特設会場を設けました。
今回の体験講座では、来場された皆さんに圧着電工ペンチを握ってもらい、実際にギボシ端子をかしめていただくことをテーマとしました。現在では電気アクセサリーもカプラーオン仕様が増えてきましたが、配線の長さを調節したり汎用の電気部品を取り付ける際に端子をかしめる場面もまだまだあります。
電気いじりに興味を持って特設会場まで足を運んで下さった方々は、80%以上の割合でギボシ端子かしめの必需品である電工ペンチの所有していました。つまりラジオペンチやプライヤーで端子を潰すだけでは良くないことは理解しながらも「電工ペンチでかしめたのに配線が抜けることがある」「かしめ部分がうまく丸まらず潰れてしまうことがある」というコメントもありました。
ここで確認しておきたいのが、配線用端子によって使用できる電工ペンチが異なるということです。バイクや自動車の配線用に多用されるギボシ端子は、オープンバレル端子/ファストン端子とも呼ばれる、カシメ部分がU字型をしています。これとは別に電気配線用端子にはカシメ部分がスリーブ状(パイプ状)になったものもあります。そしてオープンバレル端子とスリーブ状の圧着端子では、使用できる電工ペンチも異なります。
今回使用したデイトナの電工ペンチはギボシ端子のオープンバレルにもスリーブ状の圧着端子にも対応できるタイプですが、市販されている電工ペンチの中には圧着端子専用の物もあり、それを知らずに手にしてしまうとギボシ端子の金具をきれいにかしめることはできません。
「何度やっても自分の電工ペンチでは上手くできない」という場合は、そのペンチがオープンバレル端子に対応した製品なのか今一度確認してみましょう。カシメ部分の形状がハート型(M型)であればオープンバレルのギボシ端子をかしめることができますが、そうでなければ圧着端子用ペンチなのでギボシ端子には使えません。
これから電工ペンチを買い求める場合、デイトナ製品なら間違いありませんが、電気工具メーカーなどの製品を手にする時は、必ずギボシ端子対応であることを確認することが重要です。
芯線と被覆を確実にかしめれば「配線抜け」トラブルはゼロにできる!

ギボシカシメの第一歩である被覆剥きにはワイヤーストリッパーを使います。ニッパやカッターナイフでは芯線を傷つける恐れがありますが、ワイヤーストリッパーは配線の太さに応じたガイドがあるので被覆だけを切除できます。

芯線かしめ部分の倍の長さの被覆を剥いたら、半分に折り曲げてギボシ端子にセットします。折り曲げたU字部分が芯線かしめ金具を僅かに超えているのがポイントです。配線を深く突っ込みすぎて芯線かしめ金具が被覆に乗り上げないように注意します。

カシメ金具のサイズに応じた部分でかしめます。グリップはいきなりグッと握るのではなく、電工ペンチのハート形状部分にかしめ金具の端部が沿っていること、芯線が金具からずれていないことを確認しながらゆっくり握り込みます。

折り曲げられて2列になった芯線を、ハート型に折り曲げられたカシメ金具の先端が巻き込むことで簡単に抜けない強固なカシメが完成しました。カシメ金具の脇から芯線が飛び出すと、フレームなどに接触してショートの原因になることもあるので、金具の中にまとめておくことも重要です。

被覆部分をかしめる際は、芯線をかしめた部分より1ランク上の部分を使って作業します。ギボシ端子を観察すると分かりますが、芯線部分より被覆部分の方がかしめ金具の直径が大きく作られているからです。

かしめ金具が被覆に中央に食い込むことで、配線を引っ張っても抜けづらいギボシ端子が完成します。

1本の配線からUSBとドライブレコーダーの電源を取りたい場合には、分岐配線を作ります。電源に必要な配線長を決めたら、根元に当たる部分の被覆を多めに切除します。こうした作業でもワイヤーストリッパーが重宝します。

長めに露出した芯線は切断せず、2つに折り曲げた状態でギボシ端子に挿入して芯線をかしめます。こうしておけば、配線を引っ張っても芯線の折り曲げ部分に引っかかって止まるため、抜けづらくなります。また被覆部分は2つの金具で配線を1本ずつ巻き込むようにすると強固で見栄えも良く仕上がります。

2本の配線が並ぶオス端子側は絶縁スリーブが通らない太さになるので、代わりに熱収縮チューブをかぶせて絶縁します。2本に分岐した端部にメス端子を付ければ、2種類のアクセサリー用電源の完成です。

電工ペンチの多くに付いている機能の中で、あまり知られていないのがボルトカッターです。ヒンジ周辺の穴の手前にはM2.6~M5サイズの雌ネジがあり、裏側は貫通穴になっています。この雌ネジにパンスクリューをねじ込んでグリップを握ると、好みの長さで切断することができます。

切断後の長さは手前側に露出した首下+電工ペンチ手前側の厚み分となります。ステーやパーツを取り付ける際にビスやボルトが長すぎて見栄えが良くない時は、金ノコやサンダーより簡単に切断できます。

ペンチを閉じる際のせん断力でボルトをカットすることで切断部分の雄ネジが傷まず、ペンチから取り外す際にネジ山が修正されるので次に使用する時も引っかかることなくねじ込めるのが特長です。

最初に電気工作で苦手なポイントをヒアリングして、講師陣と一緒にかしめ作業を行います。被覆を剥いた芯線を二つ折りにするか否か、たったそれだけのことでギボシ端子にかしめた配線の抜けづらさが大きく変わることを体感頂けたようです。

芯線はオープンバレル用の口金でかしめ、被覆のかしめは圧着端子用の口金を使っていたというカスタムモンキーオーナーさん。圧着端子用では被覆用の金具が折れ曲がってばかりだったそうですが、2カ所ともギボシ端子用部分でかしめれば良いことを知ってこれまでの悩みが解消したそうです。

土下座しているようにしか見えない構図ですが、ポジションランプ付きウインカーの点滅状態に納得いかないオーナーからの相談で、愛車の配線図とにらめっこで不具合の原因を推理中。この場で怪しい部分を分解確認することができず完全解決には至りませんでしたが、何となく方向性は見えてきました。
オープンバレル端子対応の電工ペンチでギボシ端子をかしめる際のポイントは「芯線を折り返すこと」「配線の被覆にカシメの先端を食い込ませること」の2点です。
ギボシ端子にはカシメ金具が2列並んでおり、根元で配線の被覆を、先端側で芯線をかしめます。作業手順としては芯線を先にかしめますが、この時に被覆を剥いただけのストレート状態だと配線を軽く引っ張るだけで簡単に抜けてしまいます。だから被覆側もかしめて抜けないようにするわけですが、芯線が簡単に抜けるということはギボシ端子に充分に密着していないことになり、導通確保の点でも心配です。
そこで芯線かしめ金具の2倍の長さの被覆を剥き、途中で折り曲げてから端子にセットして電工ペンチでかしめます。こうすることで、芯線とカシメ部分の接触面積が2倍になるとともに、かしめた金具の先に折り曲げた芯線のUターン部分を置くことで、配線を引っ張ってもカシメ金具がU字部分に食い込むため抜けづらくなります。
このかしめ方法は1本の配線から2つのアクセサリー電源を取り出す「分岐配線」を作る際にも有効です。新たに製作する2本の配線の芯線を並べてかしめると、1本の時と同様に金具をすり抜けてしまうリスクがあります。それを防ぐには2本の配線を並べるのではなく、1本の配線の途中の被覆を剥いて露出させた芯線を折り曲げてかしめることで、U字部分が強固な抜け止めとして機能します。
被覆をかしめる際は、かしめ金具の先端が被覆の中心に食い込むように位置を決めることが重要です。金具と配線サイズの関係によっては、被覆部分が金具の一方に偏った状態でかしめが可能な場合もあります。しかしこれだと金具は被覆を巻き込んでいるだけなので、配線を引っ張った時に被覆だけがずれてしまうこともあります。こうなると端子部分の引っ張り強度は芯線のカシメ部分だけに依存してしまうため、抜き差しを繰り返すと断線するリスクが高まるのです。
そうならないためには、電工ペンチで巻き込む金具の先端が被覆に食い込むよう、カシメ部分を確認しながら配線の位置をコントロールすることが大切です。金具が被覆に食い込めば、端子を抜く際に引っ張っても配線だけ抜けてしまうことはありません。
ギボシ端子対応の電工ペンチには、かしめ金具のサイズ=配線の芯線の太さに応じて多くの場合3サイズのカシメ部分があります。このうちどの部分を使うかは実際にかしめるギボシ端子の太さによって選択しますが、芯線に対して被覆をかしめる部分を1ランク大きくすると金具が潰れずきれいに巻き込むことができます。
またギボシ端子の中には金具の端部が外向きに広がっているものもあり、電工ペンチのハート形状にうまく沿わず潰れてしまうこともあります。そのような場合はラジオペンチなどで金具の先端を少しだけ内向きに曲げるときれいにかしめることができます。
これらはコツと言うほどではなく、ほんの少しの気遣いに過ぎません。しかし参加された方々は皆、ちょっとしたテクニックを知ることで見栄えが良く信頼性の高いギボシ端子を製作することができました。
電気いじりはお手の物というベテランさんも、ギボシカシメどうにも苦手……というビギナーライダーの皆さんも、電工ペンチを活用したカスタムやメンテナンスを実践してみてはいかがでしょうか。
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