
エンジン部品の中でもクランクケースカバーやシリンダーヘッドカバーは、普段から眺める機会が多い部品だろう。オイル漏れ滲みがあると気になってしまうが、だからこそ、それらの部品を取り外した際には、ガスケットの組み込みや旧ガスケットの処理や汚れ取りはしっかり行いたいものである。ここでは、カワサキミドル4気筒エンジンのヘッドカバー復元時に「気にするべきポイント」に注目してみよう。
液状ガスケットの併用でシャットアウト
ヘッドカバーの締め付け復元にも気を配らなくてはいけないのがカワサキミドルだ。ゴム製のカムエンドプラグは、分解組み立て時に必ず新品部品に交換しよう。この部分からのオイル滲みが多い。カムエンドプラグのシール部にはシリコン系液状ガスケットを併用するが、ゴム栓に塗布するのではなくシリンダーヘッド側に薄く均一になるように塗布しよう。厚塗りしなくても良く、薄く塗り伸ばして利用するのが正解だ。
オイル漏れ滲みポイントのエンドプラグ
ヘッドカバーを結晶塗装仕様にお化粧直しした直後でもあったので、その際に交換したヘッドカバーガスケットは再利用した。ガスケットにダメージを与えないようにガソリンで洗浄して、古い液状ガスケットを洗い流し、新たに新規液状ガスケットを併用。カムエンドプラグを突き抜けて締め付けるヘッドカバーボルト4本は、ネジ山部分に液体ガスケットを塗布して締め付けた。このねじ山を伝ってエンジンオイルが毛細管現象で立ち上がり、オイル漏れしてしまうケースが多いそうだ。ヘッドカバーの締め付け順序は、内側から外側へ徐々に広げるように締め付けていくのがセオリーだ。締め付けトルクは12Nmで行った。締め付けすぎ=オーバートルクには要注意。
カチカチ硬化のゴム部品は新品に交換!!
エアーボックスの復元に取り掛かる。エンジン腰上のオーバーホールやタペット調整をしたような際に、インレットパイプの劣化や硬化に気が付くことが多い。タチカチに硬くて取り付け復元しにくいことも多いので、新品のインレットパイプに交換した。純正部品が無くならないうちに交換して正解だろう。内側と外側があり、まずは外側インレットパイプをセットする。樹脂ケースの内側に入るエアーファンネル部が潰れてしまうと吸入抵抗になり良くない。しっかり目視確認しながら作業進行しよう。外側2個を取り付けてから内側2個を固定しよう。内側を先に取り付けてしまうと、外側の取り付け状況を目視確認できなくなってしまうからだ。また、内側は取り付けやすく誤組もしにくいのだ。
組み立て完了後は「圧縮」確認から
すべてを復元してエンジンオイル量を確認したら、スパークプラグを外してブースターケーブルをバッテリーにつないでセルスタータースイッチを回す。各シリンダーの圧縮圧力はすべて同じデータだった。ちなみにこのエンジンは、ボアアップ+燃焼室加工を施していたので、正直なお話、やや心配していた。ボルトオンキットを組み込む時はまだ安心だが、独自の考えでボアアップしていたため、心配だったのだ。ノーマルエンジンなら冷間時の圧縮圧力で10~11kgf/cm2(1000~1100Kpa)前後が標準だが、このチューンドハイコンプエンジンは14kgf/cm2を示した。タペット調整の手順やノウハウは先行リポートを別途ご確認いただければと思います。
- ポイント1・ガスケットの組み込み時は液状ガスケットの併用も視野に入れよう
- ポイント2・ サビやすいネジ山やボルトには対策が必要
- ポイント3・ エンジン始動前には現状の圧縮コンディションを確認しよう
どんな作業にもコツやノウハウというものが存在する。ここでは、カワサキミドル4気筒のツインカムヘッドカバーを組み付けるが、このヘッドカバーの復元時にもノウハウが存在する。通常の組み立て作業領域における手順の中には、ヘッドガスケット組み込み面の汚れ取りや面出しなどがある。古い液状ガスケットは、パーツクリーナーなどを利用して洗浄するよりも、ズバリ、ガソリンで洗浄した方が作業は早い。単品部品なら浸して洗浄することもできるが、シリンダーヘッドのような大物部品の場合は、ウエスにガソリンを浸して汚れ部分に押し付け、付着したガスケットがふやけたらウエスでギュッと拭き取るのが良いだろう。また、事情があって中古ガスケットを再利用する際も新品ガスケットを利用する際にも、要所要所には液状ガスケットを併用しなくてはいけない。決して厚塗りする必要は無いので、薄く塗り伸ばすように心掛けよう。
モデルによってはオイル漏れやオイル滲み症状が出やすいポイントがある。このカワサキミドルの場合は、カムシャフトエンドの半月ゴムプラグ付近からのオイル漏れが意外と多いようだ。これはゴムプラグを貫通するように締め付けているボルトのネジ山を伝って「毛細管現象」でエンジンオイルが立ち上がってしまうからだそう。このカムエンドプラグ部分を締め付ける際には、ネジ山をパーツクリーナーで洗浄し、さらにネジ山へはシリコン系液状ガスケットを塗布するのが良いそうだ。この方法は、数多くのカワサキ車をメンテナンスしてきたカワサキ直系メカニックから教わったものだ。
ヘッドカバーの復元とキャブレターを復元したら、各シリンダーの圧縮圧力を測定してみよう。マルチシリンダーの場合は、圧縮圧力数値うんぬん以前に、2気筒でも、3気筒でも、4気筒でも、すべてのシリンダー圧縮圧力データが一定していることが重要だ。圧力データが一致していないと、爆発バランスが崩れてしまい、安定したアイドリングや加速性能を得られないこととなってしまう。組み立て直後のエンジンなら、全シリンダーの数値データが±5%以内なら測定誤差だと考えよう。走り込んだエンジンのコンディション判定時にもコンプレッションゲージは使い勝手が良いので、サンデーメカニックにとっては所有していたい特殊工具のひとつである。
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