経年変化や洗車時の拭き取り傷が重なって、気がつけば「なんだか愛車がくすんで見える」というのは絶版車にありがちな症状です。目立った傷やサビがなければ、塗装表面を一皮剥けば輝きを取り戻せることもありますが、問題は道具です。磨き専用のポリッシャーがあれば理想的ですが、もっとリーズナブルはドリルドライバーでも想像以上の仕上がりを得られることもあります。

細かな汚れやホコリの取り除き方ひとつで塗装に傷が付くこともある


紫外線による日焼けや大きな傷がなくても、30年以上の年月によって全体的にくすんで見える絶版車は少なくない。ワックスを塗ると一時的にツヤが出るが、効果は短期間しか持続しないという時には、ポリッシングで一皮剥くという選択肢もある。

屋外で使用するバイクや自動車にはホコリや砂利や雨水、ブレーキパッドの摩耗粉や鳥のフンなどさまざまな汚れが付着します。そうした汚れを落とす際は、水道水を掛けてから洗車用のシャンプーを泡立ててスポンジで優しく包み込むのが基本です。カーシャンプーの主成分は食器用洗剤と同様の界面活性剤で、塗膜と汚れの間に入り込んで汚れの吸着力を低下させて剥がし落とす効果があります。

水だけ掛けても汚れが落ちるし……と思うかも知れませんが、界面活性剤で浮き上がっていない汚れをスポンジで落とすのは、ホコリや砂利を擦りつけているのと同じです。1度のスポンジだけ洗車でいきなり傷だらけになることはありませんが、同じ作業を繰り返し行うことで、塗装表面は徐々にツヤ消し状態になっていきます。

朝から夕方までツーリングでたっぷり走って、自宅に戻ってバケツの水に浸したウエスでバイクの汚れを拭って余韻に浸るというのもライダーの楽しみのひとつですが、ここにもカーシャンプーを使わないスポンジ洗車と同様に、汚れを擦りつけるリスクがあります。

いずれも乾いたウエスで擦るような残虐さに比べればまだ良い方ですが、塗装へのダメージを避けながら表面に付着した汚れを除去するには、シャンプーで汚れを浮かせるというプロセスがとても重要なのです。

洗車時の小キズが軽微なうちはワックスで光沢がよみがえることもありますが、これはワックスの油分によって傷が埋められているに過ぎず、脱脂洗浄すれば再び傷が現れます。またワックスを塗りすぎることでワックスの表面に汚れが付着しやすくなるので、頼りすぎは控えた方が良いでしょう。ただ、洗車の際は常にシャンプーを使っていても、ツーリングで雨に降られればタオルやクロスで拭き取るでしょうし、ライディングウェアが擦れることで付く小キズも避けられません。

POINT

  • ポイント1・洗車時の小キズを避けるには、洗車用シャンプーで汚れを浮き上がらせてからスポンジで拭き取る。水を併用してもシャンプー無しでスポンジやクロスを使うと、塗装表面を引きずられる汚れが研磨材となって傷の原因になることも

汚れを落とし傷を目立たなくするならドリルドライバーのトルクで充分な場合も


ドリルドライバーで磨き作業を行う場合、チャッキングに軸付きパッドを取り付け、そのパッドに面ファスナーでスポンジやウールバフを貼り付ける。電動ポリッシャーに取り付けるバフはφ150mmやφ180mmがポピュラーだが、ドリルドライバー用の軸付きパッドはφ50mmやφ75mmと小径になる。小径な分だけ小回りが利くが、面積が広いカウルを磨くならφ150mmやφ180mmの方が作業効率が良い。


φ75mmのパッドにソフトタイプのスポンジバフを装着した例。メーカーによってラインナップはまちまちだが、工具ショップのアストロプロダクツの場合、スポンジバフにもハード、ミディアム、ソフトの3タイプがある。目の粗いコンパウンドには腰の強いハードスポンジ、細かいコンパウンドは柔らかいソフトスポンジを組み合わせるのが基本だが、この組み合わせは一概にどれが正解とは決めづらい。


マスキングテープでエリアを決めて、極細目コンパウンドで軽く磨いてみる。一度磨いて確認したスポンジに紺色の塗料が付着したため、強く押しつけられなくなったが、表面を引っ掻く程度では回転傷が余計に目立つので、くすみの取れ具合と塗料の落ち具合の両方を気にしながら作業を進める。


磨き前の右半分も目立った傷が付いていたわけではないが、ドリルドライバーで軽くポリッシュしただけでツヤの深さや蛍光灯の映り込みの差は歴然。一皮剥いて下地を作ることで、コーティングやワックスの効果もアップする。


コンパウンドで磨く際に、クリアのトップコートが施されているか否かは要注意ポイント。このようにスポンジに塗料が移る場合、塗装表面を磨くと同時に塗料自体が削れているので、調子に乗っていると下地が出てしまう。特に塗膜が薄くなりがちなエッジ部分は慎重に作業しよう。

そうした傷を少しでも目立たなくするために行うのが磨き作業=ポリッシングです。ちょっとした傷はコンパウンドで磨けば消えると思っている人が多いと思いますが、磨き作業を仕事としているポリッシング業者からすると、傷が「消える」というのは若干ニュアンスが違うようです。つまり、コンパウンドで行っているのは現在の傷を目立たなくするために傷の「目」を細かくしているだけで、塗装直後の塗り肌まで戻ることはないそうです。

これは#240や#400で目立つ研磨痕が、#600、#800、#1500 と粒度を細かくすることで徐々に滑らかになっていくサンドペーパーと同じです。極細目のペーパーで擦った傷をさらに細かくするのがコンパウンドの役目と考えれば、目では見分けられないほどの傷まで細かくするのが研磨と言っても良いかも知れません。

磨きたい場所が3×3cm程度の小範囲であれば、マイクロファイバークロスにコンパウンドを垂らして指で磨いても事足ります。しかし広範囲になると手磨きではムラが出やすく作業時間も掛かるため、電動ポリッシャーを使った方が効率が上がります。

とはいえ磨き作業用のポリッシャーは単機能で価格も高額になりがちです。そこで注目したいのが、日曜大工でも重宝する電動ドリルドライバーです。磨き専用の電動ポリッシャーは、研磨用バフの回転方式によってシングルアクション、ダブルアクションなどがありますが、いずれのタイプもモーターのトルクが大きく、研磨力が高いことが特徴です。

研磨作業で使用する液体コンパウンドは、圧力を加えることで破砕して研磨力を発生します。手磨き作業でも軽く擦るのとの力を入れて擦るのでは研磨具合が異なるのと同じです。その点では、電動ドリルドライバーのモータートルクはポリッシャーにかなわないため、目の粗いコンパウンドで深く削る作業に適しているとはいえません。しかしクリア塗装のくすみや水あかといった比較的軽度の磨きであれば、手磨きとは比較にならないほど短時間で均質な作業が可能です。

ここで紹介しているのは30年以上昔のバイクの外装パーツで、充電式の電動ドリルドライバーにバフスポンジを取り付けてコンパウンドで磨くことで、まさに一皮剥いたようにくすみが取れて深いツヤがよみがえりました。比較画像ではあまりの差にワックスでも塗り込んだのでは……と思われるかも知れませんが、数分間磨いただけで劇的な効果がありました。

電動ドリルドライバーをポリッシャー代わりにする際はサンディングパッド、ポリッシャーパッドと呼ばれるアタッチメントを介してバフを取り付けます。またバフにはウールバフとスポンジバフがあり、目の粗いコンパウンドはウールバフを、目の細かいコンパウンドにはスポンジバフを組み合わせるのが一般的です。ただし塗装の状態やモーターのトルク、回転数や塗装面に押しつける力によって研磨能力と仕上がり状態は変化するので注意が必要です。

塗装面とコンパウンドの組み合わせの見極めが難しい時は、研磨力の弱い組み合わせから試していくのが無難です。目の粗くても細かくても、コンパウンドが塗装面を削ることに違いはないので、細かい目でくすみや小キズが消えた方がより効率的だからです。

また塗装がクリア仕上げであるか否かも要注意ポイントです。上塗り塗装=カラーコートで終了し、クリア塗装=トップコートがない部品をコンパウンドで磨くと、いきなり塗装が削れていきます。画像のシングルシートカウルを磨いたところスポンジバフに紺色の塗料が付着したため、極細目のコンパウンドを押しつけすぎないよう磨き作業を行いました。とは言え圧力を加えないと回転傷がつくだけでくすみが取れないので、いきなり大きな面から始めるのではなく、目立たない場所を磨いてクリアの有無を確認してから本格的な作業に取り掛かることが重要です。

床の間のお飾りでなく実際に乗っているバイクであれば、塗装に小キズがついたりくすむのは避けられません。そんな時は、身近にある日曜大工道具を転用して、どの程度の磨き効果が見込めるかをお試ししてみると良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・ドリルドライバーは磨き専用のポリッシャーに比べてトルクは弱いが、小キズやくすみ取りなど軽度の研磨では十分機能することもある
  • ポイント2・塗装の状態に応じて、コンパウンドは目の細かいものから始めるのが無難
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