エンジンオイル交換時に着脱するオイルドレンボルトは、機種によって異なるものの、多くがクランクケース下面に上向きに取り付けられています。逆さまになって上向きにねじ込む時には、特にネジの掛かり始めに注意が必要で、雌ネジを損傷すると一大事です。そんな時、リーズナブルな補修手段としてドレンボルト径を拡大するキットが販売されています。

ドレンボルトを外す前にボルト周辺の汚れを清掃するのが、ネジトラブル回避の最善策となる


全国展開の工具ショップ、ストレートが販売しているオイルドレンホール修正キットは、純正ドレンボルトサイズがM12×1.25mmとM12×1.5mm用の2アイテムがある。傷んだ雌ネジにコイルやプラグを挿入するタイプではなく、専用タップでM12の雌ネジをM13に拡大し、新たにM13サイズのボルトを取り付けるのが特徴。


M12の純正雌ネジをガイドにM13にサイズを拡大する専用タップとドレンボルト、銅ワッシャーを1セットとしてドレンホール(ドレンボルトの雌ネジ)を補修する。


ストレートのキットはショップなどのプロユースを想定して、6個のドレンボルトと12枚のワッシャーが入っている。

エンジンオイル交換時にクランクケースから取り外すオイルドレンボルト。ボルト径はM10 、M12 、M14 のように太く、ネジピッチも1.25や1.5といった粗目が大半なので、着脱時にネジを傷めるようなことは少ないと思われがちです。

しかしクランクケースの下面に上向きに取り付けられたボルトの回転方向を誤認したり、地面に寝転がるのをためらって指先だけで取り付けようとしてネジを斜めに差し込んだりして、トラブルになることも少なくありません。

そして想像以上に多いのが、ボルト周辺の汚れの噛み込みです。トレール車で林道ツーリングを行うとエンジンや足周りが泥だらけになるのは日常茶飯事で、オンロード車でもツーリングで雨に降られると前輪が巻き上げた雨水と砂利でエンジン下部がコーティングされるのは珍しくありません。

オイルを抜く前に洗車を行えば良いのですが、エンジン下面が汚れたままドレンボルトの着脱を行えば、当然エンジン側の雌ネジに汚れが付着することもあり、その状態でドレンボルトを取り付ければネジ山に砂利が噛み込みます。ボルトに付いたガスケットがエンジンに接するまでは指で回すという締め付け時の原則を守れば、砂利が噛み込んだ時点で手応えが変化するので気がつくはずです。しかし最初からラチェットレンチなどの工具で締め始めると、多少の引っかかりは工具で回せてしまいます。これがトラブルの原因となります。

ある程度まで進んでから「これ、おかしくないか!?」と気づいた時には、ボルトが締めも緩めもできない状態で、一度緩めたら二度と最後まで締められない、またはオーバートルクを承知で締め込んで雌ネジを潰してしまうというのがありがちなパターンです。バイクのクランクケース(オイルパン)はアルミニウム製であることが多く、スチール製のドレンボルトの方が硬度が高いため、負ける時はエンジン側というのが通例です。

バイクメンテの失敗では後悔先に立たずという例が数多くありますが、中でもオイルドレンボルトの損傷は発生頻度が高くダメージが大きい事例です。砂利や汚れを落としてからボルトを緩めれば良かった……、ワッシャーがクランクケースに付くまで指で締めていれば……と落胆するなら、洗車の手間や地面に寝転ぶ手間や面倒ぐらい惜しまないようにしたいものです。

POINT

  • ポイント1・エンジン下面の砂利や汚れをそのままにしてオイルドレンボルトを外すと、取り付け時に雌ネジとボルトの間に噛み込みネジ山が損傷する
  • ポイント2・ドレンボルトに限らず、指で回して取り付けて引っかかりを感じた際は一度取り外して、ネジを清掃してから再び取り付ける

ボルトの種類は限定されるが、傷んだ雌ネジをタップで拡大して太いボルトで補修するキットがある


上が純正のM12のドレンボルトで、下が修正キットのM13ボルト。リコイルなどはM12の雌ネジをリコイル専用タップで拡大して、挿入したコイル内径がM12になるよう設計されている。対してこの修正キットはM13のタップを立てたらそのままM13のドレンボルトを取り付ける。そのため純正ドレンボルトは使用できない。


タップハンドルに取り付けたM13タップで、損傷したM12のドレンホールに新たな雌ネジを切り直す。元のボルト穴に対して斜めに雌ネジを切るとドレンボルトがエンジンに密着せずオイル漏れ原因になるので、タップが傾かないよう角度を慎重に確認して作業すること。


M13タップで雌ネジを作ることで、キットのドレンボルトが装着できる。雌ネジを傷めないよう作業することが大前提だが、万が一損傷した場合はこのキットでリーズナブルに修理できる。

オイルドレンボルトに限らず、雌ネジが損傷した時の補修にはいくつかの方法があります。取り外しできるナットなら新品に交換し、簡単に着脱できるパーツなら新品に交換して対応できます。オイルドレンボルトの雌ネジはそうした方法が使えないので、新たに雌ネジとなる素材を挿入するリコイルなどを使うのが常套手段となります。

リコイルの場合、ステンレス製コイルを挿入した後は損傷したネジサイズに戻るのが特徴です。M12×1.5mmの雌ネジが潰れた場合、リコイルならM12×1.5mmに修復できます。

これに対して、傷んだドレンホールにタップを立てるだけで雌ネジを修正できるキットがあります。ここで紹介するのは全国展開の工具ショップ、ストレートが販売している修正キットで、M12×1.25mmとM12 ×1.5mmの2サイズが用意されています。この製品の特徴は、損傷した雌ネジに対して立てるタップが、そのまま新たなドレンボルトの雌ネジになるという点です。

リコイルを初めとしたコイルやプラグ挿入型の修正では、コイルやプラグを挿入するために元の雌ネジサイズを拡大します。雌ネジを拡大するから修正後のコイル内径が元のボルトサイズに戻るのです。一方この修正キットは、損傷したM12の雌ネジをガイドにM13のタップで雌ネジを切り直し、新たにM13サイズのドレンボルトを取り付けます。

これによりコイルやプラグを挿入する工程を省くことができ、リーズナブルな価格設定が実現しています。またコイルやプラグタイプの施工ミスでありがちな、拡大した雌ネジとコイル外側からのオイル漏れの心配もありません。ただし新たなドレンボルトの直径がM13になるため、純正のドレンボルトは使えなくなります。また純正ドレンボルトサイズがM10、M14の機種にも対応できないので注意が必要です。

そうした制約はあるものの、純正ドレンボルトがM12×1.25mmとM12 ×1.5mmであれば、傷んだ雌ネジをガイドにキットのタップを立てることで修正できるのは魅力です。ただしバイク用のアルミニウム製オイルパンは容易に斜めに切り進んでしまうので、バイクを横倒しにしたり、作業者が仰向けに寝転がったりするなど、ネジ穴に対してタップを垂直に維持し続けることが重要です。タップを立てるだけと甘く考えて下穴に対して斜めに雌ネジを切ってしまえばさらに窮地に追い込まれるので慎重さが必要です。

雌ネジを損傷するにはそれなりの理由があり、作業者の不注意や雑な作業が原因となることがほとんどです。それでもダメージを与えてしまった場合には、ここで紹介するような道具でトラブルから脱出しましょう。

POINT

  • ポイント1・損傷した雌ネジの修正にはコイルやプラグを挿入する方法と、雌ネジサイズを拡大する方法がある
  • ポイント2・損傷した雌ネジにタップを通すことでネジサイズを拡大するタイプの補修キットでは、ドレンボルトのネジ径も純正より拡大される
コメント一覧
  1. 匿名 より:

    洗わずに泥や異物で傷めてしまう事や、締めすぎてしまうことなど、注意点を理解している人と、そうでない人はいますよね。

    他の修理工場で傷めたまま締めているケースや、ワッシャを交換していない場合もありますので、不具合が無くて当たり前の感覚で作業すると、思わぬ時間を取られる可能性がありますね。不具合の度合いによって色んな方法を知ることは助かります。無意識な作業は危険ですよね。

  2. 大西徹 より:

    こんなのがあるんですね。
    ワタシも以前、別の場所ですがネジ山を崩した経験が有り、それ以降怖くて自分で整備が出来ない人になってしまいました。
    幸い義理の弟が整備士なので、点検、整備はほとんど任せっきりです。

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