
本来なら摺動潤滑性を高めるために塗布するはずのグリスが、経年劣化によってその役割が逆転し、クリアランスを埋める接着剤の如く固着してしまうケースがある。そんなときは、動きを良くするために防錆スプレーを吹き付け、固着したグリスを溶かそうと努力したりするものだが、それだけでは歯が立たないケースが多い。そんなときにこそ「熱」を利用することで、想像以上の結果を得られることが多い。ここではメンテナンス×熱利用の有効性を再確認してみよう。
ボルトが緩まない時には周辺を温める
ブレーキング中のディスクローターやブレーキパッドは数百度に達するとも言われている。つまりブレーキ関連パーツは「熱に強く」設計されるべきものである。その事実を逆手に取り、完全オーバーホール時には、熱を利用することで各部を分解しやすくなるといった事実もある。左右分割構造のキャリパー本体を締結するボルトは、長年の利用で、おおむねこのように固着してしまう例が多い。
特殊工具だけでは動かないケースも多々ある
一般的なオーブントースターでも、小物部品なら温めることはできるはずだ。オーブンを新しいものへ交換するような際には、キープしておくことでメンテナンス時に利用することができる。ブレーキキャリパーやキャブレター程度のサイズなら、十二分に使うことができるはずだ。オーバーホール時に本体を100℃前後まで温めれば、分解段取りとしては効果的なはずだ。潤滑浸透ケミカルを併用しよう。
二階建てオーブン「CV-Junio」に注目!!
メンテナンス環境やレストア環境に関するインフラ整備を念頭に置いた商品開発で数多くのユーザーに支持されているカーベック。同社から発売されているCV-Junior(CVジュニア)は、安心信頼のPSマークを取得した高温熱乾燥器で、内部容積が一般のオーブントースターとは異なり二階建てサイズで大きく、温度管理と時間管理の双方が可能なのが大きな特徴だ。
温度管理のフィードバックが可能
一般的な卓上オーブントースターでは、温度管理できる商品が意外と少なく、しかも簡易温度計が付属しているめ、実温度を確認しつつ温度調整しながら作業進行することができる。連続運転機能はもちろん、タイマーは最大で1時間!!サンデーメカニックはもちろん、プロショップでも利用されている例は多い。ケミカル反応が低い冬場は40℃程度に設定することで夏場と同等以上のケミカル反応を得ることができる。暖め過ぎ要注意なときでも実温度を知れるのが嬉しい。
- ポイント1・常温環境で無理してはいけないのが「緩まないボルト」
- ポイント2・温める=わずかな熱膨張で大きく変化する金属部品
- ポイント3・単品部品ならオーブン型の道具を上手に利用しよう
熱源には数種類あり、我々が普段使うものとしては火力や間接熱(熱風)などがある。その他の熱源として「熱湯」も見逃せない。違った場面でのメンテナンスになるが、例えば、水分で希釈し使うケミカル商品の場合は、熱湯(60~70℃程度が丁度良い)で希釈して利用することで、成分の活性化がより活発になり、冷水で希釈するのと比べて、遥かに高い洗浄分解力を発揮するケースが多い。以前に試してみたのだが、ガソリンタンク用サビ取りケミカルの原液を10倍に希釈して利用する際に、冷水希釈ではタンク内のサビを除去するまでに相当な時間を費やした。ところが、60~70℃の熱湯で希釈してガソリンタンクに注入し、その後さらにタンクが冷えないように毛布でグルグル巻きにしたところ、冷水処理時と同じ程度のサビでも、ひと晩の処理時間でサビを完全に除去することができたこともあった。しかもタンク内部の鉄板地肌が美しく輝いていた。冷水処理のときには、地肌が黒ずんでおり、その効果も明らかに違っていた(暖め過ぎも良くないので何度もテストしながら特性を知ることができた)。
ここでは、オーブントースターに注目してみよう。このオーブンはある意味、メンテナンスには欠かせない熱源と言える。例えば、締め付けトルクがキツく、しかもネジ山の腐食やネジロック剤によってボルトが緩まないブレーキキャリパーでも、キャリパー本体を温めることで固着が緩み、結果的にはボルトを外すための近道になるケースがよくある。キャリパーのピストンシールやダストシール、さらに締結ボルトなどの部品は、交換を前提にしたオーバーホールの段取り時的作業だが、冷間ではなかなか緩まないボルトが、温めることで何事も無くギュッと緩んでくれるケースは多い。
大きさ的に収まらない部品を温めたい際には、工業用ヒートガンやガスバーナーによる直火で加熱する方法もある。ただ、ガスバーナーは圧倒的に高温過ぎて、周辺部品やペイントを焼いてしまうなどの可能性があるため、そんな患部には、一般工業用のヒートガンを利用して部品を温めるのが一般的なので覚えておくと良いだろう。
バイクメンテナンスに於いて「熱」の利用は極めて重要かつ効果的である。そして、使い方を間違えなければ、驚きの結果を得られることが多い。バイクいじりを楽しみ、しかも納得の行く仕上がりを得るためには、様々なアイディアを搾り出し、それを効果的に実践したいものだ。
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