旧車用ハンドルスイッチの中にはノブをビスで固定するタイプがある。転倒や立ちゴケによって割れてしまうケースやビスの緩みによって気が付いた時には落下紛失……。ここでは、そんなビス止めタイプのスイッチノブを複製してみた。ワンオフ製作なら、型取くん利用でも、何とか複製することができそうだ。

振動で壊れたり、緩んで外れたり



70年代前半以前のモデル用ハンドルスイッチの場合は、操作する樹脂製ノブを小さなビスで締め付け固定しているケースが多い。70年代後半以降のモデルでは、スイッチ金具と樹脂ノブが一体成型されているモデルが多い。組み込み済みノブの見た目は平面で構成されているため単純形状になっているが、金具に締め付けられる部分は複雑な凹形状となっていて、この部分の再現が難しそうだが……。

プラスチックねんどで部品現物から型どり



デイトナから発売されている型取クンを使ってみた。湯沸したポットからコップに熱湯を入れて型取くんを投入。しばらくするとチューインガムのように柔らかくなるので、割り箸で挟んでその時を待った。80~90℃前後の熱湯ならば、沈めて1分程度で柔らかくなり始める印象だった。

お湯で温めたらまさにチューインガム状!!







アルミ板を用意して、ノブのスイッチ本体側になる面をアルミ板に当て、ビス穴に柔らかくなった型取くんを押し込むように巻き付けつつ全体をおおうように被せていった。ビス穴はスイッチノブの下側にある(下から上へ向けてビス2本で締め付ける構造)。型取くんが柔らかいうちに2箇所の穴に押し込むことでイボ形状を作ることができる。まずはこのビス止め部分となる2箇所の突起状況を確認しよう。次は綿棒にシリコンスプレーを塗布して、型取くんがアルミ板に押し付けられていた平面部分にシリコンを塗布。片面の準備ができたら熱湯にもうひとつの型取くんを浸して柔らかくして、シリコンを塗布した面に小型の金ベラを使って、もう半面の型作りを行う。

模型用樹脂レジンを流し込み





2分割で作った型が冷えたらマスター型を抜き取る。この際に、凹部分となる出っ張りが千切れてしまわないように要注意。残念ながら切れてしまったので、途中工程から再トライ。2回目には成功できた。再トライ時には型取くんが冷えてしまう前に分割ポイント部へ割り箸を差し入れ、樹脂を注型する(流し込む)通路を確保した。型取り完了後に彫刻刀で溝を削り、注型用の通路を確保しても良いのだが……。模型ショップで購入した樹脂レジン(ハイキャスト)の主剤と硬化剤を規定量通りに混合する。黒樹脂用の専用トナーも同時に混ぜた。流し込む樹脂が注型通路から溢れても良いように、ガムテープで型のまわりを筒状に巻いて対策した。

硬化後はリューターで成型





まったく別の作業撮影を進めつつ、約1時間後に型を割って部品を取り出してみた。分割部分の接合が平面かつ精度が良かったので、羽根付き餃子みたいにはならなかった。それでも小さなバリはしっかり除去しよう。ビスを差し込む部分の型取りはやはり難しい。穴部分の段差と貫通がうまく行かなかったので、仕方ないのでΦ2mmのキリとピンバイスを使って、埋まった樹脂を手彫りしながら貫通させた。リューターを使って締め付け部分の成形精度を高めていった。

型取くんで部品を複製できた!!

外周のバリ取りに溝内の成型、全体的なクリーンナップを終えたらスイッチ本体に複製ノブを締め付ける。後加工が功を奏し、スムーズに締め付けることができた。後加工に時間が掛かってしまったが、型取りの段階で緻密に作業進行すれば、もっともっと後々の補修作業は楽になるはずだ。

その後、同じ方法で複製してみた燃料コック用の樹脂レバー。固着していた燃料コックを無理に作動させようとしたら樹脂レバーがパキッと割れてしまった。接着したところで強度不足は否めないので、形状回復できた部品を元に型どりを行い、複製した。

POINT

  • ポイント1・樹脂部品の復刻時は型どりの段取りが重要 
  • ポイント2・樹脂レジンは部品用途に応じて使い分け可能
  • ポイント3・しっかり型どりすれば複数復刻も可能

デイトナから発売されている工作用の「型取くん」は、同社が取り扱うプラリペアの関連商品として販売されているもの。ここでは、走行振動で締め付けビスが緩んで落ち、スイッチノブを紛失してしまったウインカースイッチノブを複製してみた。部品取り用のスペアスイッチにノブが残っていたので、そのスイッチノブを元型にした。

中古部品で型取りする際には、あらかじめ部品表面を磨いて、汚れ取りを実施するのが成功への近道である。そして、型取り実践時には、型取りする直前まで「元型となるマスター型を一緒にお湯に沈めて温めておく」と良さそうだ。今回は、このマスター型の温めを実践しなかったが、作業前にマスター型を温めておいた方が、型取くんをスムーズに巻き付け、密着させることができそうだと実感した。

注型作業に関しては、樹脂を流し込む自然落下式(重力落下式)の注型段取りではなく、シリンジ型のスポイドを使って「強制注入する方法」が良さそうだ。シリンジ型のスポイドは100均などでも販売されている化粧品用のスポイドで十分だろう。

実は、この作業撮影後に金属ノズル付の100均シリンジを購入し、再度、注型作業を行ってみたが、撮影時よりも良い仕上がりの複製部品をワンオフすることができた。シリンジ注型ポイントの肉厚を確保した型作りにすることで、より安定した注型作業が可能になるようだ。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    あえて色を変えてもらった面白いものでしょう。

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