エンジンが発生する負圧によってフロートチャンバー内から吸い上げられたガソリンと空気を混ぜて混合気を作るのがキャブレターの役割です。負圧で吸い上げるという作用に注目したときにフロートチャンバー内の油面の高さが重要ですが、油面の変化に応じてフロートバルブが正しく動作することも大切です。ここでは油面調整時に見落としがちな要チェックポイントに注目します。

油面の高さがキャブレターセッティングのすべての基本


ジェットやニードル、ボディやフロートチャンバーなどすべてのパーツをキャブレタークリーナーに漬け込み徹底洗浄したら、組み立て時に必ずフロートの高さを測定し調整を行う。外観をきれいにしても油面が不揃いで混合気に濃い薄いが出てしまったら、せっかくの作業がもったいない。


1987年式スズキRG250ガンマのキャブボディ合わせ面からフロート下端までの油面基準は23.5mm。23.5mmに設定したフロートレベルゲージとフロートに大きな隙間がある場合、フロートチャンバー内の油面が高くなるため混合比は濃くなる。ジェットのセッティングが標準通りなのにかぶり気味の場合は、油面が高すぎないか確認する。


フロートバルブと接したフロートアーム中央の調整板を曲げることで、フロートの角度が変わることで油面が変化する。高すぎる油面を下げたい場合は、調整板をフロートバルブ側に曲げる。左右のフロートの高さが変化しないよう、調整板だけを曲げることが重要。


フロートアームの面よりも調整板を押し込むことで、フロート基準値の23.5mmに合わせることができた。オーバーホール作業中に調整板を曲げてしまった場合に再調整が必要なのはもちろんだが、アフターパーツメーカーのフロートバルブに交換した際に純正バルブと全長が変わってしまった時にも調整が必要となる。

ベンチュリー内を流れる空気の圧力と流量によってフロートチャンバー内のガソリンが吸い上げられ、エンジンの燃焼に必要な混合気を作るのがキャブレターの作動原理です。パイロットジェットやジェットニードルやメインジェットは、ベンチュリー内の空気の流れに応じて自動的に切り替わりながら適切なガソリンを供給します。

アイドリングから最高回転まで混合気を安定的に作り出すキャブにとって、最も重要なのはフロートチャンバー内の油面です。ガソリンタンクからフロートチャンバーに流れ込むガソリンは、チャンバー内部でフロートが浮き上がりバルブが閉じることで一定の油面となります。エンジンが動きチャンバー内のガソリンを消費するとバルブが開き、ガソリンタンクからガソリンが供給されて需給のバランスが釣り合います。

油面が高くなるとガソリンはベンチュリーの底に近づき、逆に油面が低くなるとベンチュリーの底から遠くなります。ただそれだけのことと思うかも知れませんが、キャブにとってはこれが重大です。ベンチュリーの出口から吸い出されるガソリンの流量は、あくまでベンチュリーを通過する空気の圧力や流量頼みになっています。

この時、ガソリンがベンチュリーの底に近ければ近いほど、吸い出すために必要な空気量は少なくて済み、底から離れるに従ってたくさんの空気が必要となることは想像がつくでしょう。コップのジュースを飲む時に、短いストローと長いストローではどちらが楽かを考えれば分かるはずです。

パイロットジェットもメインジェットも穴径によって通過できるガソリンの最大量が決まっていますが、その量は0か100の二択ではなく空気の量によって徐々に変化します。ガソリンの油面が高ければ、ベンチュリー内の負圧が小さくても吸い出されてしまうため、混合比は濃くなる傾向があります。逆に油面が低ければ吸い上げるために大きな力が必要となるため、吸入空気量が同じなら混合比は薄くなります。

たったそれだけで?と不思議に思うかも知れませんが、油面の高さが数ミリ異なるだけで混合比に影響が出るのがキャブレターなのです。機種ごとのサービスマニュアルに記載された油面がほんの僅かの範囲に収まるよう指示されているのもそのためです。

2個以上のキャブレターを使用している機種では、それぞれのキャブの油面に大きな差違がないことも重要です。せっかくジェットやニードルのサイズを揃えても、油面のバラツキによる濃い薄いが出てしまっては台無しです。フロート高さや実油面を使った油面調整はシビアな面、特にフロートレベルゲージを使った測定と調整はキャブレターの角度次第で微妙に変化することもあるので慎重さが必要ですが、フロートの高さによって油面が決まり、油面の高さによって混合比が変わることを意識することが必要です。

POINT

  • ポイント1・キャブレターのメンテナンスやオーバーホール時にはフロートの高さが規定値どおりになっていることを確認する
  • ポイント2・フロートチャンバー内の油面が高ければ混合比は濃くなり、低ければ薄くなる

油面バラツキの原因になるフロート油面調整板の摩耗


経年劣化でフロートバルブの当たり痕が付いた時や、腐食などでザラザラになった調整板は、金属ポリッシュで磨き上げることで機能回復が期待できる。フロートを開閉する際、調整板がフロートバルブをこじるような動きをする場合、バルブ後端のプランジャーが調整板に引っかかり気味になっていることが多い。


実油面が安定しない原因として、フロートバルブシート内側の汚れでバルブが閉じきっていないことも考えられる。金属ポリッシュで磨くことで、パーツクリーナーやキャブクリーナーだけでは落ちなかった汚れが取れることもあるのだ。針金などで擦ってシート面に傷が付くとさらなるガソリン漏れの原因になるので要注意。

2連キャブや4連キャブでフロートレベルゲージで静的な高さを揃えた後に、キャブレターを組み立ててフロートチャンバーにガソリンを流して実油面を測定すると、どうしても油面が揃わないことがあります。そんな時にチェックしたいのがフロートバルブやバルブシート、そしてフロート本体の調整板です。

フロートチャンバー内に油面が上昇してフロートが浮き上がると、フロートの調整板(ベロとも呼ばれます)がフロートバルブを押し上げて、先端のニードル部分がバルブシートに接することでガソリンの流入が止まります。

調整板とフロートバルブはバルブ後端のプランジャー部分で点接触しており、長期間に渡って使用することで調整板の接触部分に打痕がついたり凹みを生じることもあります。するとフロートが上下する際にバルブと調整板の当たり方が若干変わることで油面変化につながります。大きく窪んでしまうと修正は難しくなりますが、傷が浅いうちなら綿棒に金属磨き用ケミカルをつけて調整板を擦ることで、フロートバルブとの当たりが改善される場合もあります。こうしたフロートは交換した方が良いのですが、部品が販売終了となっている絶版車の場合はそうした手当も有効です。

実油面が安定しない場合、フロートバルブやバルブシートもチェックします。バルブ先端のニードル部分に線状痕がある場合、バルブ自体の僅かな傾きやバルブシートとの当たり具合によって気密性が低下して、フロートが浮いていてもガソリンが閉じきれなくなることがあります。またバルブシート側の当たり面に異物が挟まったり汚れが付着しても、バルブとの間に隙間ができてガソリンが流れ込んで油面が上昇し、混合気が濃くなる場合があります。

さらにバルブシートが取り外せるキャブの場合、バルブシートとキャブボディの間のOリングが劣化することで、フロートバルブが完全に閉じていてもボディとバルブシートの隙間から流れ込んだガソリンが油面を変化させるため注意が必要です。

フロートチャンバーにガソリンを入れる実油面測定では、静的なフロート高さ測定だけでは分からない症状によって油面が安定しないことがあります。そのような場合、やみくもに調整板を曲げるのではなく、冷静にフロートバルブの接触部分やバルブシートの状態を確認してみることが重要です。

POINT

  • ポイント1・フロートチャンバー内のガソリンを増減させた際に油面が安定しない場合、フロートバルブと接するフロートの調整板の表面を確認する
  • ポイント2・ゲージ測定でフロート高さを合わせてもフロートバルブシートの状態によって実油面が安定しないこともある
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