オンロード車でもオフロード車でも、小さなフリクションで前後輪をスムーズに回転させるにはホイールベアリングのメンテナンスが重要です。ベアリング交換時に使用する工具は、内径に密着するチャックを選択するベアリングプーラーが一般的ですが、それとは別にハブの内側から内輪を叩き抜くベアリングリムーバーもあり、ちょっとしたコツを覚えればベアリングサイズによらず使えて便利です。

リーズナブルな上に一本で何種類ものベアリングを取り外せるベアリングリムーバー


走行中にタイヤノイズとは異なる異音や微振動を感じる場合、ホイールベアリング異常の可能性がある。車重が加わると分かりづらい場合は、タイヤを浮かせて空転させるとゴロゴロ感が伝わりやすい。ベアリングを交換する際は、外側のダストシールやホイールカラーのコンディションも確認しておく。シールのリップで削られてカラーに線状痕が付いている場合、そこから水や汚れが浸入することもあるからだ。


クランク状のハンドルとハンマーで叩く打撃ポイントが離れているため、作業時に怪我をするリスクが少なく、内輪を叩く位置を定めやすいUNITベアリングリムーバー。手前側から挿入したリムーバーの先端は、奥側の内輪に接触させた状態で打撃する。

外輪と内輪の隙間にグリスを充填することで、サービスマニュアル上では定期的な洗浄やグリスアップに関する指示は特にないのがホイールベアリングです。ベアリングの外側には雨水や泥汚れが入らないようダストシールがあり、一応はメンテナンスフリーとなっています。

しかし実際には、内輪や外輪にどこかから水分や異物が入り込み、ホイールの回転に異状が発生します。タイヤを浮かせて空転させた時に「ゴロゴロ」とした手応えがあったら時すでに遅しで、それから慌てて洗浄やグリスアップをしても元には戻りません。

ダメージを受けたホイールベアリングを交換するには専用工具が必要です。よく知られているのは、内輪にボルトの付いたチャックを密着させて、ナットで引き上げるタイプのベアリングプーラーです。このプーラーはベアリングを手前に引き抜くため、貫通穴に組み付けられたホイールベアリングだけでなく、ベアリングホルダーが行き止まりになった止まり穴に組み付けられたベアリング(クランクケースによく見られるタイプ)も引き抜けるのが特長です。

ただし、この内掛けタイプの工具を使うには内輪用のチャックのサイズがベアリングに合致していることが必須条件となります。ベアリングの内径、すなわちシャフトの外径の多くは規格で決められたサイズに合わせることが多いため、チャックのサイズは8、10、12、15、17、20mmといったバリエーションが用意されています。外そうとするベアリングとチャックのサイズを合わせておけば確実に取り外せる信頼性の高さが魅力ですが、チャックの数が増える分だけ工具の価格は高くなります。

プーラーがベアリングを手前に引き抜くのに対して、ホイールベアリングは別の方法=叩き抜きで取り外すこともできます。叩き抜きとは、ホイールハブの内側から外側に向かってベアリング内輪を叩く方法で、貫通穴に取り付けられたベアリングには使えます。ホイールベアリングの場合、ホイールハブの両側面に圧入されたベアリングの間にディスタンスカラーが組み込まれており、マイナスドライバーや平ポンチでは叩きたい内輪をうまく捉えることができません。

そこで重宝するのが、工具ブランドUNITのベアリングリムーバーです。この工具はクランク状に成型されたシンプルな金属棒で、一見すると圧入されたベアリングを抜ける専用工具には見えません。しかしホイールハブに挿入する先端部分が絶妙にオフセットされており、ディスタンスカラーを押しのけつつ反対側のベアリング内輪に先端が引っかかるように設計されています。

手前側からリムーバーを突っ込み、ハブの内側から奥のベアリングを叩くことから、内輪径に関係なく使えるのも特長です。ベアリングによってチャックを交換する必要もないことから部品点数も1個で済み、その分リーズナブルなのもサンデーメカニックにとっては嬉しいポイントと言えるでしょう。

POINT

  • ポイント1・ベアリングサイズに適したチャックを内輪に密着させて引き抜くベアリングプーラーは、貫通穴に組み込まれたホイールベアリングだけでなく、止まり穴に組み込まれたベアリングも取り外すことができる
  • ポイント2・金属棒を曲げて溶接したベアリングリムーバーは貫通穴のベアリングにしか使えないが、ベアリングサイズに関わらず使用できリーズナブルなのが特長

ベアリングホルダーを傷めないよう、内輪を均等に叩くのがポイント


ベアリング表側の汚れはさほどでもないが、叩き抜いた裏側のシールには泥系の汚れがこってりと付着していた。林道ツーリングやトレッキングランで泥や水の中を走る機会が多いトレール車は、小まめに洗車していても見えない部分に汚れが堆積することもある。ゴロゴロ感がなくても、定期的に交換することでベアリング固着などの重大トラブルを避けられる。


片側のベアリングとディスタンスカラーが抜けたら、反対側のベアリングの内輪を狙うのは簡単だ。だが一カ所を集中して叩くとベアリングが傾きホルダーに食い込み傷つけるおそれがあるので、ハンドルを90°ぐらいずつ回して均等に叩き抜く。


内輪を叩いて抜いたベアリングは必ず新品に交換する。ドライバーなどでこじって歪んだダストシールも同時に交換する。内輪と接するディスタンスカラーの両端面がささくれ立ったり摩耗している時は、サービスマニュアルに記載されている全長サイズと比較して、必要ならば新品に交換する。


新品ベアリングを組み付ける際は、外輪サイズに合ったインストーラーで圧入する。ベアリングホルダーの一方にストッパーがある場合はそちらを先に圧入し、カラーを入れてから反対側のベアリングを圧入する。サービスマニュアルに組み付け順序が明記されている場合は、指示にしたがって組み付けること。

ベアリングの内輪に棒を突っ込んでハンマーで叩くだけで取り外せる単純明快さがベアリングリムーバーの特長であり魅力ですが、シンプルに考えすぎるとトラブルにつながる場合もあります。

もっとも注意すべきなのはベアリングの叩き方です。内輪の一カ所だけを集中して叩くと、ベアリングが傾いてベアリングホルダーの変形につながることがあります、ステムベアリングレースと同様に、ホイールベアリングを斜めに打ち込むのは致命傷につながりかねません。斜めに入る元凶は取り外し時のホルダー変形なので、とにかく真っ直ぐ叩き抜くことが重要です。

そのためには、リムーバー先端とベアリング内輪の接触位置を小まめに90°ずつずらしながら、コツコツと少しずつ叩くことが重要です。決して重いハンマーで強い打撃力を与えてはいけません。圧入されたベアリングが抜け始めるとつい同じ位置ばかりを叩きがちになりますが、クランク状のハンドルの向きで打撃位置を確認して、ベアリングが平行に抜けていることを確認しながら作業を進めます。

ホイールハブの内部形状によっては、ディスタンスカラーの傾きに大小ができる機種もあります。この場合、カラーが大きく傾く側のベアリングの方が内輪を叩きやすいので、本格的に叩く前にハブの左右からリムーバーを挿入し、先端が内輪により多く引っかかる方から抜くと良いでしょう。

また内輪を直接打撃することでレース面に打痕が付く可能性が高いため、リムーバーで抜いたベアリングは必ず交換しなくてはなりません。そもそも交換するためにホイールベアリングを外すわけですから、新品ベアリングを用意してから作業を行います。

さらにダストシールのリップ摩耗やダストシールと接触するカラーの摩耗によって雨水や汚れがベアリング内に入っていると思われる時は、ベアリングだけでなく周辺パーツも合わせて交換しておくことで、新品ベアリングの性能を長く持続することが可能です。

ホイールベアリングの取り外し作業では、ハンマーで直接叩くよりボルトを巻き上げる方がスマートなイメージですが、ベアリングホルダーを傷つけず取り外しができるのなら、使用する工具がベアリングプーラーでもベアリングリムーバーでも結果は同じです。車体やエンジンのメンテナンスで止まり穴のベアリングを交換する機会があるのならチャック交換式の引き上げ式プーラーが必要ですが、交換するのはホイールベアリングだけだというなら、リーズナブルなベアリングリムーバーを利用するのも良いかも知れません。

POINT

  • ポイント1・ベアリングリムーバーで内輪を叩く際は、ベアリングが傾かないよう内輪を均等に叩くのがポイント
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