原付だからといって疎かにできないのがブレーキのメンテナンスです。ディスクブレーキを装備するスクーターであれば、スポーツバイクや大型車と同様にブレーキフルード交換やキャリパーピストンの揉み出しも行いたいもの。鉄板ブレーキになる前にパッドの残りをチェックするのと同時に、長持ちさせるための洗浄と部品交換を行いましょう。

パッドダストで固着しないよう清掃とグリスアップが重要なキャリパーピストン

原付二種スクーターのフロントディスクブレーキの一例。フロントフォークのアウターチューブにキャリパーサポート(右端)がボルト止めされて、サポートのピンにキャリパーが取り付けられる。キャリパーはピンに沿ってスライドして、ブレーキパッドが摩耗してもキャリパーの中心でブレーキローターを挟むことができる。

キャリパーに組み付けるピストンシールやダストシールは、ピストンとのフリクションロスを低減するためラバー対応グリスやブレーキフルードを塗布する。ブレーキフルードには吸湿性があるため、ダストシール外側に付着しているとサビなどの原因になるので、グリスの方が安心だ。

ダストシールにはピストンシールと同様の角断面タイプとベローズタイプがあり、後者はパッドが摩耗してピストンがせり出しても側面をカバーして汚れやサビをガードするのが特長。しかしベローズとピストンの間に水分が入ってしまうと抜けづらいという弱点もある。

125ccクラスの原付二種スクーターではフロントのみならずリヤにも装備されているディスクブレーキ。ドラムブレーキに比べて放熱性が高くコントロール性も高いのが魅力ですが、ライニングが摩耗するとレバーの遊びが大きくなるワイヤー式ドラムブレーキと違ってパッドが減ってもレバータッチが変わらないため、摩耗に気が付きづらいという面があります。またスポーツバイクのようにブレーキローターやキャリパーによってスポーツ性をアピールすることも少なく、小径ホイールの奥に隠れがちなのも意識しづらい要因となっています。

油圧ディスクブレーキの作動原理や手入れの方法は大型車もスクーターも同じですが、前述のような理由からスクーターのディスクブレーキは軽視されがちで、その結果不具合やトラブルを引き起こす例が少なくありません。最もありがちなのがパッドが摩滅してバックプレートでローターを挟み込む鉄板ブレーキです。表面がガリガリに削られたローターは交換が必要で、パッド交換よりも多額の修理費用が掛かります。またスポーツバイクに比べてホイール径が小さくブレーキ自体が路面に近いため、雨水や砂利などの汚れが付着しやすく、これもローターを傷つける原因となります。

スクーターのブレーキパッド残量を確認するには地面近くまで視点を下げなくてはならず、ほぼ地面に寝そべるような体勢になるためチェックするにもそれなりの気構えが必要です。しかしパッド残量ゼロになってからでは遅いので、押し歩きの際にローターとパッドから擦れ音がするような時には、マスターシリンダーのフルード残量を見たり、キャリパーを覗き込んでパッドを確認することをお勧めします。

その上で、パッドが摩耗したブレーキダストでキャリパーが汚れていれば、キャリパー本体やピストンの洗浄とグリスアップを行います。スクーターで一般的なピンスライド式キャリパーは、フロントフォークに取り付けられたキャリパーサポートのスライドピンの上をキャリパーがスムーズに動くことが重要です。そのためキャリパーを洗浄する際はピストンばかりに注目するのではなく、キャリパーサポートのスライドピンの状態もチェックします。

キャリパーとキャリパーサポートを分解してピンの潤滑状態やサビの有無を確認し、グリスを塗布して滑らかに動けば問題ありません。しかし普段の取り扱いが雑で、ホイールやキャリパーを駐輪場の縁石などに接触させることが多いユーザーは、スライドピンがキャリパーに押されて曲がっていることもあります。大きく曲がればローターが歪んで走行不能になるので分かりやすいのですが、走行可能ながらブレーキパッドが引きずったり偏摩耗する場合はスライドピンの検証が必要です。

ここに問題がなければ、キャリパーピストンを抜いてオーバーホールを行います。ピストンにパッドダストが堆積している時は金属磨き用のケミカルで磨き上げ、長期間ノーメンテナンスのキャリパーならピストンシールとダストシールも交換しておくと良いでしょう。スポーツバイクの対向4ポットキャリパーだと交換するシールは計8個必要ですが、原付クラスのスクーターで1ポットならシールは2個で済むのでコストも安上がりです。

POINT

  • ポイント1・油圧ディスクブレーキのメンテナンスは大型車でもスクーターでも同じように必要
  • ポイント2・片押しキャリパーはサポートのスライドピンに従ってスムーズに作動することを確認する

マスターシリンダーはダイヤフラムの硬化や膨潤の確認も必要

分解したマスターシリンダーと交換用の純正部品(下部)。この機種のピストンにはあらかじめプライマリーとセカンダリーカップが組み付けられているが、マスターシリンダーピストンとして注文してもカップが別になって納品される場合もある。その場合は内径の小さなカップを外径が大きいピストンに通す難しい作業をこなさなければならない。

元々は2個とも同形状だが、長期間ブレーキフルードに浸ることでブヨブヨに膨潤した旧品(左側)。これではリザーブタンク内の圧力を一定に保つことができず、キャリパーをオーバーホールしてもブレーキのフィーリングは良くならない。

キャリパーのメンテナンスを行ったのなら、合わせてやっておきたいのがマスターシリンダーです。スクーターのマスターシリンダーはスポーツモデルに比べてリザーバータンク容量が小さいことが多く、定期的なフルード交換を怠ると汚れて茶褐色担っていることも少なくありません。機種によってはメーター周りのカバーに覆われたマスターシリンダーを取り外すのに手間が掛かることもありますが、オーバーホールによってレバータッチや性能は確実に回復します。
マスターシリンダーを構成するパーツの中で重要なのがピストンに付くプライマリーカップとセカンダリーカップ、そしてリザーバーキャップ裏のダイヤフラムです。2つのカップの断面は傘状に開いており、マスターシリンダー内部のフルードをブレーキホースを通じてキャリパーに押し出します。不動期間があってマスターシリンダー内部のフルードが変質してカップの傘に挟まるとシール性が低下してフルード漏れの原因になったり、ピストンがスムーズに動かなくなるため交換しなくてはなりません。

純正パーツのプライマリーカップとセカンダリーカップはピストンとセットで設定されているのが一般的ですが、購入時にピストンにシールが組み込まれている場合と、ピストンとシールが別々で納品される場合があります。前者であればアッセンブリー状態のピストンをマスターシリンダーに組み込めば良いのですが、後者だと大変です。

画像のピストンで分かる通り、ピストンの外径とカップの外径はほぼ同じで、カップ組み付け部分の直径は半分ほどに絞られています。このため組み付け時にはカップ内径を大きく広げなくてはならないのです。この時、カップの外径はもちろん内径部分も傷つけてはならず、拡張しながらピストンにセットするのはとても難易度が高い作業になります。

自動車用のピストン向けには、ロケットのような形状のカップ組み付け専用工具もありますが、直径が細いバイクのピストン用ツールは皆無なので注意が必要です。注意するといっても、ピストンとカップがバラバラで納品された場合には何と組み立てなくてはならないのですが。

フルードに圧力を加えて押し出すピストンカップに比べると、単なるフタのように思われがちなダイヤフラムも重要な部品です。ダイヤフラムはリザーブタンクの開口部を密閉するように取り付けられており、ブレーキレバーを握ってタンク内のフルードが減少すると蛇腹部分が伸びて追従し、レバーを離してフルードがタンク内に戻ると元の形状に戻ります。

経年劣化などで柔軟性が失われると、タンク内のフルードが減少してもダイヤフラムが伸びず、タンク内の圧力が低下してしまいます。つまりダイヤフラムにはリザーブタンク内の圧力を一定に保つ役目があるのです。従って蛇腹部分の柔軟性が低下したり、変形したまま元に戻らなくなったダイヤフラムは新品に交換しなくてはなりません。

冒頭で述べたように、原付スクーターでもビッグバイクでも油圧ディスクブレーキの基本的な構造は同じで、だからこそメンテナンスも同じように行わなければなりません。趣味の乗り物というより実用的な足として利用されることが多いスクーターは乗りっぱなしになることも多いですが、メンテナンスを怠らないようにしましょう。

POINT

  • ポイント1・マスターシリンダーのピストンを購入する際にプライマリーカップとセカンダリーカップがセットされているか否かで組み立て難易度が大きく異なる
  • ポイント2・リザーブタンクのダイヤフラムは柔軟に変形することで機能する

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