ちょっとした立ちゴケでだけでも、状況によってはインナーチューブが曲がってしまうことがある。また、車検が切れたので、車体カバーを被せて保管しておいたのに、気が付いた時にはインナーチューブ表面に点サビがブツブツと……といったことも少なくない。快適走行の要は前後サスペンションの作動性。ここでは、その作動性を左右するインナーチューブのコンディションに注目してみよう。

撮影協力:東洋硬化 https://toyokoka.com/

曲がっていては作動性が低下

作業依頼者から届いたインナーチューブは、作業前に厳密なデータ測定が行なわれる。仕上がり寸法と比較するためには、極めて重要なデータ収集作業であり、曲り寸法などの詳細データが精度管理シートに書き込まれる。旧車になると補修部品のインナーチューブが販売中止になり困ってしまうが、そんなモデル用部品の依頼が多いそうだ。特に昨今の旧車絶版車ブームによって、作業依頼数も増えている。人気旧車にはリプレイス部品があるが、必ずしもすべての旧車をカバーしているわけではない。

曲がり測定→曲がり修正から始まる



曲がっているインナーチューブは、油圧プレスによって修正される。ただし、極太インナーチューブは肉厚が薄く曲げ直しによってシワが寄る傾向があるため、修正できないケースも数多いそうだ。小排気量車や旧車系の細いインナーチューブモデルは、強度確保のために肉厚が厚いため、曲がりは逆に修正しやすい傾向のようだ。一方、極太インナーチューブは軽量化により薄く、曲がり修正に適していない。

サビは地肌から削り取られる





再硬質クロームメッキ処理を施す前に、旧メッキ層はすべて剥離処理され、インナーチューブ素材表面が露出させる。その後、旋盤切削によって表面を削ってサビを落し、金属地肌を出す。深いサビがあるときには、そのサビが消えるまで切削処理が施される。インナーチューブの再生依頼品は、1本1本コンディションが異なるため当然ながら作業内容はまちまち。中には曲がりなど一切無く、僅かな点サビのために再生処理しなくてはいけないケースもある。前工程をすべて済ませたのちに、メッキ層で硬質クロームメッキ処理(ハードクロームメッキ)が施される。

作業前と後、ビフォー→アフターその違い!!



全面メッキ仕上げではなく、オイルに浸りアウターチューブと摺動しない部分は、メッキ処理されていないインナーチューブもある。そのようなタイプや箇所は、テーピング処理によって対応されているようだ。逆に、ステアリングステムクランプから上の部分がメッキされていない純正部品(コストダウンの関係で)の場合は、摺動部分と同じようにハードクロームメッキ仕上げで依頼することもできる。これだけ美しく仕上がれば、組み立て作業もスムーズに進行する。再生ハードクロームメッキは、メーカー純正部品のハードクロームメッキ仕上げよりも高品質に仕上げられているため、処理後は純正部品と比べて圧倒的にサビにくい特徴もある。

特殊な部品加工の請負も………

分解可能なリアショックは、ダンパーロッドの再メッキ依頼も数多いらしい。一体型のクランクシャフトに関して、ダイナミックバランスの依頼のみ対応している。撮影協力していただいた福岡県久留米市の東洋硬化には、ダイナミックバランサーもあるのだ。

POINT

  • ポイント1・ 旧車に限らずインナーチューブの再生は可能
  • ポイント2・ 倒立フォークはボトムケースを取り外して作業依頼
  • ポイント3・ コンペモデルの倒立フォークはチューブ肉厚が薄く曲がり修正には不向きなものが多い

保管環境が悪かったり、車検切れなどで乗れない期間が続くと、気が付いたときにはインナーチューブの輝きが曇り、ポツッ、ポツッとイヤなツブツブサビを発見!!そんな経験を持つバイクユーザーは数多いはずだ。特に、軒下保管で「車体カバーを被せたまま」というのが一番危ない!!現段階で愛車がそのような状態だったとしたら、このリポートを読む前に愛車の状況を確認したくなるはずだ。仮に、インナーチューブが汚れて輝きがなかったり、薄っすらサビが発生し始めている状況なら、ウエスに防錆スプレーを吹き付け、インナーチューブの隅々まで磨き上げたいものだ。手抜き作業で防錆スプレーを吹き付けたままにすると、逆にホコリや汚れを吸い寄せ、それがサビの原因になることもあるので要注意だ。

往年の旧車人気が活況の昨今。それと同時に注目されているのが、補修部品の調達である。人気モデルの旧車の場合は、新品部品を多用して組み立てられるほど、充実した補修パーツやリプレイスパーツが揃っている。70年代以前(80年代以前でももはや当然)に誕生したモデル用の純正部品は、特別なケースを除き、もはやメーカー在庫は期待できない。インナーチューブを例にしても、真っ先に在庫が無くなるバイクメーカーもある。

サビが酷くて使えないようなインナーチューブでも、驚きの再生処理技術で、メーカー純正部品に決して劣らないどころか、高品質な仕上がりによって、メーカー純正インナーチューブと比べて、サビにくくなる仕上がりを得られるケースもある。福岡県久留米市の東洋硬化が請け負う「インナーチューブの再生サービス」がまさにそれだ。

転倒が原因で曲がったインナーチューブ、輝きを失ってサビでまっ茶になってしまったインナーチューブでも、高品質な再生サービスが可能。倒立フォーク用や極太で薄肉な正立インナーチューブの場合は、曲がり修正でシワ寄りが出てしまうケースがあるため再生できないこともある。また、過去に曲げ直し例があるインナーチューブの場合は、再修正時にシワが出てしまい修正不可なこともある。また、補修再生依頼ではなく、フロントフォークやリアショックの摺動抵抗を低減するために、イオンプレーティングやチタン加工と呼ばれる様々な特殊表面処理加工を請け負っているのも東洋硬化の特徴。レーシングコンストラクターから、特殊加工の依頼を数多く請け負っているのも同社の特徴である。

撮影協力:東洋硬化 https://toyokoka.com/

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