スロットルやクラッチの操作力を伝達するワイヤーは、できるだけフリクションロスを少なくしたいパーツです。インナーワイヤーの清掃と潤滑を定期的に行うことは有効ですが、スロットルパイプからキャブレターやスロットルボディまでのワイヤーレイアウトもまた重要です。通し方を一カ所間違っただけで操作性が悪くなることもあるので注意しましょう。

ネイキッドモデルのメーター、ヘッドライト周辺の取り回しに要注意

パイプハンドルをセパレートハンドルにカスタムすると、スロットルワイヤーの取り回しが低くなる。するとヘッドライトケース内に取り込まれる配線やメーターケーブルとの位置関係が純正のレイアウトとは変わる場合があるので、ワイヤーが無理に曲がらないように取り回し方を変更する。

セパハン装着でワイヤーの位置が下がったことで、ワイヤーの保護チューブがハンドルストッパーに挟まれて切れてしまったようだ。アウターワイヤーの被覆が切れたわけではないので内部に雨水などが入ることはないが、純正と取り回しが変わることでこうした影響が発生することもある。この軌道を修正しようよタイラップなどで上方に引き上げて固定すると、ハンドルを左右に切った時に突っ張ったりワイヤーの抵抗が増えることもあるので注意が必要だ。

カワサキゼファーのサービスマニュアルに記載されたワイヤー通し図。スロットルワイヤーはステアリングヘッドパイプの右側を通ってスロットルホルダーに取り付けられているようだが、その手前でメインハーネスやハンドルスイッチハーネス、ホーンハーネスをどのような位置関係で配置していくかが記されている。

同じくゼファーのキャブレター周辺の通し図から。29と30はイグニッションコイルのハイテンションコードで28はクラッチワイヤー。ハンドルを切った時にキャブレター近くで36のスロットルワイヤーが動くことはないが、こうした取り回しもメーカーのマニュアルに従うことでスムーズな操作感を得られる。

クラッチの滑りを防止するクラッチスプリングの張力に対向するため、そもそも操作性が重い傾向にあるクラッチワイヤーに対して、微妙なスロットル開度調整にもリニアに反応できるよう、スロットルワイヤーはできるだけ軽く操作できるよう設定されています。そんなスロットルワイヤーのコンディションを維持するには、インナーワイヤーの汚れを除去してにケーブルグリスを注入するメンテナンスが有効です。

それと同時に注目したいのがワイヤーのレイアウト、スロットルパイプからキャブレターやスロットルボディまでの取り回しです。スロットルもクラッチも、ワイヤーは小さなアールで曲げられてもスムーズに作動するよう設計されていますが、ハンドルを左右フルロックにした状態でも動きが渋くなったり途中で引っかかったりしないためには、どのような順序で設置されるかも重要です。

そんな小さなことを……と思うかも知れませんが、ワイヤーの途中でたった一カ所強く押されるポイントがあるだけで操作時の重さが変化することもあります。トップブリッジとアンダーブラケットの間にメーターステーやヘッドライトステーなどが集中する中にスロットルワイヤーが通るネイキッドモデルにとって、この部分の処理は慎重に行う必要があります。

ネイキッドモデルのメーター周りにはスロットルワイヤー、メーターやヘッドライトにつながるメインハーネス、クラッチワイヤー、ウインカーやホーンの配線などが入り組んでいます。バイクメーカーが新車を製造する際は、開発時に健闘した理想的なレイアウトでワイヤーや配線を通しています。しかし整備やカスタムでワイヤーや配線を着脱すると、復元時に通し方が分からなくなってしまうこともあります。この時に適当に作業してしまうと、ハンドルを左右に切った際にワイヤーと配線が干渉して突っ張ってしまったり、

スロットルパイプがスムーズに動かなくなってしまう場合もあるのです。

スロットルが多少重くてもそれがどうした、というのは間違いです。走行中に何かが起きてスロットルから手を離したり離れた際にすぐに全閉にならないと、ライダーはとにかく焦りますし危険です。そうした事態を防止するため、サービスマニュアルにワイヤーや配線の通し方が明記してある機種も少なくありません。メーター類やヘッドライトがカウル側にマウントされている機種はハンドル周りに比較的余裕がありますが、ヘッドパイプ周辺が混雑気味のネイキッドモデルは特に注意が必要です。

サービスマニュアルがない状態でメーターやヘッドライトやワイヤーを取り外す際は、事前にスマホで取り回しを撮影しておくだけでも復元時の参考になります。分解前がすでに純正状態かどうか分からない場合は、配線やワイヤーの突っ張りの有無を確認しながらハンドルを左右に切って、おかしな部分があれば通し方を変更しておきます。

POINT

  • ポイント1・スムーズなスロットル操作のためにはスロットルワイヤーのフリクションロスをできるだけ軽減することが重要
  • ポイント2・ハンドル周りに装着されるパーツが多いネイキッドモデルは、ワイヤーや配線のレイアウトがスロットル操作の軽重に影響する場合もある

ワイヤーを着脱した際は各部の曲がりが緩やかになるよう取り付ける

これはあるヤマハ車のスロットルワイヤーの取り回し。スロットルホルダーから出たワイヤーはフロントフォークインナーチューブの前を通ってフレーム内に入っていくのが正解。

インナーチューブの後ろ側を取り回すとフレーム内に入る際の曲がりも急になるなるため、スロットルの開閉が顕著に重くなる。この状態しか知らなければ、インナーワイヤーの潤滑不良だと判断するかも知れないが、ワイヤーグリスを充分に与えてもフリクションは解消しない。

取り回しが正常であれば、日常メンテナンスとしてインナーワイヤーをグリスアップするのは有効だ。スロットルホルダーやスロットルドラム部分など、ワイヤーの進路を変更する金具部分は曲がりがきつくフリクションロスが発生しがちなので、浸透性と極圧性が高いケミカルが有効。

ハンドルを交換して純正状態からスロットルホルダーの角度が変わる時は、各スイッチの操作性に支障がない向きにするだけでなく、スロットルワイヤーの向きや角度にも配慮すること。絞り角度を変更することでワイヤーの出方が変わりフリクションが増加することもある。

スロットルワイヤーの取り回しで注意すべきなのは、ワイヤー自体を着脱したりフロントフォークのメンテナンスを行った後の復元時です。インナーが錆びたスロットルワイヤーを交換する際は、スロットルホルダーからヘッドパイプ、ガソリンタンク下、フレームサイドからスロットドラムまで強く屈曲しないようスムーズに通すことが重要です。その途中でメインハーネスやイグニッションコイル、ハイテンションコードなどを跨いだり潜ったりしながら、さらにフレームのメインパイプの左から右に横断していく場合もあります。

先述の通り、バイクメーカーが開発を行う際はそうした諸条件をクリアしながらスロット操作が淀みなくできる場所を通しているので、ワイヤーを交換する際は正しい通し方を踏襲することが重要です。純正ワイヤーがそうであるなら別ですが、メンテナンスの際に自己判断でタイラップなどでワイヤーを結束するのも、思わぬ作動不良につながる場合があるので避けた方が無難です。

オイルやオイルシール交換でフロントフォークを取り外した後も要注意です。インナーチューブをアンダーブラケットからトップブリッジに通す際に、ワイヤーや配線をインナーチューブの前後どちらに通すかが重要です。スロットルワイヤーはインナーチューブの前側を通すことが多いようですが、これも愛車のサービスマニュアルのワイヤー通し図で正しいレイアウトを確認してから作業しましょう。

意外な原因としては、スロットルホルダーの取り付け角度がワイヤーのフリクションに影響を与えることもあります。純正ハンドルと純正スロットルホルダーの組み合わせなら、ハンドル側の穴とホルダー側のピンで位置や角度が決まります。しかしハンドルを交換する際にホルダー側のピンを削り落としてしまうと取り付け角度が定まらず、ホルダー出口部分でワイヤーが無理に曲げられてしまう場合があり、操作性に悪影響を与えることもあります。そのような場合はスロットルホルダーの角度を少しずつ変えながらスロットルを開閉し、ワイヤーがスムーズに動く位置で固定します。

ボルトナットで固定された部品を着脱する作業と比べると、スロットルワイヤーのレイアウトには明確な決まりがないように見えますが、通し方や他の配線との相互関係によって操作性に大きな影響が生じることもあります。スロットルを開ける際に何かが引っかかるような気がする、グリップから手を離した際にスパッと全閉にならないような時には清掃と潤滑だけでなくワイヤーの取り回しも確認してみましょう。

POINT

  • ポイント1・スロットルワイヤーを着脱する場合は純正の取り回し順に従って取り付ける
  • ポイント2・スロットルホルダーのとワイヤーの角度もスロットル操作のスムーズさに影響を与える

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