
エンジンメンテナンスで極めて重要なのが、各種調整作業である。クラッチならクラッチレリーズの調整、タペット調整がしっかりなされていなければ、カチカチッと気になるメカノイズが聴こえてくる。エンジン稼働時にカムチェーンの張りが弱いと、シャラシャラ系のカムチェーンノイズが聴こえてくることもある。オートカムチェーンテンショナーを装備したモデル、また、決められた操作手順で自動的に調整されるセミオートカムチェーンテンショナーもあるが、調整機能に不具合があることで、調整したつもりが、実は調整されていないケースもある。ここではカワサキミドル4気筒のセミオートカムチェーンテンショナーの調整&セットアップ実践してみよう。
摺動面の「平坦さ」がカギを握る
同じメーカーでも様々なタイプのカムチェーンテンショナーがある。単純な作りの押し棒でテンショナーを突っ張り、横から戻り防止のボルトとロックナットで固定するタイプ。カワサキミドルのこの年式は、シャフト端部がクサビ状のテーパーで、そのテーパー面を摺動させてプッシュロッドの戻りを防止する設計となっている。同じ部分ばかりが擦れてしまい、テーパー面が部分的に摩耗してしまう例もある。そうなるとカムチェーンテンショナーとしての機能が低下してしまう。今回はバネ2本のヘタリを考慮して新品部品に交換。プッシュロッドのテーパー面はすり合わせで対処することにした。
オイルストーンでしっかり磨き込む
この年代のカムチェーンテンショナーのテーパー加工部分=押し込み部分は、当たりが悪いと面がただれてスムーズに作動しなくなる特徴があるそうだ。確かに片摩耗していたので、凸凹をオイルストーンで磨き上げて平滑に慣らした。片側の斜め面をオイルストーンで磨き上げた。上が磨き後で下が磨き前の状態。フラット面が再現された様子を理解できるだろうか?こんな部分にWPC表面処理を施しても、高い効果を得られるはずだ。
回り止めピンがテーパー位置を決定

↑↑↑この鋼球がミソ↑↑↑
テンショナープッシャー側にスプリングをセットしてテンショナー本体に差し込みながら抜け止めのピンをセットする。プッシュバーにピン溝があるので位置確認しながらセットしよう。カムチェーンテンショナー本体をシリンダーのテンショナー孔に組み込む。オイル漏れを防止するOリングは新品部品に必ず交換しよう。横から押し込む戻り防止のテーパー面にはモリブデングリスを塗布しよう。スプリングをセットしたらキャップを締め付ける。この際には、スプリング端部とキャップの間にスチールボール(鋼球)をセットすることで、スプリングのキャップ内カジリを減らすことができる。スチールベールにはステムベアリングの鋼球を利用。ベテランメカニックのアイデアだ。このスチールボールがプッシャーの作動性を向上させる。カムチェーンテンショナーを分解洗浄する際には、小さなストッパーピンを紛失しないように注意しよう。今回はメインとサブのスプリングを双方ともに交換し、ヘタリ対策を施した。
スムーズに回る?バルタイ確認も忘れずに
カムチェーンテンショナーを復元したらクランクシャフトにレンチを掛けてゆっくり正転させる。違和感があってはならない作業だ。数回転後、1/4番上死点で止め、カムスプロケットの刻線の一致やカムチェーンピンの数を再度確認し直し、バルブタイミングが間違っていないか確認しよう。
- ポイント1・エンジンノイズの原因を特定しよう
- ポイント2・「調整したつもり」がそうではないこともある
- ポイント3・ 作動摺動性が高まる構造ならしっかり磨き込もう
現在の旧車ムーブメントに限らず、登場当時から根強いファンに支持され続けてきたのがカワサキミドル=空冷4気筒シリーズ。1979年に登場した初代Z500から、ゼファー400最終モデルまで、長年に渡る販売期間で、何度か対策されているのがオートカムチェーンテンショナーである。初期モデル時代の設計でも決して悪くないのだが、より良いテンショナー機能を目指してアップデートされてきた経緯がある。
エンジン腰上のオーバーホールを実践したカワサキミドル4気筒。この作業時には、取り外した部品を復元したが、その際に実施したのが、斜めにカットされたテーパー摺動部分の面出し磨き込みである。バックトルクによってリバウンドを直に受けるこの部分は、長年の渡る走り込みで摺動部分が偏摩耗し、凸凹当たりになってしまうことが多い。
この凸凹を放置したままだと摺動部分が固定化され、結果的には「カムチェーンを張り切れない原因」になることが多い。そうなるとオートカムチェーンテンショナーなのに、カムチェーン特有のシャラシャラ音が消えないエンジンになってしまうのである。
摺動部を磨いて復元する際には、2本のスプリングを新品部品に交換し、横押し部のエンドキャップとスプリングの間に「6mmの鋼球」をセットすることで、スプリングの回転作動性の維持とプリロードアップによる押し込み保持力のアップを同時に得ることができる。このアイデアは、カワサキ車専門のベテランメカニックに教わったものだ。
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