ブレーキレバーの握り始めや戻し終わりで「ググッ」とフリクションを感じることはないでしょうか?パッドが引きずるわけでもブレーキの利きが悪いわけでもなくレバータッチに違和感がある時、原因はマスターピストンかもしれません。そんな時はピストンをグルッと回すだけで解消することもあるので、一度試してみましょう。

ブレーキレバーがピストンを斜めに押すことがフリクション増加の原因になる?

ブレーキレバーを握る際に「ググッ」とフリクションを感じたら、ピボットの潤滑不足だけでなくブレーキレバーのヒールとマスターシリンダーピストンの潤滑不足やピストンの摩耗にも注意を払うことが必要だ。

ブレーキレバーのピボットは軸部だけでなくレバーホルダー面の清掃やグリスアップも重要。レバーホルダーの潤滑が不足するとレバーとの接触面が摩耗してガタが増えてしまう。レバーが摩耗する場合はレバー交換で対応できるが、レバーホルダー側が摩耗するとマスターシリンダー交換が必要なので、摩耗が進行しないようグリスアップしなくてはならない。

ピストンの端面にはブレーキレバーのヒールが当たった痕跡がくっきりと残っている。このマスターシリンダーは装着後それほど使用してないので摩耗も少ないが、長く使用すると凹みが深く幅広くなり、凹みの中でレバーのヒールがこすれる際のフリクションがレバーに伝わって違和感となる。またヒールが凹みにはまった状態でレバーを操作することでピストンに斜めの力が加わり、マスタシリンダーと擦れることでフリクションロスになることもある。

ブレーキはONかOFFだけのスイッチのような二択ではなく、オーディオ機器のボリュームのように0から100まで効力が連続的に変化することが重要です。そのためにはブレーキレバー、ブレーキキャリパー共に入力量と出力が比例しなくてはなりません。また入力のためのレバー操作やペダル操作も0から100までスムーズに作動することも必要です。

そんなブレーキ装置の中で、不快に感じるのがブレーキレバーのフリクションです。ブレーキの利き自体が悪くなるわけではないが、レバーを僅かに握るとどこかで引きずるような抵抗感がある。ブレーキレバーのピボットの洗浄とグリスアップを行っても症状が改善しない、という経験をしたライダーもいるのではないでしょうか。このような場合に確認したいのが、ブレーキレバーとマスターシリンダーピストンの当たり面です。

フロントブレーキのマスターシリンダーには、ブレーキレバーとマスターシリンダーピストンがほぼ直線的に配置されたアキシアルタイプと、レバーとピストンが直交するラジアルタイプがあります。最近のスーパースポーツモデルはラジアルタイプを採用する一方、オンロードからオフロードモデルまで多くのディスクブレーキ車のマスターシリンダーはアキシアルタイプと採用しています。

アキシアルタイプのマスターシリンダーのピストンは、ブレーキレバーのヒール部分で真っ直ぐ押し込まれていると思われていますが、実際はそうでなはない場合もあります。その理由はブレーキレバーのピボットと、レバーのヒールとピストンの当たり面が離れているためです。レバーのヒールはピボットを中心に円運動をするため、ピストンの端面には押す力と同時に円弧方向にこする力も発生します。

この力はピボットと当たり面がオフセットしている以上はどうしても発生するため、その影響が少なくなるようブレーキメーカーも考慮しており、ピストンを真っ直ぐ押せるようプッシュロッドを用いたブレーキレバーを採用している機種もあります。ただし普及モデルに関してはそうしたメカニズムを持たないレバーが一般的です。

ブレーキレバーがマスターシリンダーピストンを押す際に端面で円弧運動をするということは、簡単に言えばピストンは斜めに押されることになります。とはいえピストンストロークに対して斜め方向の力の成分は小さく、ピストン径に対してストロークが充分に大きいため、ピストンがこじられてフリクションロスの原因になることは多くはありません。

レバータッチの違和感の原因として大きいのは、やはりレバーのヒールとマスターシリンダー端面の当たりによるものです。ブレーキレバーのメンテナンス時にはピボットとヒール部分の清掃とグリスアップを行いますが、この際にマスタシリンダーピストンの端面の状態も確認しましょう。新品は平面ですが、ある程度使用したピストンはレバーのヒール形状に倣って凹んでいるかもしれません。

先に接触部分で円弧運動するレバーがピストンをこじることはないと書きましたが、ピストンの凹み部分を観察すると、擦れ痕が点ではなく面、あるいは線になっている場合、ピストンを押す力に加えて横方向への力も相応にあると判断できます。するとピストンにはマスターシリンダーの側壁に押しつけられる力が働くと同時に、ヒールがピストンの端面を横滑りする際のフリクションも発生します。それらが合成することで、レバーの握り始める際のフリクションや違和感につながると考えられます。

POINT

  • ポイント1・ディスクブレーキのレバーのストローク初期段階でフリクションロスを感じる際はマスターシリンダー端面の状態を確認してみる
  • ポイント2・アキシアルタイプのマスターシリンダーのブレーキレバーはマスターシリンダーピストンとの当たり面で横方向の動きが生じるためピストンをこじる場合がある

マスターシリンダーピストンを回してレバーとの当たり位置を変えるだけで症状が緩和することもある

ピストンの端部をプライヤーでつかんで回転させることで、凹み部分の角度を変える。ブーツごとつかむとねじれて切れてしまうおそれがあるので、ブーツとピストンの間にプライヤーを挿入してピストンだけを回すこと。同時にブーツ内にブレーキフルードが染み出していないことも確認しておく。

凹み部分が90°ずれるようピストンを回すことでレバーのヒール部分との当たり方を変えて、レバータッチの向上を試みる。ピストン側の凹みが著しい場合は充分な効果が得られないこともあるが、ピストンの凹みにレバーのヒールがはまり込まなくなることで、握り始めのフリクションが解消されることが多い。凹みが進行して凹みの周辺にバリが立っている時はピストン端面をオイルストーンでならすと良いが、その際はマスターシリンダーからピストンを抜き取ることが必要で、それならピストン交換した方が気分が良いのも確かなので判断が難しい。

復元時はピストンとヒールの当たり面、レバーホルダー、ピボットにグリスを塗布する。支点であるピボットと力点である当たり面がずれている以上、レバーのヒール部分がピストン端面を横滑りしながら押すことは避けられないが、グリスアップと摩耗状態の確認を励行することでレバータッチの悪化を先延ばしにすることができる。

このような場合、レバーピボットやヒール面のグリスアップだけでは症状が変化しないこともあります。ピストン端面の凹みは道路のわだちのようなもので、レバーとピストンの接触部分にグリスを塗布して潤滑を確保しても、レバーを握ればヒールは凹部に入り込んでピストン表面を横滑りするためです。

そんな時にお勧めしたいのが、マスターシリンダーピストンのローテーションです。ローテーションといっても難しい作業ではなく、マスターシリンダーボディに収まったままのピストンを90°回転させるだけです。日本のブレーキメーカーのマスターシリンダーピストンはサークリップで抜け止めされているので、プライヤーなどでピストン端部を摘まんで回しても抜けることはありません。

ピストンを90°回すことで端面の凹みの位置が変わり、ブレーキレバーのヒール部分との当たり面を変えることができ、ピストンを横方向に押す力がなくなります。またヒールがピストンをえぐるような動きも、凹部の位置を変更することで緩和されます。画像のブレーキレバーはピストンに対して面で接触するタイプですが、ピストンとのクリアランスを調整できるようヒール部分にアジャストスクリューが組み込まれたレバーは点で接触するため、ピストンの凹みが大きくなる傾向にあります。

このタイプのマスターシリンダーでは、アジャストスクリューの先端がピストンに触れてから実際に効力を発揮するまでにピストン表面を擦る動きがレバーに伝わり、握り始めのフリクションや違和感につながることが多いので、ピストンを回して当たり位置を変更することはレバータッチ改善に有効な場合が多いようです。

ただしピストンを回しても、その状態で使用することでレバーヒールとの接触痕はついてしまいます。それを抑制するには接触部分のグリスアップが有効ですが、いずれ凹みが生じて同様の違和感につながることは避けられません。これはアキシアルタイプのマスターシリンダーの構造からして致し方ないことなので、ピストン端面が大きく凹んでしまった時の根本対策としてはピストン交換しかありません。

とはいえ、レバーとピストンの当たり面のグリスアップとピストンのローテーションによって、メンテナンスを行わず乗り続けるのに比べればコンディションの良さが長続きするのは間違いありません。ブレーキレバーの操作性に違和感がある時は、まずはレバーピボットやピストンの当たり面の清掃と潤滑を行い、ピストン表面に凹みがある場合はピストンを回転させてレバーとの当たり位置を変更してみましょう。

POINT

  • ポイント1・レバーヒールが接触するマスターシリンダーピストンの当たり面が凹んでいる場合はピストンを回して当たり方を変更する
  • ポイント2・ピストンを90°回して変更した当たり面も摩耗したらピストンを新品に交換する
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