エンジンオイル交換時に必ず交換するよう推奨されているのがドレンボルトのガスケット(ドレンワッシャー)です。ドレンガスケットは自らが潰れることでシール性を発揮しますが、エンジンやボルトの座面の状態や使用するオイルの種類によってジワジワ滲むことも。そんな時はガスケットの種類を変更することでオイル滲みが収まる場合もあります。

ネジ山が傷んでいなくても漏れや滲むことがあるエンジンオイル

ポタポタと漏れるほどではないがドレンボルトがエンジンオイルでしっとりオイルで湿っている時は、オイルドレンガスケットの不具合を疑う。トレール車で林道走行を行った際に岩場にドレンボルトを部分を打ち付けると、その衝撃でクランクケースにクラックが入ってしまうこともあり、その場合はガスケット交換程度の軽作業では済まなくなる。余談だが、オイルドレンボルト前側のクランクケースの出っ張りは、走行中に跳ね石などの直撃を防止するためのガードとなっている

ドレンボルトを締め付けてもオイルが滲む時は、ガスケットを交換するだけでなくエンジン側とドレンボルトの締め付け座面のコンディションを確認する。ドレンガスケットには内径だけでなく外径にもいくつもの種類があり、過大なトルクで締めるクセがあると、クランクケースにガスケットの外径に沿った締め付け痕が付くこともあり、その締め付け痕からオイルが滲むこともある。

クランクケースのガスケット座面に線状痕がある場合は、オイルストーンでならしておく。この際にオイルストーンの当たりが斜めになるとオイル漏れが酷くなることがあるので、ドレン穴の周辺に干渉部分がある時は無理をしないこと。アフターマーケットのアルミ製ドレンボルトを使用している場合は、ボルト側の座面の状態も確認する。

オイルドレンボルトのガスケット(ドレンワッシャー)は、一度使用したら新品に交換するよう指定されています。それはドレンボルトを締めた際にガスケットが潰れることでシール性を発揮するためです。エンジン側のオイルドレン穴とドレンボルトの座面は、それぞれ表面が平らに加工されていますが完璧ではありません。

表面の僅かな凸凹や合わせ面の傾きをガスケットが吸収することでオイル漏れを防止しますが、ドレンボルトを一度締め付けて潰したガスケットには、クランクケースとドレンボルトの表面に倣った潰れグセが付いてしまいます。そのため一度潰れたガスケットを再使用すると、シール性が低下すると同時にエンジンやボルトとの当たり位置が変わって、オイル滲みや漏れが発生する場合があります。

ドレンガスケットには平板を打ち抜いたタイプと複雑に折り曲げられたタイプがあります。後者はクラッシュタイプと呼ばれることもあり、ボルトを締め付けると折り曲げられた部分が潰れてシール性が高まります。しかし一度潰れてしまうとそれ以上潰れないので、再使用する際はついつい初回より大きなトルクで締めがちになり、ネジを傷める原因になるので注意が必要です。

一方、絶版車や旧車でしばしば見られるのが、ガスケットを新品に交換してドレンボルトを締めてもオイルが滲むという症状です。これはエンジン側のボルト座面の状態が悪かったり、ドレンボルトの着脱を繰り返してきたことでネジ山がダメージを受けたことが原因になることが多いようです。

作業ミスでエンジン側の雌ネジをなめてしまったような場合は、リコイルなどで新たに雌ネジを作り直さなくてはなりませんが、ボルトに締め付けトルクが加わるものの、ネジ山は傷んでいるという状態もあります。またドレンボルトを取り付けた時にガタつきが大きいと、気分的にも充分な締め付けトルクが掛けづらくなり、それがガスケットに対する圧力不足につながり、ドレンボルト周辺にオイルが滲む原因になることがあります。

使用するエンジンオイルによって滲みや漏れやすさが左右されることもあります。絶版車に100%化学合成油を使用するとシールやガスケットから滲みやすくなるという話を聞くことがありますが、それは化学合成油は鉱物油に比べて浸透性が高いという特性があるためです。浸透性の高さ自体はクリアランスが小さい場所でも油膜を保持できる強みになりますが、絶版車ではそれがオイル滲みにつながる可能性もあります。

また化学合成油の中には、古いオイルシールやガスケットを膨潤、収縮させる成分が含まれていることもあり、それが滲みの原因になることもありますが、ガタが大きくなったネジ山を伝ってドレンガスケットから流れ出す場合もあるのです。

POINT

  • ポイント1・オイルドレンボルトのガスケットは潰れてシール性を発揮するので、一度使ったら新品に交換する
  • ポイント2・ドレンボルトを繰り返し着脱したり過大なトルクで締め付けるとエンジン側の雌ネジが傷んでオイルが滲みやすくなることがある

自動車用ではポピュラーなコーティング仕様のドレンガスケット

表面の黒い層がカジリを防ぐアンチスティックコーティング、その下にアスベストフリーコンパウンド、さらにその下に芯材となるアルミニウム板を使用するデイトナ製ドレンボルトガスケット。締め付け時の工具に対する手応えはアルミ製や銅製ガスケットに比べてソフトで、コーティング部分が潰れている感触が伝わってくる。

3枚入りと10枚入りの2仕様で販売されているデイトナ製ガスケット。内径=ドレンボルト径はM8、M10、M12、M14用の4サイズ。

このドレンボルトには外径22mmの純正ガスケットより小さなアフターマーケットの銅製ガスケットが使われていた。純正より小さな外径サイズを使うことで、エンジン側の座面に食い込んで傷になる場合もある。デイトナ製の外径は21mmなので純正同等サイズだ。

平板タイプのガスケット素材は相手の表面形状に追従できる柔らかさを備えた銅かアルミニウムというのが定番ですが、これらのガスケットでオイル滲みが発生する際に試してみる価値があるのがコーティングタイプのガスケットです。

ここで紹介するデイトナ製ドレンボルトガスケットはアルミニウム素材にアスベストフリーコンパウンド、アンティスティックコーティングを施した三層構造で、金属に比べて柔らかい二層がエンジンとドレンボルトの表面に密着して凸凹に追従することで高いシール性を発揮するのが特長です。デイトナではこの他にゴムをコーティングしたドレンガスケットも販売しており、いずれも絶版車や旧車のエンジンからのオイル滲み止めに効果があると好評です。

三層構造のガスケットにはM8、M10、M12、M14用の4サイズがあり、バイクはもちろんドレンボルト径が合えば自動車のオイルドレンボルトにも使用できます。そもそもコーティングタイプのドレンガスケットは自動車用で普及した部品ですが、バイク用品店で手軽に購入できることから自動車用として使用している人も多いようです。

オイルドレンガスケットはコーティングタイプでも一個あたり200円未満と安価な部品です。それに対して、滲みを止めようと過剰なトルクでドレンボルトを締めて雌ネジを傷めた場合の修理コストはガスケット代をはるかに上回ります。ガスケットを何度使い回してもまったく滲みが発生しないこともありますが、繰り返し締め付けることでガスケットが潰れる手応えがなくなり、意識せず強いトルクで締め付けることでネジ山にダメージを与えてしまうリスクもあります。

コーティングタイプのガスケットはオイルドレンボルトからの微妙なオイル滲みを防止する効果が期待できる上に、バイクのメンテナンスで最も基本的なエンジンオイル交換で余計な仕事を増やさないためにも有効な部品です。同じボルトの使い回しでこれまで運良く滲みや漏れがなかった人も、ジワジワ滲むオイルを見つけるたびにウエスで拭き取っている人も、愛車のドレンボルトのサイズに合った新品ガスケットを使用することをお勧めします。

POINT

  • ポイント1・金属素材の上にコーティングを施したガスケットは締め付け部分の表面が凸凹でも追従してシール性を発揮する
  • ポイント2・アフターマーケットのドレンボルトを使用する際はドレンボルトのネジ径に適合するサイズを購入する
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