シリンダーのボーリングで重要なのがピストンクリアランス。クリアランスが小さすぎると「潤滑不良」に陥り、繰り返し稼働し続けることで焼き付きの原因になってしまうことがある。逆に、クリアランスが大き過ぎてしまうと、コンプレッションの低下やマフラーから燃えたエンジンオイルが白煙となって吹き出すことになる。ここでは「ボーリング作業」と「ホーニング作業」が、一体どのようなものなのか?を知り、エンジンコンディションを知るうえで重要なこれらの作業を、理解しよう。

顕微鏡で見たシリンダー内壁はザクザク

100分の1ミリ単位でボーリング加工されるシリンダー内壁。その後、専用の砥石で磨くことで「ホーニング」作業が行なわれる。このホーニング時に研磨される寸法は、ボアサイズによっても異なるが、片面30~50/1000mm、直径でも最大で0.1mm程度。原付クラスは、ボアが小さいので、仕上げ研磨量はさらに少なくなる。一般のホーニング仕上げは、1種類の砥石で仕上げ寸法まで加工される。一見では平滑に見えるシリンダー内壁だが、顕微鏡レベルで確認すると、その表面はギザギザのザクザクになっている。このジグザグの谷側がクロスハッチの「溝」で、オイル溜まりとなり潤滑性を保つ。

「プラトーホーニング」の意味





一般のホーニングは1種類の砥石で仕上げるのに対し、プラトーホーニングは仕上げ寸法に達する直前まで硬い粗目のダイヤモンド砥石で、あえて深くギザギザに加工を施し、その後、プラトーホーニング専用の極細目砥石を利用し、ユーザーが希望するピストンクリアランスで仕上げられる。極細目のホーニングによって山が平滑平坦になり「高原=プラトー」と呼ばれるいわば平原ができる。このプラトー部分がピストンによる摺動をしっかり受け、ギザギザに仕上がった谷部分にオイルが溜まり油膜を保持。したがってピストン摺動に対する潤滑性が極めて高くなる。

面租度計で厳密に測定





高精密な面粗度計によって、仕上げられた内壁の状況を測定中。データモニターに表示される数値が大きいほど最低点と最高点の差が大きく、測定器に現れるギザギザのモニタニングを確認することでもプラトー?高原が形成されている様子は理解できる。面粗度測定器によってミクロン単位でクロスハッチ溝の深さを測定しグラフ化。そのプリントアウトをシリンダー納品時に添付するのが井上ボーリングでもある。

真円度を様々な角度で測定



メーカー発行の純正サービスマニュアルにも記載例があるが、ホーニング後のシリンダー内壁は、上段、中段、下段それぞれの前後方向と左右方向の仕上げ寸法を測定。それぞれの方向で同一寸法もしくはボアサイズに対する許容範囲に収まっていなくては精密なボーリングとは呼べない。ホーニング担当技師は、各作業工程にてシリンダーゲージで仕上がり状況を測定しながら作業進行している。

撮影協力/ iB井上ボーリング www.ibg.co.jp

POINT

  • ポイント1・精密な機械加工仕上げなので内燃機部品加工のプロショップで依頼するのがボーリングとホーニング
  • ポイント2・ クリアランス数値を決定変更できるのは、依頼者であるエンジンチューナー
  • ポイント3・ プラトーホーニングの採用によって、極めて短時間でナラシ運転は完了できる

一般的なホーニング仕上げは、ボーリング加工によって掘られたシリンダー内壁を専用砥石で磨き「クロスハッチ」と呼ばれる加工溝を残しながら指定寸法に仕上げる作業を言う。具体的には、ピストンクリアランスを「5/100mm」に設定するなら、仕上げ寸法の手前でボーリング=ツール(刃具)を利用した切削作業を止め、ホーニング専用砥石で内壁を磨き、ピストンの外径寸法に対して5/100mm内径を大きく仕上げる。この寸法差が「ピストンクリアランス」と呼ばれる。ホーニング工程でシリンダー内壁に付けられたキズが「クロスハッチ」と呼ばれ、この溝がオイル溜まりとなって潤滑作用を行い、ピストンの焼き付きを防ぐ仕組みとなっている。

機械加工でシリンダー内壁を徐々に拡大しながら削り取る作業工程を「ボーリング」と呼び、ボーリング完了後に、専用砥石でシリンダー内壁を磨き仕上げする工程を「ホーニング」と呼ぶ。つまり、どちらかの作業だけで終了するのではなく、それぞれの作業が1セットになって完成するものだと知っておこう。一般的に、オーバーサイズピストンに組み換え修理する際の、内燃機加工を総称して「ボーリング」と呼ぶことが多い。

一般的なホーニングは、同じ深さのクロスハッチが全体的に付く仕上がりとなるが、プラトーホーニングと呼ばれる技術では「プラトー=高原」をシリンダー内壁に形成し、高原と深いクロスハッチ(谷)にオイル溜まりを設けている。これによって、ピストンスカートと摺動するシリンダー内壁が線から広い面へと変化し、その面には強固な油膜が形成されるため、組み立て直後から「ナラシ運転が不要」になるほど、ピストンとシリンダーの馴染みが激的に良くなる。このプラトーホーニングは、初期仕上げの段階で粗く硬いダイヤモンド砥石を利用し、シリンダー内壁に深いクロスハッチ溝を形成。その後、粗仕上げで尖った部分を極細目の砥石で磨いて削り落として高原を作り、指定されたピストンクリアランスに仕上げる方法だ。

撮影協力をいただいた井上ボーリングでは、過去に「メーカー純正補修部品」の製作納品を長年担当してきた経験があり、この精密なボーリング仕上げをいち早く採用してきた実績があるのだ。

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